アイスクリームにはなぜ賞味期限がないのか
5月9日はアイスクリームの日。2018年の5月9日は、アイスクリームの日にしては寒い一日になってしまった。
ところでアイスクリームには賞味期限表示がない。それはなぜなのだろうか?
きちんと温度管理されていれば劣化が少ないため
一般社団法人日本アイスクリーム協会によれば、「アイスクリームは、温度管理がきちんとされていれば、細菌が減ることはあっても増えることはなく、長期間保存しても品質変化は極めてわずか」であり、賞味期限表示の代わりに「ご家庭では-18℃以下で保存してください」あるいは「要冷凍(-18℃以下保存)」などと記載している。
製造工場ではマイナス25度以下で保管されており、配送中および店頭ではマイナス18度以下。したがって、長期間保管しても、品質の劣化が少ないから、賞味期限表示は省略できるのだ。
とはいえ、アイスクリームを買った後、常温で放置してしまい、溶けた後に冷凍すると、品質が変わってしまうので要注意。
ある一定期間保管した後は処分
あるアイスクリームの製造メーカーに伺ったところ、たとえ賞味期限表示が省略できるにしても、製造からある一定期間経ったものは、社内で期限を決めて処分しているという。
たとえばアイスクリームの最中(もなか)は、作りたてはパリッとした食感が楽しめるが、長く保管していくうちに、アイスクリームの水分が最中に移行し、パリッと感が落ちて、フニャッとなってきてしまう。
日本気象協会とアイスクリームメーカーの食品ロス削減の取り組み
2017年9月5日に放映されたテレビ東京系列『ガイアの夜明け』では、森永製菓と日本気象協会がタッグを組み、日本気象協会の気象データを活用して需要予測精度を向上させ、パリッとした食感を楽しめるアイス最中を提供できる取り組みを紹介していた。
美味しさを保つ工夫をすることで、食品ロスも削減することができる。
前述の通り、アイスクリームはマイナス25度以下で保管しておくため、長く在庫を抱えておくと、保管コストに加えて冷凍保存のコストもかかる。新製品を出したものの、予測通りに売れなくて、在庫を抱える場合もある。従って、ある一定期間経つと処分している企業もあるそうだ。
必要とされる子どもたちへ寄付する企業も
ハーゲンダッツ ジャパン株式会社は、2007年から、フードバンクのNPO法人であるセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)に、アイスクリームを寄贈している。筆者も2011年の東日本大震災を機に食品メーカーを退職し、その後セカンドハーベスト・ジャパンの広報を3年間務め、この活動を直接拝見してきた。毎年クリスマスの時期にはハーゲンダッツの社員の方々がサンタクロースに扮し、直接、児童養護施設へアイスクリームをクリスマスプレゼントとして届けるボランティア活動を行なっている。
児童養護施設では、栄養士の方が栄養計算し、三食のご飯が提供される。が、お菓子は子どもにとって「第四の食事」とはいえ、どうしても後回しになりやすい。アンケート調査を行なった時にも、児童養護施設では、アイスクリームやお菓子、甘めの飲料など、子どもたちのおやつになるものがとても喜ばれているという結果が出ていた。
食品メーカーの社員は、社員としての業務に集中しているので、日本社会にこのような子どもたちが暮らしていることを全く知らなかったりする。筆者もそうだった。
大企業で大量生産していると、自社製品を購入して食べて下さっている方の顔を見ることはない。ハーゲンダッツ ジャパン(株)のように、社員の方が直接、必要とされるところに届けて、喜んでくれる顔を見る体験は、自社の製品やサービスが世の中の役に立っていることを実感できる、貴重な機会だ。
賞味期限は「美味しさの目安」で「品質が切れる日付」ではない
農林水産省「消費期限と賞味期限」で説明されているとおり、消費期限は日持ちが5日以内のものに表示される一方、賞味期限は美味しさの目安であり、品質が切れる日付ではない。
スーパーやコンビニでアイスクリームを買う時、賞味期限表示を見たことがあるだろうか?同じ乳製品である牛乳やヨーグルトは賞味期限表示を確認するが、アイスクリームは確認しない人が多いのではないだろうか。表示が無いことすら気づかなかったのでは?
「0509」がそろうと抽選で100名に15種類のアイスクリーム
一般社団法人日本アイスクリーム協会は、2018年5月25日午前10時まで、インターネット上でアイスクリームの日記念キャンペーンを実施している。ボタンをクリックして「0509」がそろうと、抽選で100名に15種類のアイスクリームが贈られるというものだ。
協会の公式サイトには、アイスクリームについての知識や統計・調査についても掲載されている。この機会にぜひアイスクリームのことを知ってみたい。