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「藤井、渡辺、豊島に1回も番勝負を勝ったことがなかった」王座防衛4連覇を達成した永瀬拓矢王座コメント

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――タイトル防衛を果たしていまの気持ちは?

永瀬拓矢王座「豊島九段とはタイトル戦(2020年叡王戦七番勝負)を1回やって、タイトルを取られていますので。あと、藤井、渡辺、豊島に1回も番勝負を勝ったことがなかったので、勝つことができてよかったなと思います」

――7月、8月は調子がよくなかった?

永瀬「そうですね(苦笑)。去年も同じことやったんで気をつけてたんですけど。同じ状況になって驚いたんですけど。うーん、そうですね。気をつけて防げない要素もあるかもしれないので。ただ、5連敗はワーストだと思うので、かなり厳しい状態だったのかなと思います」

――建て直すことができた要因、ターニングポイントは?

永瀬「(王座戦五番勝負)2局目の将棋が後手番で。2連敗してしまうとかなり厳しいので、本当に勝負所だったんですけど。将棋としてもかなり厳しい将棋で。そこをなんとか千日手に持ち込むことができて、流れが変わって、徐々に、という感じになったのかもしれないです」

――いまは状態は上向き?

永瀬「わるい時期といまの時期、いまの自分をちょっと比べたりして、どこが自分に合ってて、どこが自分に合ってないかなどを、そういうアプローチというか考え方をしてるんですけど。それがうまくかみあったというか、自分がいい状態を目指すにはどうすればいいかみたいなことが、それが少しずつ実現できているのかなと思います」

――これで4連覇。来期は5連覇で(中原誠名誉王座、羽生善治名誉王座に続き)3人目の名誉王座の資格がかかる。

永瀬「そうですね・・・。いつも通りがんばるしかないとは思うんですけど。めったにない機会、チャンスですので、ものにできるようにがんばりたいなと思っています」

――一般の将棋ファンは藤井聡太竜王(五冠)の全八冠制覇を期待している。その中で、自身の役割は?

永瀬「そうですね、5個持たれていますのでたぶん、トーナメントで当たるっていうことはあまりないような気がするんですけど。それをどうにかするには自分がタイトル戦に出て、ちょっと、冷や汗をかいてもらうしかないので。そうですね、タイトル挑戦しないことには、なかなか役割は果たせないのかなと思います」

――番勝負中の9月5日に誕生日を迎え、30歳になった。三十代、今後どのような戦いをしていきたい?

永瀬「現状はなにも変わってないんですけど(笑)。三十代になってより勉強するようになったかな、ぐらいの。ただ、やっぱりちょっと、二十代のときと違う面は当然あると思いますので。その点はちゃんと考えながら、なんでしょう、仕上げていきたいと思います」

――棋聖戦第1局で2回千日手になり、藤井棋聖が体力の面で鍛えないといけないと、永瀬王座の体力を感じたようなコメントだった。永瀬王座は鍛えている? 体力に自信がある?

永瀬「もともと将棋体力の方は高いと思うんですけど。技術がともなってくればもうちょっと焦ってもらえると思うんですけど(笑)。そうですね、ただ、藤井棋聖・竜王はけっこう長らく(研究会で)教えていただいてますけど。なんか、語弊がありますけど、名古屋の方は体力があるなと思っているので(笑)。別に1局目のときもそんなに、こちらは相手が体力減っているという印象はまったくなかったんですけど。そういうふうに考えていただけると、こちらにとって長所であるのであれば、それを活かしていきたいなと思います。

――今年度下半期の目標は?

永瀬「王将リーグが始まりましたし、A級が3回戦終わって。1勝でも多くしないとリーグ厳しいと思いますので、1勝でも多くするのを目標にするのと。やはり今回の豊島九段との番勝負で、本当に得るものが多いというか。なにが足りないのかよくわかったので、そこをやはり今後、活かしていきたいなと思っています」

――なにが足りない?

永瀬「そうですね(苦笑)。1局目は準備が足りなかったんですけど。あと本局においてはなんでしょう。えっと・・・。かなり神経を使わせられる展開を豊島九段が目指されたんですけど。それはなんか、実戦的にこちらが指しきるのは難しい気もしたので。そういう指し方を学んでいかないといけないのかな、とも思いました」

――対局を観戦していた視聴者、ファンに一言。

永瀬「ご視聴いただきありがとうございます。防衛することができて、いちばんいい結果になって、ほっとしています。ただそうですね。今回の番勝負で本当に、見えてないものが見えたり。収穫はかなりあったと思いますので、これを糧にこれからがんばっていきたいと思います。あと7月、8月が本当に、例年けっこう厳しいので(苦笑)。そこは個人的にはかなり気をつけてはいるんですけど、なかなか同じ結果になってしまうので、そこを気をつけてまたがんばりたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします(深く一礼)」

(永瀬王座の言葉はできるだけそのまま、記者からの質問は簡略化・適宜補足して記述)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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