今回は谷中の「Cafe yue（カフェ ユエ）」を紹介いたします。
　谷中散歩の途中でちょっと一息つきたくなったら、ぜひ立ち寄りたいのがこのお店。開店後わずか3年で「散歩の達人」などの雑誌やフリーペーパーにも取り上げられるほどになった人気店です。東北の美味しい食材を用いたランチが美味しいだけでなく、そこには東北復興への願いも込められていました。

◆谷中らしい和やかな内装のくつろぎカフェ

　外観は黒基調でシック。カフェらしくデザイナー的でスマートな印象ながら、近くに多い寺社とも調和しています。

　テラス席もあり、季節に応じた楽しみ方ができそうです。

　店内に足を踏み入れると、オリーブグリーンの壁面と木質の家具が、なごやかな雰囲気を醸し出しています。

　窓は広々としており、入り口は開放的。地域のチラシやフリーペーパーも手に取りやすく置かれています。

　また、店内には猫の街・谷中らしく隠れネコちゃん達の姿が。注文後の待ちの時間にちょっと探してみるのも一興です。

◆セレクトショップ併設、東北の美食材をふんだんに採り入れたメニュー

　このカフェは岩手・宮城・福島などから選りすぐりの食材を提供するセレクトショップ「東北基地エール」と併設。カフェ側とショップ側の両方に入口があります。

　ショップ側の店内は、こんな感じ。店名のとおり東北産食材がかなりの充実ぶりで、選んでいるだけでも宝探しのような楽しみがあります。

　そのため、「Cafe yue」のランチメニューにも東北地方の名産品を使った料理名がふんだんに並び、食欲をそそられますます。
　なお、ドリンクメニューはもちろん単品でも頼めますが、ランチ利用客であれば特定のドリンクを税抜200円のランチプライスで注文可。コーヒー・ウーロン茶・ほうじ茶・ジャスミン茶に続く「タイ紅茶」なる文字にも関心を引かれます。

　自家製のパンもあり。こちらも注文してみましょう。

◆東北の香りと谷中の光が織りなす美味

　まず来るのは前菜のサラダとスープ。どちらも地味ながら良い味わいで、特に酸味のある野菜スープは淡白すぎずクドすぎず、胃腸を活発にしてくれそうです。

　今回は三陸産ほやときのこのバターしょうゆスパゲッティ（税抜1,180円）を頼みました。大盛りは＋100円。パスタは硬めのゆでぐあいでボリュームも中々。食いしん坊も満足です。

　鉄板のバターしょうゆ味に、ほやの甘辛さと弾力、磯の香りがほどよく絡まっていて、初めて口にするタイプの食感と美味しさ！。店内の採光の良さも相まって、さながら東北の港町で水揚げ直後の海産食材を使った贅沢スパゲティを食べているような気分に浸れます。

　プレーンの自家製パン（税抜170円）はカリカリに表面が焼かれたものが供されます。小麦の味がしっかり出ている素朴な風味。パスタを食べている途中の箸休めに丁度いい味でした。

　気になっていたタイ紅茶（税抜200円 ※ランチ利用客価格）は、何処となくチョコレートのような香りがあり、心を落ち着つかせてくれます。

◆東北と谷中の人々に寄り添う店の理念と熱意

　「Cafe yue」店舗奥からは、店員さんたちの楽しげな談笑が聞こえてきます。

　料理のテイクアウトで訪れた地元のお婆さんと、若い店員さんが家族のように気さくに話し合っている場面も。このような風景からも、お店の存在がすでに谷中地域に深く根付いていることが窺えます。

　「Cafe yue」は、2011年の東日本大震災から続く東北地域復興の一環として、現在のオーナー様と福島県南相馬市の方が共同開業されたそうです。谷中は観光客も多く、住民同士の繋がりも非常に強い地域。そのため、谷中で東北食材のカフェを開けば、散策で訪れた人々や地域の方々の目にとまり、それが東北地方の食材や文化のPRに繋がると考えたとの事です。

　2020年7月に開店した当初は、このお店も新型コロナウイルス感染症の影響で大苦戦を強いられてしまいました。それでも地域の人々から少しずつ集めた信頼と太い支えにより、何とか荒波を乗り越えて今日まで営業を続けています。そしてこれからも「Cafe yue」を長く続けて、谷中と東北を繋ぐ架け橋にしていこう…そうした決意と活力が、オーナー様やお店の方々、そしてお客さんの笑顔から感じ取れました。

　「Cafe yue」はランチが充実しているほか、モーニングサービスもあるので、機会があれば試してみたくなります。谷中の散策に疲れた時、または新しい発見を求める時に訪れたい、隠れた宝石のようなお店です。