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【痩せる!よく眠れる!仕事の能率もアップ!】ランニングをするなら朝食前をすすめる5つの理由

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

8月も終わりになり、猛暑も徐々に和らいできました。これからスポーツの秋に向けて、ランニングを始める方も多いと思います。そのランニングを始める目的が、減量のためや健康のためであれば、朝のランニングが断然おすすめです。理由を文献から紐解いていきましょう。

1.ランニングした日の食事量が減る

朝ランニングをすると、その日の食事量が減る可能性があります。
33人の中年男性を、12週間有酸素運動と筋トレ・何もしない人に振り分けて調べた研究では、有酸素運動をした人は空腹感は変らないものの、満腹感が得られやすくなったという結果があります。また20歳前後の12人の白人男性を調べた研究では、朝食を抜いて運動した日と朝食を摂って運動した日を比較すると、朝食を抜いて運動した日の方が一日の食事の摂取量が減ったという報告もあります。

朝食して1時間走った日と、朝食を摂らないで1時間走った日の、1日のエネルギー摂取量の比較:Bachman JL et al. J Nutr Metab.2016
朝食して1時間走った日と、朝食を摂らないで1時間走った日の、1日のエネルギー摂取量の比較:Bachman JL et al. J Nutr Metab.2016

それは、朝食を抜いて走った方が呼吸商が低くなっており、脂肪が多く燃焼していることが分かります。通常は朝食を抜くと食欲が増し、昼食の量が増えると言われています。ですが朝にランニングをすると脂肪の燃焼効率がよくなり、少量の食事で満腹感が得られやすくなるようです。

2.脂肪の燃焼を促進する。

前項で少し触れましたが、朝食前の運動は脂肪の燃焼が高まることが期待できます。実際に文献もあります。筑波大学からの文献で、10人の若い非肥満男性に対して行った研究です。被検者は朝食前か、昼食後か、夕食後に最大酸素摂取量の50%の強度のエルゴメトリーを60分間行っています(かなりマイルドな強度です)。そして運動なしの群も含めてエネルギー消費と、炭水化物の燃焼、脂肪の燃焼の経時的変化と一日総量を調べています。

朝食前、昼食後、夕食後に有酸素運動をしたときのエネルギー消費、糖質燃焼、脂肪燃焼の変化と総量:Iwayama K et al.EBioMedicine.2015
朝食前、昼食後、夕食後に有酸素運動をしたときのエネルギー消費、糖質燃焼、脂肪燃焼の変化と総量:Iwayama K et al.EBioMedicine.2015

結果朝食前に運動した群は、その後一日の糖質の燃焼が低く、脂肪の燃焼が高まっていることが分かります。要は糖質よりも脂肪を優先してエネルギー源として使うようになるということです。

3.ランニングを続けやすい、体重を減らしやすい

以上から推察することもできますが、実際に肥満の方の朝の運動に関するレビュー論文では、実際に体重を減少させる効果があるとしています。また朝の運動は習慣となりやすいようです。

痩せ型のランナーで、体重が減って困るという方も中にはいます。ですがダイエット目的や、運動を続けられないランナーは、朝食前のランニングがおすすめです。

4.入眠しやすくなる

文献は20人の高血圧の方について調べたものです。午前7時と午後1時、午後7時に最大酸素摂取量の65%の運動(普通のジョギングペースです)を30分行って、その夜の血圧を調べていますが、併せて睡眠についても調べています。

睡眠までの時間と深い睡眠、REM睡眠に至るまでの時間を、各時間帯の運動で比較したもの:Fairbrother K et al.Vasc Health Risk Manag.2014
睡眠までの時間と深い睡眠、REM睡眠に至るまでの時間を、各時間帯の運動で比較したもの:Fairbrother K et al.Vasc Health Risk Manag.2014

この文献では、朝の運動はREM睡眠や深睡眠に至る時間は良かったり悪かったりという結果でした。ですが入眠までの時間は午前7時のランニングが良い事が分かります。別の文献でも、朝の運動は入眠によいという結果もあり「なかなか寝つけない」という方に朝の運動はおすすめです。

5.仕事の能力・効率が上がる

運動による脳への影響を調べたレビュー論文では、前後に5分のウォーミングアップとクールダウンを加えた最大心拍の85%の強度の自転車を50分行うことで、脳の前頭前野に依存する認知機能が2時間向上すると報告されています。前頭前野は思考や創造性、集中力に関与する部位ですので、朝ランニングをすると始業の際の能力・効率が向上する可能性があります。また運動内容は異なりますが、ストレスの軽減は運動後3時間、ポジティブな気分の強化やマイナスの気分の減少は24時間続くとあります。その後も前向きに仕事が継続できるのではないでしょうか。

また高齢者の研究では、午前中の運動とその後の軽いウォーキングを組み合わせることで、作業能率や記憶が向上したとの報告もあります。朝のランニング後も適度に体を動かすことで、朝のランニングによる仕事力アップが続く可能性もあるかもしれません。

さいごに

もちろん昼のランニングや夜のランニングの効果がないわけではありません。昼のランニングは昼休みの短い時間を有効利用できます。夜のランニングは1日のストレスを解消したり、仕事から解放されて瞑想するのに役立ちます。ですがダイエット、睡眠、仕事力アップなどを考えると圧倒的に朝がおすすめです。冬になってから、寒い朝のランニング習慣をつくるのは大変です。
今のうちに朝走る習慣をつくっておきませんか?

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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