ネイマール退団で、浮き彫りとなったシャビの存在感。布陣変更では補えない「操舵士」の不在。
ネイマールのパリ・サンジェルマンへの移籍は、想像以上の打撃をバルセロナに与えている。何より、ある選手の存在が恋しく思えてならない。
今季のスペイン・スーパーカップで、バルセロナはレアル・マドリーと激突した。だが昨季前人未到のチャンピオンズリーグ連覇を成し遂げたチームとの、力の差は歴然だった。
終わってみれば、2試合合計スコア5-1で、内容でも結果でもバルサを圧倒したマドリーが今季2冠目を手にした。バルセロニスタを襲ったのはネイマールの「喪失感」であり、リオネル・メッシを頼るばかりでは状況を打開することは不可能だという紛れもない現実であった。
■ネイマールの残した穴
メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールは2014-15シーズンから3トップを組んできた。「MSN」が挙げた364得点中、メッシとスアレスが記録したのは274得点。得点力については、ネイマール(90得点)への依存度は決して高くなかった。
ネイマールがいなくなり、バルサが失ったもの。それは個の突破力とスピードだ。特にカウンターに関しては、物理的なスピードが明らかに不足している。マドリーとの2試合では、カウンターから決定的なシーンを演出するという現象がほぼ皆無だった。
加えて、抜群の1対1の強さを誇るネイマールは、幾度となく左サイドから相手守備陣の風穴を開けてきた。それはメッシに対するマークを自身に引き寄せ、さらにはサイドバックのオーバーラップを喚起するという好循環を生んでいた。
ネイマールのように突破ができる選手、あるいは深みを獲得できる選手がいないと、チームは悪循環に陥る。ウィングは相手ディフェンスラインの裏に入り込めず、サイドバックの上がりは控え目になる。この「負のサイクル」に嵌ったバルサがどうなるかと言えば、無目的的に延々とパスを回し続け、相手にとって予測可能なチームに成り下がってしまうのだ。
■浮き彫りになったシャビの存在感
ネイマールの不在が、影響を与える要素がもうひとつある。前線でボールを受けられないメッシが中盤に下がってきてしまい、ファイナルサードでの仕事に集中できなくなりつつある。
シャビ・エルナンデス(アル・サッド)のように、ポゼッションの一環を担いながらチームに方向性を与えてくれる選手が、現在のバルサには存在しない。シャビは組織の「羅針盤」であり、「操舵士」だったのだ。
スペイン・スーパー杯のセカンドレグで、エルネスト・バルベルデ監督は布陣変更に打って出た。従来の4-3-3を諦め、3-5-2を採用。中盤に5枚置いて、「数」での応急処置を試みた。
だが結果は惨憺たるものだった。イスコ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチに中盤を蹂躙された。皮肉にも、彼らはまさにバルサが求めるような選手たちである。
バルサは先日、広州恒大からブラジル代表のパウリーニョを獲得している。だがクラブが今夏狙っていたのは、「ヴェッラッティ型」の選手ではなかったか。パリ・サンジェルマンのマルコ・ヴェッラッティ獲得を逃して、加入したのがパウリーニョでは、バルセロニスタが失望感を露わにするのも無理はない。
■崩壊への序章
ネイマールとシャビが一緒にプレーしたのは、13-14シーズンと、14-15シーズンのみだ。14-15シーズンには、リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグの3冠を達成。バルセロニスタは再び栄光の時を享受した。
忍び寄る陰の気配に、気付いている者はいなかった。2015年夏にシャビが去っても、攻撃の全権を「MSN」に託したチームは機能しているかに見えた。中盤の構成力は曖昧のまま、時の針だけが刻まれた。または高く維持されたポゼッション率に目が眩まされていたのかもしれない。
シャビ退団後に加入したアルダ・トゥラン、デニス・スアレス、アンドレ・ゴメスはいずれも期待に応える活躍をしたとは言い難い。シャビの後継者を探す、という至上命題を解決せずに、今度はネイマールの代役を確保する羽目になった。フィリペ・コウチーニョ(リヴァプール)、ウスマン・デンベレ(ボルシア・ドルトムント)が加わったとしても、中盤の問題は付いて回るだろう。
不運は続き、スーパー杯のセカンドレグで負傷したスアレスは4週間以上の戦線離脱を余儀なくされている。「MSN」で残ったのはメッシだけ。17-18シーズン開幕直前、このレアリダッド(現実)から目を背けることはできない。