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ベテランと若手のオールスター捕手2人がいるのに、トレードで捕手を獲得しようとする理由はどこにあるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ショーン・マーフィー(左)とレオディ・タベラス Jul 12, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 かねてからの噂どおり、オークランド・アスレティックスは、ショーン・マーフィーをトレードで放出するようだ。MLB.comのマーク・フェインサンドは、トレードが近づいていて、獲得に動いている球団はいくつかあるが、アトランタ・ブレーブスがフロントランナーだと報じている。

 マーフィーは、28歳の捕手だ。昨シーズンに続く、2年連続ゴールドグラブとはならなかったものの、ディフェンスに優れる。スタットキャストによると、二塁送球の平均ポップタイムは1.90秒前後。フレーミングも巧みだ。守備だけでなく、2021年は17本塁打と23二塁打、2022年は18本塁打と37二塁打を記録し、今シーズンの出塁率.332とOPS.759は、昨シーズンを上回った。FAになるのは2025年のオフなので、あと3シーズンは保有できる。マーフィーを欲しがる球団は、いくつあってもおかしくない。

 ただ、ブレーブスは、捕手には不足していない。今シーズンのスタメンマスクは、トラビス・ダーノーが99試合、ウィリアム・コントレラスが57試合、マニー・ピーニャが5試合、チャドウィック・トロンプが1試合だった。4人とも、退団はしておらず、現在もブレーブスに在籍している。来シーズンの年齢(6月30日時点)は、それぞれ、34歳、25歳、36歳、28歳だ。ダーノーとコントレラスは、どちらも今年のオールスター・ゲームに選ばれた。

 来シーズンも、今シーズンと同じ2人体制で臨めばいいようにも見える。一方が故障した場合には、ピーニャかトロンプがいる。

 にもかかわらず、ブレーブスがマーフィーを手に入れようとしているのは、コントレラスの守備に不安があるからだろう。今オフにシカゴ・カブスからFAになった兄と同じく、コントラレスは打撃優先の捕手だ。フレーミングのスタッツも、芳しくない。今シーズンは、DHとしても31試合に先発出場した(他にレフトが1試合)。

 また、コントレラスがFA市場に出るのは2027年のオフだが、ダーノーは来シーズンが終わるとFAとなる。

 今シーズンは、ダーノーとマーフィーがスタメンマスクを分け合い、コントレラスは基本的にDH出場というのが、ブレーブスの描いているシナリオではないだろうか。その後については、マーフィーの捕手1人体制とし、コントレラスはDHのままとするか、マーフィーとコントレラスの2人体制も考えられる。前者の場合は、ロースターに控え捕手が必要になるが、入手するのは難しくなく、費用もそうかからない。

 もっとも、マーフィーを獲得できなくても、来シーズンに関しては、ダーノーがいる。何が何でも捕手が必要という状況とは違うので、ブレーブスが想定を上回るプロスペクトを手放すことはない気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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