伸びるネット広告、落ち込む新聞…日本の広告費を経済産業省の調査結果から検証する(2024年公開版)
日本の広告費はどのような動きを示しているのか。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査の結果を基に検証する。
まずは直近分となる2023年における各項目の金額累計。
全体の額をグラフ内に盛り込んだために他の項目があまり目立たない形となっているが、テレビ単独の金額の大きさ、インターネットの実情、屋外などの一般広告の市場規模などが改めて確認できる。テレビは単独で年間1兆2664億円、インターネットは1兆4862億円の広告市場を持っている。
続いて積み上げグラフによる推移確認。従来型4大メディア(いわゆる「4マス」)を黒枠で囲い、区分として見やすくしている。また、月次精査記事で取り上げている4マスとインターネットに関して、その推移を折れ線グラフ化したのも追加しておく。
広告費は景気と高い連動性・正の比例的関係がある。景気がよい時は広告費も大きくなり、景気が後退すると広告費も減少する。今世紀に入ってからでは、リーマンショックの影響を大きく反映し、2009年が前年から格段と落ち込み、2010年以降は順調に持ち直し動きを見せていた。2016年に至るまで、6年連続して前年比でプラスを示していたのが見て取れる。2017年以降は前年比でいくぶんの減少を示していたが、これは4マスの減り方が大きいのが主要因。さらに2020年ではあからさまな減少の動きが起きているが(積み上げグラフの全体値や、折れ線グラフのテレビが特によく分かる)、これは言うまでもなく新型コロナウイルスの流行による経済活動の後退で生じたものである。
直近の2023年では、回復を見せた2021年から多少失速した2022年に続く形で落ちこみ、インターネット以外では前年比で減少、広告費全体も減っている。ロシアによるウクライナへの侵略戦争を主な原因として生じている物価高(がもたらしている不景気感)が多分に影響しているのだろう。そして当然ながら、4マスはいずれも新型コロナウイルス流行直前となる2019年の水準までには戻っていない。
また、それとは別に各媒体の事情、例えばテレビは2000年前後がピークで、それ以降は減少の一途をたどり、さらにリーマンショックで大きな影響を受けたこと、その後は少しずつ金額を戻してはいるが、金融危機以前の水準までにはまだ届いていないこと、さらにここ数年では失速に動きを転じていることが分かる。そして2021年ははじめて「インターネットの広告費がテレビの広告費を上回った」年だったが、直近2023年でもその状態が継続している、さらには差が開いているのが確認できる。
4マスとインターネット以外の一般広告(積み上げグラフの緑の部分)は、やはりリーマンショックの影響による急激な落ち込みを除けば、比較的堅調に推移していたことなどが確認できる。ただし2017年以降は4マス同様に漸減中。新型コロナウイルスの流行で生じた大きな落ち込み以降、おおよそ横ばいの流れ。
例えば雑誌はこの10年で半減を超える減少ぶり。ラジオは3割を超える減少。「広告費」と「利用率・媒体力」はそのまま直結するわけではないものの(景気動向やライバル媒体とのパワーバランス、そしてコストの観点での効率化も影響する)、激動する時代、そしてメディアの変貌の実情を感じさせよう。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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