2024年1月、初期『ミッキーマウス1.0』の著作権切れが引き起こす『パブリックドメイン』化の流れ
かつて『幸せうさぎのオズワルド』の権利を『ユニバーサル・ピクチャーズ』に奪われ失意のどん底から、ウォルト・ディズニーが創造したのが『モーティマー』ならぬ『ミッキーマウス』だ。1928年の誕生以来95年を経て、2024年1月より著作権が切れて『パブリックドメイン(public domain)化』となることとなった。
オズワルドの苦い経験から『ウォルト・ディズニー・カンパニー』は非常に厳しい版権管理体制を貫いてきていた。パブリックドメインとなったミッキーマウスはどうなるのだろうか?
グリーンの『蒸気船ウイリー』の頃の『ミッキーマウス1.0』は2024年1月からパブリックドメイン化するが、オレンジの左耳にあたる『商標:TradeMark』と右耳にあたる『新・著作権』で守られたその後のデザインが修正された『新ミッキーマウス』の権利が残っているから非常にややこしいようだ。
1928年に発表された『蒸気船ウィリー』の『ミッキーマウス1.0』は、『ウォルト・ディズニー・カンパニー』のロビー活動によって、延期されつづけてきたが、ここにきてようやく『パブリックドメイン化』する。しかし、『ミッキーマウス』の『商標』やその他の『知的財産権』でも保護されているため、作品の著作権が切れたとしても自由に商用目的で使えるわけではない。
■『著作権』が切れても残る『その他の権利』
『著作権法』は、著作者の権利を定め著作物を保護する一方で、一定期間を経過した後は権利を消滅させ、著作物を社会全体の共有物と位置づけている。このことを『パブリックドメイン』化という。
そして、『パブリックドメイン』の作品は、『著作権』や『著作隣接権』といった権利は消滅しているが、『著作者人格権』は継続される。 著作者人格権とは、著作権の一部であり、『著作者の名誉や精神を保護するためのもの』。 具体的には、著作者の没後に著作者を否定したり、著作者の精神を侵すような改変、名誉を傷つける行為などを禁止しています。
日本の場合、『著作権法第52条』では、著作の保護期間は著作者の死後70 年(それぞれの国によって異なる)。この期間が過ぎると著作物は『パブリックドメイン』となる。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048
ウォルト・ディズニー氏は、 1966年12月15日(現在没後57年)に亡くなられたので日本の著作権法上では、2036年が没後70年に当たる。
■著作権切れの『くまのプーさん』は、ホラー映画として登場
『プーあくまのくまさん(原題:Winnie-the-Pooh: Blood and Honey』は、ディズニーではなく、原作のA・A・ミルン氏の『クマのプーさん(Winnie-the-Pooh1926年)』の著作権切れで映画の公開が可能となった。
しかしながら、『著作者人格権』的にも問題がなかったのかはとても気になるところだ。
テイストは13日の金曜日のジェイソンやブギーマンに通じるものがあって、くまのプーさんの表情でさえも怖くなったからだ…。
スタジオ・ジブリの鈴木敏夫さんの『こんなプーさん、見たくなかった』のコメントが秀逸だ。
■著作権切れの『ミッキーマウス1.0』のゆくえ
『ChatGPT』などの生成AIや画像や映像による『ミッキーマウス1.0』のモチーフを継承しながらの二次創作は可能となりそうだが、ウォルト・ディズニー・カンパニーの所有する『商標』や『著作者人格権』に触れないように創作するのは難易度が高そうだが、あと数週間で『ミッキーマウス1.0』が『著作権から公共に帰する』自由を獲た時に、一体どんな『ミッキーたち』と遭遇できるのかが、今から楽しみでもある。1928年『蒸気船ウィリー』のフォルムを今一度記憶にとどめておきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=g6sLOnRxLoU
『ウォルト・ディズニー・カンパニー』が自ら、見本となるような二次創作手法を提示したり、かつてのジョージ・ルーカスがおこなった『スターウォーズ』の二次創作用のフーテージを提供するなど、ソーシャル時代の新たな『ミッキーマウス1.0』の楽しみ方を提案してもらいたいものだ。