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服部隆之が語る『オフコース・クラシックス・コンサート』 「あの日、あの場所、今年は特別な一夜になる」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/木村辰郎

2019年にスタートした『オフコース・クラシックス・コンサート』。今年は40年前の6月30日、オフコースが5人としてのラストステージを行なった武道館で開催

稲垣潤一(写真提供/billboard japan)
稲垣潤一(写真提供/billboard japan)

中川晃教
中川晃教

今年で4回目を迎える『オフコース・クラシックス・コンサート』が、6月30日日本武道館で行われる。稲垣潤一辛島美登里CHEMISTRYさかいゆう佐藤竹善(SING LIKE TALKING)中川晃教NOKKOMs.OOJA矢井田 瞳ソン・シギョンが、オフコースの名曲の数々を歌う。

今から40年前、1982年6月30日、オフコースは『OVER』ツアーの日本武道館10daysのファイナルを行ない、これが“5人のオフコース”のラストステージになった。今も語り継がれている伝説のコンサートが行われたあの日、あの場所で、今回のコンサートは行われる。特別な思いで武道館に足を運ぶファンも多いはずだ。そんなコンサートの音楽監督/指揮は、ヒットメーカー・服部隆之。「シンフォニックを使うポップスのコンサートは、あることはありますが、このコンサートのように毎年やっているものはありません」と語るこのコンサートの魅力を、服部に語ってもらった。

「あの伝説のコンサートに対するファンの皆さんの思いをフォーカスした一夜にしたい」

「この日がファンの方にとって重要な日というのはわかっているのですが、もちろん映像ではあのコンサートを観させていただいて、小田さんが『言葉にできない』で、言葉がつまるシーンも知っています。でもみなさんにとってあのコンサートが、どれほどのインパクトがあったのかというのが、正直いまいち掴めていませんでした。でも色々な方にお話を聞いて、5人でのラストステージになって、それはファンの方にとっては大きな出来事ですし、悲壮感を感じるのはそれを含めて色々な理由があったということを理解しました。あれからちょうど40年後の同じ日に、同じ場所でコンサートをやるということで、僕もこのシリーズの集大成という気持ちで臨みます。あの伝説のコンサートに対するファンの皆さんの思いというか、気持ちをフォーカスした一夜にしたいと思います」と、まず今回のコンサートへの意気込みを語ってくれた。

“あの日”を再現

コンサートの第一部は、1982年6月30日のセットリストを再現する。

「あの日と全く同じ曲順で演奏していきます。でもあくまで“オフコース・クラシックス”という世界観の中でやっていますので、原曲のアレンジのままのものもあれば、そうではない曲、インスト曲もあったりしながら、その“色合い”をみなさんに楽しんでいただきたいです。2部ではオフコースの色々な楽曲を、アーティスト同士のコラボやインスト曲を含めてお聴かせします」。

ソン・シギョン
ソン・シギョン

Ms.OOJA
Ms.OOJA

2019年に発売されたアルバム『オフコース・クラシックス』から、この企画はスタートしている。上白石萌音、さかいゆう、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)、ソン・シギョン、根本 要(スターダスト☆レビュー)、平原綾香、Ms.OOJAという年齢や国籍を越えて、オフコースをリスペクトする7名が集結し、服部のアレンジで歌った。オフコースの数々の曲と向き合った服部は、小田和正が作る曲、アレンジについてその繊細と緻密さに驚いたという。

「小田さんが書いた譜面を見た時“こちら側の人”だと思いました」

「小田さんが書いた譜面を見せていただいたことがあるのですが、譜面の書き方が僕らに近いんです。ロックミュージシャンと、シンフォニーを書く作曲家とは、音楽の作りが全く違います。ロックの人達はノリとかリフの雰囲気で、感覚的に構築していきます。僕達は主題をちゃんと前振りして、それが最後にもう1回出てきたり、そこに至るまで色々と変奏曲をやったり、計画性がより強いというか、そうやって組み立てて一つの曲を作っていきます。オフコースの譜面はそれなんです。非常に専門的な、音楽的な知識が必要になる譜面でした。だから『これは僕が書くストリングスと一緒だ』って思いました。でも本当にどの曲もメロディがすごく綺麗なんです。狭いところを行ったり来たりしているのではなく、ちゃんと起伏のある美しいメロディで、複雑で構築美を感じます」。

さかいゆう
さかいゆう

そんなオフコースの曲の中でも個人的に好きな曲を聴いてみると――。

「やっぱり『愛を止めないで』が好きなんですよね。2019年に出した『オフコース・クラシックス』というアルバムの中で、『Yes-No』や『YES-YES-YES』は原曲に近いアレンジですが、『愛を止めないで』は、かなりアレンジを変えました。愛が深い故に原曲に忠実なアレンジにしてもよかったのですが、逆方向に行ってしまいました(笑)。ファンの方からあまり怒られなかったからよかったのですが(笑)、さかいゆうさんが歌うということも大きかったです」。

「皆さん原曲のキーを絶対に下げない。それが小田さんと鈴木へのリスペクト、礼儀と思っています」

今回もさかいゆう、佐藤竹善を始め、オフコース愛が深いシンガーが顔を揃えた。

「ここに出演してくださるシンガーの皆さんのオフコース愛がやっぱりすごいです。特に佐藤竹善さん、さかいゆうさんはオフコースのことを本当によく知っていらっしゃる。それがまず気持ちいいですし、だからこちらからの色々な無理も聞いてくれるのだと思います(笑)。そして、何より原曲のキーにこだわっていて、キーを下げるなんてことはあり得なくて、小田さん、鈴木(康博)さんが作ったキーで歌うのが、お二人に対してのリスペクトだし、礼儀と思っています。ちょっと下げたら楽なのに、と思うこともありますが頑なに下げないんです」。

佐藤竹善(SING LIKE TALING)
佐藤竹善(SING LIKE TALING)

オフコースを大リスペクトし、これまでの全ての公演に出演している佐藤竹善は、先日発売された小田和正の8年ぶりのオリジナルニューアルバム『early summer 2022』にもコーラスで参加している。そんな佐藤に、服部が作り上げるアレンジについて聞いてみると「原曲がこうなので、それを単純に交響楽に置き換えました的な感じでもなく、音楽的なチャレンジが見えながらも、原曲をどっぷり聴いてきた僕でも全く違和感がない。別物として楽しんで歌えるというのは、さすがだなと思います。やっぱりまず元のメロディを大事にするということを柱にしてアレンジしていると感じました。一番基本で最も大事なことをきちんと昇華できているのは、やっぱりすごい方だと思います」と、やはりオフコース愛に溢れたそのアレンジを絶賛している。

「シンガーとオーケストラの“セッション”」

服部はこれまで数々のシンフォニー×ポップスのコンサートを手がけているが、レギュラー化されているのはこのコンサートだけだ。

「いわゆるシンフォニックを使うポップスのコンサートは、あることはありますが、このコンサートのように毎年やっているものはありません。だからおなじみのシンガーの方達との“呼吸”を楽しめるようになってきたし、毎回発見があります。オーケストラのメンバーも確実に歌は聴いているので、だからその人の歌い方でやっぱり自然と弾き方も何か変わってしまうんです。そういう意味ではまさにセッションです。バンド内でやるセッションとはまた意味合いが違うかもしれませんが、音楽的には完全にセッションです」。

CHEMISTRY(堂珍嘉邦 川畑要)
CHEMISTRY(堂珍嘉邦 川畑要)

矢井田 瞳
矢井田 瞳

NOKKO
NOKKO

辛島美登里
辛島美登里

今年出演するアーティスト中では、CHEMISTRYが初出演となる。女性陣は昨年に続き矢井田 瞳、辛島美登里、Ms.OOJA、NOKKOが出演する。

「川畑(要)さんとは、僕がサウンドプロデュースをやらせていただいた、マーチン(鈴木雅之)さんのカバーアルバム『DISCOVER JAPAN II』でご一緒させていただきました。川畑さんも堂珍(嘉邦)さんもハイトーンで、きれいなファルセットが出るので、オフコースの楽曲を歌うにはピッタリの声だと思います。男性陣は竹善さん、さかいさん、稲垣潤一さん、中川晃教さん、ソン・シギョンさん、全員高い声が出るシンガーの方ばかりです。去年はスケジュールの問題で、さかいさんが出演できない回があって、さかいさんが歌っていた『愛を止めないで』を、NOKKOさんが歌ってくださいました。少しジャジーなアレンジだったのですが、でも自分のロックシンガーとしての個性を失わずに、肩の力を抜いてフォービートに身を委ねる感じが本当にカッコよくて。なんていうか、きちんと人生の経験を積んだ女性の歌になっていて、唯一無二の世界観でした。

Photo/木村辰郎
Photo/木村辰郎

矢井田さんや辛島さんは、小田さんと『クリスマスの約束』(TBS系)で共演していましたが、僕はこのコンサートの音楽監督なのに、小田さんと一回しかお会いしたことがなくて、一緒に音楽をやったことがないんです(笑)。それなのに、オフコースファンが注目する日に、注目している場所でコンサートを開くという…(笑)」。

※服部隆之氏の「隆」は、「生」の上に横棒が入る旧字体が正しい表記です。

『オフコース・クラシックス・コンサート』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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