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愛子さま初めての単独公務 平安文学に描かれた「夢」に何を感じたのか?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
国立公文書館の特別展を鑑賞された愛子さま(写真:毎日新聞社/アフロ)

愛子さまが大学を卒業されてから、初めての単独公務は、いつ、どんな内容で、どこに行かれるか、あれこれと注目を集めていたが、いよいよその日がやって来た。

5月11日、愛子さまは国立公文書館の特別展「夢みる光源氏—公文書館で平安文学ナナメ読み!―」を訪れ、これが初の単独公務となった。

速報が流れたのは訪問の2日前であったことから、急きょ決まったのだろう。筆者はそれを受けて、早速、翌日に国立公文書館に足を運び、特別展の展示品を鑑賞しつつ、愛子さまならどんな感想を抱かれるのかを、いろいろ考えてみることにしたのである。

◆愛子さまがご覧になった展示とは

国立公文書館は、東京メトロ東西線竹橋駅から歩いて5分ほどの北の丸公園内にあり、道路を渡って向こう側には皇居が見える。

国立公文書館の役割は、国の行政機関などから移管を受けた重要な公文書等の保存管理であるが、江戸幕府から引き継いだ和漢の古典籍(古い書籍や記録文書)・古文書なども所蔵している。

今回展示されていたのは、かつて江戸城内にあった紅葉山文庫などで所蔵していた、古代から近世にかけての貴重な古典籍とあって、見ごたえのある歴史的コレクションだ。

学習院大学時代に、平安文学をはじめ日本の文化の礎を成す作品を研究されてきた愛子さまが、大いに関心を寄せるものであるのは間違いない。

国立公文書館(筆者撮影)
国立公文書館(筆者撮影)

平安時代、夢は日々の吉兆を占うメッセージと捉えられており、病気快癒の処方から田畑の作付けの時期まで、何らかの判断を夢で見た内容によって選択していたという。

当時は今よりもずっと夢が身近なものであり、「こんな夢を見たので、きっといいことがある」「怖い夢だったけれど、人に相談したら逆夢だといわれホッとした」など常に人々の間で話され、関心事であった。

それは平安人のロマンチックな恋も夢と一体化しており、今回の展示の中で和歌や物語にしたためられた胸キュンな「夢」の数々が紐解かれている。

古典文学に造詣が深くていらっしゃる愛子さまも、年頃の女性。恋へのときめきを夢になぞらえて表す、当時の美意識の高さに好奇心を募らせたとしても不思議ではない。

大河ドラマで注目を集める「源氏物語」では、数多くの「夢」が描かれ、物語の重要な伏線を成していることを、今回の展示はわかりやすく紹介していた。

光源氏の夢に関係を持った女性たちが現れたり、亡き父の桐壺院が窮地を救う言葉を夢の中で授けたり、まさに夢は日常を大きく左右するものだったようだ。

「夢みる光源氏—公文書館で平安文学ナナメ読み!—」図録(筆者撮影)
「夢みる光源氏—公文書館で平安文学ナナメ読み!—」図録(筆者撮影)

◆愛子さまと結びつくテーマが…

会場には、「伊勢物語」や「枕草子」、源氏物語の注釈本など、平安時代に書かれた文学に関する史料が約40点展示されていた。その中には、愛子さまが学習院初等科6年生の時、研究レポートを書かれた藤原道長の日記「御堂関白記」もあった。

開かれたページには、当時、京都近郊で頻発していた地震についての記述があり、いつの時代も、災害や疫病、戦乱など、人間の力が及ばない現実がある。それは平安時代も、現代も変わらず、人間の力ではどうしようもできないことがあるからこそ、人々は「夢」に救いや明日への希望を託すのではないだろうか。

そして「夢」は人々の思いの集まりであり、目に見えぬ未来なのだと、千年も前の平安人は知っていたのだ。

今年の歌会始で愛子さまは、こんなお歌を詠まれている。

「幾年(いくとせ)の  難き時代を乗り越えて  和歌のことばは我に響きぬ」。

困難の多い幾多の時代を越えて、かの時代の人々が紡ぎだした言葉には、たくさんの夢がしみ込んでいることを、愛子さまはご存じなのだろう。

それこそが愛子さまを感銘させずにはいられない、平安文学の普遍性なのかもしれない。

愛子さまが訪問されたこの特別展は、残念ながら5月12日で終了したが、今後、国立公文書館は「1964 公文書で見る東京オリンピック開催への道」(6/1〜6/30)、「お札に描かれた人物-公文書で見る紙幣の歴史-」(7/20~9/16)を予定している。

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放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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