アマゾンも“YouTube”を始める時代に、グーグルとの競争ますます激しく
米アマゾン・ドットコムはここのところ映像配信サービスの分野に力を入れているようだ。同社は5月10日、プロのクリエーターをはじめとする様々な人が自身の動画作品を投稿できる新たなサービスを同日より始めると発表した。
米国や日本を含む5カ国で開始
サービスの名称は「アマゾン・ビデオ・ディレクト(Amazon Video Direct:AVD)」。当初始める国は、米国のほか、英国、ドイツ、オーストリア、そして日本もサービスの対象国に入っている。
本稿執筆時点で日本のアマゾンのサイトに情報は掲載されていないが、同社は正式なプレスリリースで大々的に発表しており、まもなく日本のサイトにも掲載されるもようだ。
このプレスリリースによると、ビデオ・ディレクトは、アマゾンの映像配信サービス「Amazonビデオ」内のサービスとして始める。
これにより利用者は、アマゾンの映像配信端末「Fire TV」のほか、Fireタブレット、Amazonビデオ対応のテレビやゲーム機、パソコンのウェブブラウザー、そしてAmazonビデオのモバイルアプリをインストールしたスマートフォン、タブレット端末などで視聴できるようになる。
投稿者には売り上げの一部や賞金を分配
また投稿する人は様々な配信形態が選べる。
これには、有料会員プログラム「Prime(プライム)」のメンバーが追加料金なしで利用できる「Primeビデオ」や「追加の有料サービス(月額制)」、「購入・レンタル」、「広告付き無料視聴」がある。
そしてアマゾンはこれらの配信形態によって、それぞれ異なる料率の報酬を投稿者に支払う。同社のサポートページによると、報酬はPrimeビデオの場合、米国では1時間に付き15セント、それ以外の国では6セント(日本では6.5円)。
また追加の有料サービスと購入・レンタルの場合は、売り上げの50%を、広告付き無料視聴の場合は広告収入の55%をそれぞれ投稿者に支払うとしている。
このほか、同社は投稿者へのインセンティブとして、毎月総額100万ドル(約1億1000万円)の賞金を、Primeビデオに配信された上位100作品に分配するプログラムも用意する。
ライバルとの競争激化
米ウォールストリート・ジャーナルはアマゾン・ビデオ・ディレクトについて、米グーグルの「YouTube」に似たサービスだと伝えている。
アマゾンとグーグルは、オンラインショッピングや当日配達サービス、クラウドストレージサービス、そして消費者向け電子機器など、広範な分野でライバル関係にあり、アマゾンは今回の新サービスで、あらためてグーグルに対抗すると、同紙は報じている。
またアマゾンは先頃、米国のPrimeに月額制の料金プランを追加し、その一環としてPrimeビデオだけを利用できる低価格の料金プランも設けた。その金額は1カ月8.99ドルと、競合である米ネットフリックス(Netflix)の人気サービスより1ドル安い。
ウォールストリート・ジャーナルは、あるコンサルティング会社の幹部のコメントとして、今回の新サービスは巨大なショッピングモールであるアマゾン王国に顧客を引き込むための戦略だとも伝えている。
このサービスは、テクノロジー業界で映像配信サービスがいかに重要なものになっているかを示す動きなのだという。
(JBpress:2016年5月12日号に掲載/原題「アマゾン、YouTube対抗の動画配信を日米などで開始 映像サービスの強化着々と」)