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南京大虐殺記念館を訪れたときのこと

中島恵ジャーナリスト
犠牲者30万人の文字が到るところにある

12月13日、中国南京市の南京大虐殺記念館で、習近平国家主席を筆頭に共産党幹部や遺族ら約1万人が出席して、旧日本軍による南京事件について定めた「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」の追悼式典が行われた。

94年から昨年までは地方レベルでの開催だったが、今年初めて「国家追悼日」に定められ、国家レベルに格上げされ大規模な行事となった。

習氏は演説で「歴史を顧みない態度と侵略戦争を美化する一切の言論に断固反対しなければならない」と強調。事件の犠牲者が30万人に上るとの中国側の立場も改めて述べた。

一方で、日中関係については「中日両国民は代々に渡り、友好を続けなければならない」とし、式典の開催は「恨みや憎しみをつないでいくためではない」とも述べた。

国家追悼日の横断幕が…

私は今年3月、南京大虐殺記念館を20数年ぶりで訪れていたので、とりわけ興味深く式典のニュースを見た。訪問したときの様子を少しだけ紹介してみたい。

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南京大虐殺記念館は高速鉄道の南京駅から車で30分ほどの距離にある。すぐ近くに地下鉄駅もあり、地下鉄で行くことも可能だ。記念館前には数々のモニュメントがある。虐殺で苦しめられた人々をモチーフとしたもので、観光客らが記念写真を撮っていたので、すぐにわかった。私が訪れたときは3月初旬の土曜日だったが、観光客の列は70~80人ほどとそれほど多くなくスムーズに入場できた。友人によると、国慶節や春節などの連休になると、数百人、数千人規模で観光客が訪れ、長蛇の列になるらしい。

入場ゲートを入ると広場になっており、砂利が敷き詰められている。向こう側に記念館があって、そこには手に菊の花を1本ずつ持った専門学校生とおぼしき制服の団体がいた。

2月の全人代で確定したばかりの「国家追悼日」の横断幕も見えた。

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記念館の中は照明がかなり暗く、足元が危ないくらいだ。事件に関わる南京の状況やパネル写真などの資料展示が多く、当時の地図や町の様子、南京在住の外国人の証言や直筆の手紙、書籍、医療関係者などのコメント、日本軍の遺品、軍服、日本人の所持品があった。蝋人形や模型、当時の家屋を再現したものも展示されていた。

記念館内は掛け足であれば、1時間ほどで見終わることができる広さだ。館内には団体客が多く、専門学校生のほか、老人のツアーが多いような気がした。記念館の外に出ると、休憩スペースに地方から来たらしい大勢の老人の団体観光客がいた。同じツアーの帽子やバッジをつけているのでわかったのだ。別の建物には「万人坑」という遺骨の一部を展示した施設もあった。

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外にもいくつかの展示物があった。目に飛び込んできたのは「遭難者300000」の文字。今回の式典で習氏は「南京大虐殺の事実を否定しようとも、30万人の犠牲者と13億人の中国人民、平和と正義を愛する世界の人々が許さない」と言及していたが、その言葉と同じく、記念館の敷地内には、何カ所にも「300000」という数字が書かれているのが印象的だった。この数字について、日本側は否定している。

広大な敷地内にある記念館

以前私がこの記念館を訪れたのは1990年だった。オープンしたのは1985年で、まだ開館から数年しか経っておらず、それほど大きい記念館だったという記憶はない。今回訪れて驚いたのは、規模拡大だった。資料によると、当初の2・2ヘクタールから2007年に4・7ヘクタールへと拡大しリニューアル工事を行ったという。記念館自体はそれほど大きくはないのだが、敷地が広大で、公園のようになっており、あちこちにモニュメントがある。全部まわれば、見学に3時間以上はかかるが、日本人でここを訪れる人はかなり多いそうだ。

来年は戦後70年。中国側は「反ファシズム戦争勝利70周年」と位置づけている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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