Yahoo!ニュース

非正規雇用が多い若年層の賃金事情は…正社員・非正社員別、年齢別の賃金動向をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 若者の賃金はどのような実情なのか。(写真:アフロ)

・平均の賃金は女性より男性、非正社員より正社員の方が高額。ただし一律に年上になるほど高額になるとは限らない。

・男女とも非正社員の賃金は年が上になってもほぼ横ばいのまま推移。正社員における「社内でのさまざまな実績・経験による(賃金の)積み上げ」が、非正社員には無いことを意味する。

日常生活、遊興、そして蓄財などさまざまな行動の原資となる賃金は、若年層においてどのような実情なのだろうか。内閣府が2018年6月に発表した、主に若年層に関する公的資料を取りまとめた白書「子供・若者白書」の最新版をきっかけとし、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータを用いて確認を行う。

直近年分となる2017年においては、正社員(正規雇用された社員。「正社員・正職員」)の方が正社員以外(非正社員。正規雇用された社員以外の社員。「正社員・正社員以外」)と比べて賃金は高い。非正社員は正社員に対し、男性で2/3強、女性で7割強の賃金に留まっている。

↑ 雇用形態・男女別平均賃金(2017年、千円)
↑ 雇用形態・男女別平均賃金(2017年、千円)

これを細分化した「年齢階層別」「正社員・非正社員別」の平均賃金の推移が次のグラフ。女性より男性、非正社員より正社員の方が賃金は高額だが、一律に年上になるほど高額になるとは限らない状況にあるのも分かる。

↑ 雇用形態・年齢階層別平均賃金(千円)(2017年)
↑ 雇用形態・年齢階層別平均賃金(千円)(2017年)
↑ 雇用形態・年齢階層別平均賃金(千円)(2017年)(折れ線グラフ化)
↑ 雇用形態・年齢階層別平均賃金(千円)(2017年)(折れ線グラフ化)

男女とも非正社員の賃金は年が上になってもほぼ横ばいのまま推移している。特に女性は30代後半が額面上のピークとなっている。これは正社員における「社内でのさまざまな実績・経験による(賃金の)積み上げ」が、非正社員にはほとんど無いことを意味する。

さらに残業代やボーナス、社会保障の面では正社員が優遇されているので、手取りの観点では正社員との差はさらに大きくなる(企業側の社会保障が無い場合、多くの場合において自ら負担する必要が生じる)。

特殊な技術・資格を持ち、それこそ「渡り職人」「孤高の匠」のような立場ならば話は別だが、通常の非正社員には正社員と同じような「積み上げ」を得ることは期待できない。結果として賃金もそれ相応のものになる結果が、グラフのカーブ具合に現れている。

見方を変えると、女性の正社員と男性の非正社員の賃金体系は近い間柄にある(繰り返しになるが、「残業代やボーナスの面では正社員が優遇されている」ので、現実には女性正社員の方が優遇される)。女性就労者の現状を語る一面と見ることもできよう。

余談となるが、高齢層における非正規社員の場合は、将来に向けた蓄財をする必要も無く、支える世帯家族数も少なく、さらに公的年金の補助として就労している場合が多分を占めている。若年層の正規・非正規問題とはまた別の話であることを付け加えておく。

■関連記事:

20代前半の失業率は5.4%…若年層の労働・就職状況をさぐる

若者のパートナーは「クルマ」から「スマホ」へ

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事