20代前半の失業率は5.4%…若年層の労働・就職状況をさぐる
リーマンショックで悪化、その後は改善にむかう
内閣府は2017年6月に主に若年層に関する公的資料を取りまとめた白書「子供・若者白書」の最新版を発表した。その内容をもとに、先進諸国共通の雇用市場の課題でもある若年層の失業問題の実情を探る。
平均寿命の伸長化・高齢社会化・定年の延長化、さらには技術の発達に伴う労働工程の効率化に伴い、若年層の労働条件・就職環境が悪化するのは先進国共通の社会問題。この現象は「先進国病」の一つであるとも言われている。日本でも他の先進諸国同様に若年層の失業率は高く、全体平均と比べて高水準を維持している。
バブル崩壊後は景況感の悪化に伴い失業率は増加。その後21世紀に入ってからは派遣などの非正規雇用の促進化もあり、一時的に失業率は改善の動きを見せている。そして景気の回復も大きな改善要因だった。ところが2007年夏以降の金融危機、さらにはリーマンショックに伴う景気悪化で、失業率も上昇していく。景気動向に左右されやすい(勤続年数が短いことや、非正規雇用率が高いことから、解雇されやすい。さらに新規雇用枠増減の影響を受けやすい)若年層ほど、急激に失業率の値を積み増しているのが分かる。
昨今では景況感の回復基調に伴う労働市場の変化もあり、全体平均と共に若年層の失業率も低下傾向にある。特に15-19歳における値が急速に低下しているのは喜ばしい限り。これは高等専門学校、専修学校などの学生が即戦力として企業に注目を集めているのが一因。
直近の2016年に限れば前年から続き失業率は漸減中だが、やはり15歳から19歳の減少が著しい。前年比で実に1.2%ポイントの低下を示し、3.9%。これは記録が取得できる1989年以降ではもっとも低い値である。しかし全体値3.1%との格差が引き続き大きいままであることは忘れてはならない。
悪化から改善に向かう若年層の非正規雇用率
失業率同様に若年層間で問題視されることの多い「雇用体系」、具体的には正規雇用・非正規雇用の相違についてだが、若年層においては25~34歳層で2007年までは一定の上昇幅で、それ以降は緩やかな漸増状態にあったが、2014年をピークに減退に転じた。一方、15~24歳層では2005年の34.3%をピークとし、多少の落ち込みを経て3割前後を行き来したが、この数年ほどは減少を継続し、2009年以来再び3割を切る形となった。
25~34歳層の値が上昇しつつあったのは、多分に世帯に入り出産を経た女性が、パートやアルバイトなどで家計を支える状態にあるからに他ならない(いわゆる兼業主婦)。男女別で最新値を確認すると、男性は15.8%なのに対し、女性は39.6%にも達している。男女間の就労事情の違いは、他の多用な調査結果からも確認ができる。
問題視されるべきは、男女ともさほど非雇用者比率が変わらない15~24歳の区分となる。最初のグラフにもある通り、この年齢階層は失業率も高い。学歴で多分に差異は生じるが、それでも若年層の就労状況が厳しいことに違いは無い。
他方、ここ数年に限れば、全体では正規以外の雇用者率は上昇する一方で、若年層の値は減少に転じている。これは定年退職を経た高齢者による再雇用が多分に非正規であるのに加え、労働市場の状況改善で若年層への正規雇用の門戸が一層開かれている状況の表れといえる。特に25~34歳層の2015年以降における減少ぶりは注目に値する動きに違いない。
進む社会構造の高齢化の中で、今の若年層にはこれまで以上に大きな負荷がかかっている。その負荷を支える資力のもととなる有効な労働機会を若年層に優先して与えることも、高齢化社会の問題解消への1ステップと見なして良いはずだ。
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