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伊原六花、青春の舞台を「バブリーダンス」から土俵に移す「好きな決まり手は下手投げ、翔猿関のファンに」

田辺ユウキ芸能ライター
写真:筆者撮影

1992年公開の大ヒット映画をドラマ化した『シコふんじゃった!』が、10月26日よりディズニープラスにて配信がスタートした。同ドラマは、映画版の30年後を舞台に、大学卒業の条件として廃部寸前の相撲部に入部した男子学生・森山亮太、たったひとりで相撲部を支えてきた相撲一筋の女性学生・大庭穂香ほか、個性的な新入部員たちが、土俵に青春をかけていく物語だ。大庭穂香役をつとめたのは、「バブリーダンス」で脚光を浴びた大阪府立登美丘高等学校ダンス部の元キャプテンで、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年)などの伊原六花。今回は伊原に、『シコふんじゃった!』について話を訊いた。

――ドラマ「シコふんじゃった!」は、伊原さんが演じられた女性力士・穂香の心境の変化が大きな見どころですね。最初はスパルタで新入部員をシゴくけど、それじゃあ誰もついてこないから練習の仕方を考え直したり、亮太らの意見もあってまわしのとある問題に取り組んだり。

そうですね。妥協でもあり、でもちょっと受け入れる姿勢を見せるというか。いろいろ思うところはありながら、それでもすぐに問題に向き合えるところが穂香の魅力だと思います。ただただ突っぱねるだけじゃなく、「どうだろう」と考え、誰かの意見を聞いて考えを変えられるのは彼女の愛すべき部分。回を追うごとに、穂香をはじめそれぞれのキャラクターが大きく変化します。10話まであるので、監督と「それぞれがどうやって変わっていくのか、そこをしっかり見せたい」という話をしていました。特に穂香は、亮太たちが入部するまでひとりでがんばってきた。「ひとりでもできる」という意識やそれまでの歴史を持っている。そこに相撲をやってこなかった人たちが入ってきて、ひとつの目標に向かっていく。その変化を演技であらわすのはとてもおもしろかったです。

――たしかに、ひとりで相撲部として活動していた穂香にとって、新しい部員が入ってきて「みんなで相撲をとる」と環境が変化するのは、かなり大きな出来事になりますね。

まわりから「女の子が相撲?」みたいな風に見られたりもする。だけど彼女は、根本的には相撲がただただ好きなだけ。単純に相撲をやる上では「ひとりで十分だった」ということなんです。だけど、「みんなでやった方がパワーが出る」と気づくんです。そうやって新しいことを知っていく過程が物語の軸としてあると思います。

森山亮太役の葉山奨之、大庭穂香役の伊原六花/(C)2022 Disney
森山亮太役の葉山奨之、大庭穂香役の伊原六花/(C)2022 Disney

――伊原さんがおっしゃるように「女性が相撲をとる」ということへのまわりの違和感も描かれていますね。

映画『シコふんじゃった。』では、女性部員が男性のふりをして、まわしをつけて土俵に上がっていました。でも今回は女性部員として男女混合戦に向けて相撲をとる。現実にも女性力士として活躍している方も多いですし、映画版から30年が経ってさまざまな理解が深まっているように思えます。実は男女関係なく取り組めるスポーツなんです。今だからこそ響くところもたくさんあるはず。もちろんそのなかで穂香が女性力士として否定される部分もあるけど、でも序盤の「十番勝負」の場面で彼女がすごい技を決めたら、みんなが何も考えずに拍手を贈る。みんな、相撲に熱中したら男女であることは忘れるんじゃないかなって。

――伊原さんはこれまで相撲への馴染みはどれくらいあったんですか。

決して詳しいわけではありませんでした。でも出演が決まってから、女子相撲を観に行かせてもらって。自分より大きい相手を倒す方もいらっしゃって、「格好良い!」と感動しました。それから大相撲の中継も観るようになって、翔猿関のファンになりました。あらためて、力士によって戦い方が全然違うんだなって、相撲のイメージや見方も変わりました。「この力士はまず押していくスタイルなのか」「この力士は先に相手の下にもぐって、まわしをつかむんだ」とか。

――かなり細かいところまで観るようになったんですね。

相撲のシーンではやはり説得力が必要だと感じていて、穂香の取り組みの姿から伝えたいこともあったので、そのためには自分なりにいろいろ観ながら考えたり、稽古をがんばりました。「どうやったら迫力が出るか」など、みなさん探りながら撮影しました。特に1話目の撮影中には、亮太役の葉山奨之さんと「もっとこういう風に動いた方が良いんじゃないか、もっとできるんじゃないか」「これだと穂香が弱く見えてしまうんじゃないか」など話しあい、一度は撮影が終わったけど、相撲指導の先生にお願いして追加撮影もさせてもらったんです。そのあたりはできるだけリアルさにこだわってやることができたと思います。

シコをふむ、伊原六花/(C)2022 Disney
シコをふむ、伊原六花/(C)2022 Disney

――相撲の稽古をやっているなかで、得意な決まり手はできましたか。

穂香は出し投げが得意なんですけど、私は下手投げが好きです。体重や体格は関係なく、ポイントを押さえれば、相手の力の入れ方などを利用してほんの小さな力でも投げられるんです。自分より大きい人を投げたときはすごく気持ちが良くて、「相撲っておもしろいな」と実感しました。

――穂香は長いあいだ、ほかに部員がいなくて孤軍奮闘してきましたよね。伊原さんはそうやって「誰も味方がいないけど、自分ひとりでがんばってきた」ということはありますか。

その面でいうと、穂香と真逆なんです。いろんな人に背中を押してもらって歩んできた人生です。だから、なかなか誰にも理解されず、またゴールが見えないなか、たったひとりで、ホースで作った土俵のなかで稽古をしている穂香って本当に素晴らしいなって。

写真:筆者撮影
写真:筆者撮影

――たしかにそうですよね。

私自身もたとえばダンスのオーディションに落ちたら、次は受かるようにひとりで練習をやるんですけど、それはゴールが見えているものだからがんばれる。でも穂香の場合は誰かに「やれ」と言われることもなく毎日、100回、200回、シコを踏んでいる。そういうストイックさを見て、あらためて「私はいろんな人に助けてもらって生きてきたな」と思います。

――ドラマのなかでも屈強な新入部員が次々と根を上げていきますが、シコを踏むのって本当にしんどいですよね。

ちゃんとした踏み方を教えていただいて、最初に10回くらい踏んだのですが、もう汗だくになっちゃって。みんな、ヒーヒーと言いながらやりました。でも最終的に100回くらい踏めるようになって、そのころには体つきも変わりました。体の柔らかさや体幹の強さも必要になるので。体が整います。このドラマをきっかけにシコのダイエットなどが流行ってほしいです。

『シコふんじゃった!』

ディズニープラスで独占配信中

原作・総監督:周防正行

脚本:鹿目けい子

監督:片島章三、後閑広、廣原暁、植木咲楽

出演:葉山奨之、伊原六花、佐藤緋美、高橋里央、森篤嗣、高橋佳子、佐藤めぐみ、手島実優、福松凜、樫尾篤紀、竹中直人、清水美砂、田口浩正、六平直政、柄本明

企画・制作プロダクション:アルタミラピクチャーズ

ヘアメイク: 面下伸一(FACCIA)

スタイリスト:米原佳奈

(C)2022 Disney

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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