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本日発走の天皇賞にグランアレグリアと臨むルメール騎手が枠順ほかを大いに語る

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

美浦に駆けつけ最終追い切りに騎乗

 10月28日に発表された天皇賞(秋)(GⅠ)の枠順。見た瞬間に「おっ!!」と思った。

 話はその前日に遡る。この日の朝、美浦トレセンでグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)の追い切りに跨ったクリストフ・ルメール。手応えを聞くとニコリとして答えた。

ルメール騎手。コロナ禍前に撮影
ルメール騎手。コロナ禍前に撮影

 「元気一杯でした。状態や仕上がりに関してはさすが藤沢先生という感じ。良いです」

 “元気一杯”という事は、掛かってしまう可能性があるのでは?と問うと、少し苦笑いをしながら首を縦に振って口を開いた。

 「そうですね。だからあまりスローな流れにはなってほしくないです。2000メートル戦でもありますしね……」

 実際、その距離に関する不安がないのか?を伺うと、これにも首肯して答えた。

 「だから折り合いだけだと思います。大阪杯は馬場が悪くて駄目だった(4着)けど、良馬場でゆったり走れれば2000メートル自体はこなせるはずです。そこは心配していません」

 思えば昨年の安田記念(GⅠ)ではあのアーモンドアイに完勝した能力の持ち主。そこから2ハロン延長で全く走れなくなってしまうとは思えない。

昨年の安田記念のグランアレグリア(ゼッケン11番)。アーモンドアイ(同5番)を楽に千切ってみせた
昨年の安田記念のグランアレグリア(ゼッケン11番)。アーモンドアイ(同5番)を楽に千切ってみせた

 「今年の安田記念ではスタートしてすぐに息の入り方がおかしくて、道中では8着とか10着とか、大きく負ける事も覚悟しました。結果、喉の問題だったのか勝てなかったけど、それでも頭差の2着まで来たのだから改めて能力の高さを感じました。最終追い切りに乗った感じでは息遣いも普通で(喉の)手術がうまく行ったと分かりました。そのあたりの心配は全くしないで大丈夫でしょう」

「道中は大敗を覚悟した」とルメールが言う安田記念だが、地力で2着したグランアレグリア(青帽)
「道中は大敗を覚悟した」とルメールが言う安田記念だが、地力で2着したグランアレグリア(青帽)

アザブ9番!

 ではさしあたっての大きな心配事はとくに無いのか?と聞くと、少し間をおいてから答えた。

 「オーソクレースの菊花賞(2着)もファインルージュの秋華賞(2着)もレシステンシアのスプリンターズS(2着)も僕は外枠で、内でうまく立ち回られた馬に負けてしまいました。今年のGⅠで僕はピンクやオレンジの帽子が多いので、そうならなければ良いのですが……」

 かく言うグランアレグリアも大阪杯では13頭立ての12番枠だった。春のクラシック戦線でコンビを組んだサトノレイナスは桜花賞が18頭立ての大外枠、ダービーは17頭立ての16番枠だった。他にも辛くも勝ったから良かったもののシュネルマイスターのNHKマイルCもオレンジ色の帽子だった。勝負事の中でも“運”の介在する比率が大きい競馬だが、とくに枠順と馬場状態はその中でも時に勝敗そのものを決定づけるほど影響する。その上で、では何番枠くらいが良いのか?を聞くと、ルメールは次のように答えた。

「今年の僕は外枠が多い」とルメール。グランアレグリアの大阪杯も13頭立ての12番枠だった
「今年の僕は外枠が多い」とルメール。グランアレグリアの大阪杯も13頭立ての12番枠だった

 「外枠は嫌だけど、内過ぎるのも正直、あまり好きではないです。真ん中くらいの9番。もしくはアザブ10番くらいが良いです」

 最後は笑ってそう言ったリーディングジョッキーに「いくらグランアレグリアでも1頭だけ麻布十番からスタートしたら勝てないよ」と言うと、更に笑みを大きくして「じゃ、やっぱり9番ですね」と言った。

 だから翌日、発表された枠順を見て「おっ!!」と思った。グランアレグリアの枠順は9番。1位指名を見事に引き当てた結果に「アザブ9番だね!」とLINEをすると「Tashikani!!」とのレスポンス。更に「良い枠順だね!」と送ると「Perfect!!」との再返信。思惑通りの枠順を得て「藤沢先生に何とか最後の天皇賞をプレゼントしたいです」というルメールの願いがかなえば彼自身4年連続での本競走制覇となる。運命のゲートオープンは本日15時40分。間もなくに迫っている。

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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