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天皇家の「長寿の秘訣」とは? 「医・食・動」の徹底管理と質実剛健が、お務めをまっとうさせる!?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
上皇ご夫妻の卒寿を祝う音楽会(写真・毎日新聞社/アフロ)

7月10日、皇居東御苑の桃華楽堂に上皇ご夫妻を招いて、天皇ご一家と秋篠宮ご夫妻、黒田清子さんらご家族そろって、上皇さまの90歳の卒寿と、ことし10月に卒寿を迎えられる上皇后さまをお祝いし、記念の音楽会が開かれた。

上皇さまの90歳というご年齢は、確かな記録が残る歴代天皇のうちで最長寿を記録し、現在も更新中だ。皇室全体でみると、三笠宮妃百合子さまは現在101歳。明治以降の皇室では、2016年に100歳で亡くなった三笠宮さまを上回る最高齢となられた。

元気で長生きすることはすべての人たちの願いであるが、昭和天皇もそうであったように、天皇の長寿には何か秘訣があるのだろうか?

皇室解説者の山下晋司さんに、プライベートでの天皇の健康維持に関するポイントについて伺った。

◆ご体調管理の要とは…

天皇ご一家の体調管理において重要な点は、日常生活における医療体制にあることは言う間でもないが、やはり特別な体制がとられているという。

まず宮内庁病院とは別に、天皇ご一家専属の医師である4人の侍医が、交代で御所(天皇ご一家のお住まい)に詰めており、365日24時間、突然の体調の変化や思わぬケガなどに、即座に対応できるようになっている。

「侍医が常時、お側に控えているということが、我々一般国民との大きな違いです。普段から侍医がご様子を拝見していますし、必要があれば薬の処方も可能です。また、侍医もオールマイティーではありませんので、不安があれば専門医に御所まで来てもらい、診察していただくこともあります。その結果、詳しい検査が必要と判断されれば、宮内庁病院でいいのか、それとも検査機器の充実した東大病院がいいのかを判断しているようです」(山下さん)

また、日々の活力の源となる食事については、天皇ご一家の場合、宮内庁大膳課の料理人が調理を担い、侍医と大膳課の料理人などが相談しながら、一日の摂取カロリーや栄養バランスを考えてメニューを決めるという。

「御所には大膳課の厨房があり、ご一家のお食事を作っています。昭和時代は陛下にお出しする前に侍医が味見をしていました。宮中用語で『おしつけ』といいますが、これは毒見ではなく、栄養管理のために行う塩分量などの確認です。陛下にお出しする各料理を少し小皿に入れて侍医が味見をするというものです。ただ、平成になってからはやっていないそうです。侍医はお食事の後で、すべて召し上がったのか、残されたのかといった確認だけだと聞いています」(山下さん)

食べたいものがあればリクエストを出すこともできるというが、侍医が医療的な見地からそのリクエストが妥当かどうか、栄養に偏りがないかなどチェックの上で検討するようだ。

昭和天皇は85歳の時、長寿の秘訣を聞かれて、

「医者の意見を尊重し、腹八分目の食生活に努めて、適当な運動をなし、規則正しい生活を努めています」

と答えられた。食事もさることながら、毎日の生活リズムも、侍医のアドバイスを受けて節制しておられたことが分かる。

平成の時代も、上皇ご夫妻は朝6時に起床されるのが日課であった。まず上皇后さまが起きてピアノをお弾きになり、毎朝、御所の中には優雅な空気が流れていたと聞く。そのピアノの音色で上皇さまがお目覚めになり、なんとも素敵な、ゆったりした雰囲気で一日が始まっていたのだろう。

◆天皇の激務に耐え、いつまでも健康を維持するには

昭和天皇は学習院院長の乃木希典から、心の広い君主となるように質実剛健を旨とすることを教えられ、それが天皇家に代々受け継がれていった。勉強はもちろん、体力もつけて強靭な肉体を作ることが求められたのである。

上皇さまは若い頃から、卓球、馬術、テニス、スキー、スケートなどのスポーツを嗜まれていた。それは上皇さまの教育係を務めていた小泉信三氏が、「将来、天皇となられる時のために、その激務に耐えられる体に若いうちから鍛えたほうがいい」と考えていたからだと、ご友人の方から聞いたことがある。

陛下も子供の時から野球、テニス、スキー、スケートなどで体を鍛えられ、ご趣味の山登りはいわばプロの登山家並み。同行する屈強な護衛官たちもタジタジとなるほどの健脚ぶりは有名だ。

長年続けているジョギングも、天皇になってからは多忙で機会が減っているというが、今も休みの日には皇居内で汗を流していらっしゃるかもしれない。

特に天皇のお立場になると、公務や宮中祭祀などで忙しく、ストレスや負担が増えることも想像に難くない。どうやって疲れやストレスを、リセットされているのだろうか。

「年齢とともに、ご負担軽減は必要になってきます。昭和天皇や上皇陛下の時もそうでしたが、公務自体を減らすのは難しいので、時間の短縮など内容の見直しを行います。陛下の精神的な疲れの癒しについては、やはり皇后陛下と愛子内親王殿下との団らんでしょうね」(山下さん)

宮中祭祀も相当大変で、天皇陛下は年間30回ほど臨まれている。祭祀を行う宮中三殿は冷暖房がないため、真冬は厳しい寒さの中で行っていらっしゃるのだ。

「今、陛下は60代前半ですから、宮中祭祀も本来の形で行っておられますが、今後、年齢とともに、例えば毎月1日の旬祭へのお出ましを年に2回だけにするなど、徐々に見直していくことになるでしょう。象徴としての天皇の在り方と、健康管理のバランスのとり方を、陛下のご意向を尊重しつつ、宮内庁は見極めていくでしょう」(山下さん)

被災地に赴かれれば、ひざを折って心から励まし、海外でもおもてなしに感謝の笑顔を向けられる。まさに日本の象徴として、その双肩にのしかかる責任はとても重く、健康管理と体調維持は万全でなくてはならない。

ただ天皇陛下も雅子さまも、ご体調に活力を与え、ストレスを吹き飛ばしてくれるのは、愛子さまの柔らかな笑顔が一番の秘訣なのかもしれない。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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