アルガルベカップ2018が開幕。アジアカップの「前哨戦」で、なでしこジャパンは結果を残せるか
世界有数の美しい海岸線が点在するポルトガル南端のリゾート地、アルガルベ。
この地で、現地時間2月28日(水)に開幕する「アルガルベカップ」に向けて、なでしこジャパンの選手たちは24日(土)に現地入りし、初戦・オランダ戦に向けて調整を続けている。
今回のアルガルベカップは、グループAのオーストラリア(FIFAランキング4位)、ノルウェー(14位)、中国(16位)、ポルトガル(38位)、グループBのカナダ(5位)、スウェーデン(10位)、韓国(14位)、ロシア(25位)、グループCのオランダ(7位)、日本(9位)、デンマーク(12位)、アイスランド(20位)の12チームで開催される。
FIFAランキング上位の4ヶ国によって開催される「SheBelieves Cup」に出場するアメリカ(1位)、ドイツ(2位)、イングランド(3位)、フランス(6位)は今大会に参加しないが、成長著しいヨーロッパ各国に加え、オーストラリア、韓国、中国など、アジアのライバル国も出場する。
日本にとって今大会は、今年4月6日(火)から20日(火)まで中東のヨルダンで開催される「女子アジアカップ」の“前哨戦“となる。
アジアカップは、来年のフランス女子ワールドカップ(2019年6月~7月)のアジア予選を兼ねており、8カ国中5カ国が本大会に進出できる。日本はオーストラリアや韓国、ベトナムが同居する厳しいグループに入っており、5位以内に入ることは容易ではないが、今大会で結果を残し、1ヶ月後のアジアカップに弾みをつけたいところだ。
【目指すは、優勝】
1992年に初開催されたアルガルベカップは、女子サッカーが初めて正式種目に採用された96年のアトランタオリンピックよりも古い歴史を持つ、由緒ある大会だ。
この大会に、日本は2011年から参加しており、2011年ワールドカップ優勝後の2012年と2014年に2位になったが、2015年は9位に沈んだ(2011年は3位、2013年は5位)。そして、2016年6月に高倉麻子監督が就任後、初参加となった前大会は6位だった。
今大会で日本が対戦するオランダ、デンマーク、アイスランドの3カ国は、ここ数年、急激に力をつけてきている。
オランダは昨年行われた女子ユーロ(開催国)で初優勝しており、デンマークは同大会で6連覇中だった世界ランク2位のドイツを破って勝ち上がり、オランダに敗れたものの、2位だった。アイスランドは、ワールドカップ予選でドイツに勝った(2017年10月)。
「がっぷり四つで戦える相手だと思います。海外組を久しぶりに呼べますし、細部を詰めていく作業になりますが、(このチームには)伸びしろがあるので、新しい発見にも期待しながら、4月のアジアカップに向けて力強く戦いたいと思います」(高倉監督/2月・メンバー発表時)
4月のアジアカップには、ほぼ今回のメンバーを中心に臨むと考えて良いだろう。
昨年12月のE-1選手権で、日本は韓国と中国に勝利したものの、第3戦の北朝鮮戦は0-2で敗れて2位になった。
海外組を呼べなかったことや、大会中にけが人が出たことも含め、ベストメンバーと言える状況ではなかったが、今大会では今のところ、けが人を出すことなく、海外組4人を含む計23人で臨める。
1年ぶりにDF有吉佐織がチームに帰ってきたことも大きい。
MF中島依美は今大会に向けて、日本を発つ前にこう話していた。
「4月のワールドカップ予選(アジアカップ)に向けて、しっかりと良い準備をできるように、アルガルベカップは優勝を目指します。これまで積み上げてきたことをこの大会で出したいですし、今までは、『最後の最後で点を取られて負ける』という試合もあったので、確実に勝ち切るゲームをやりたいと思っています」(中島/22日練習後)
これまで、高倉監督は選手を固定せずに幅広く招集し、競争の中でチームの土台になる選手を見極めてきた。そのため、練習や試合でも、生き残りをかけたサバイバル色が強まった。
だが、今回の遠征は違う。もちろん、レギュラー争いの競争はあるが、チーム戦術や状況ごとの決まりごとを確認するような声掛けや練習メニューが多く見られ、チームとしての一体感も高まっている。
選手の口から自然と「優勝」という言葉が出てくるのも頼もしい。
昨年のアルガルベカップでA代表デビューを飾り、今では頼もしい正GK候補の一人となったGK池田咲紀子は、チームの変化についてこう話す。
「今まではメンバーがあまり固定されていなくて、いつもとは違うポジションでプレーすることも多かったのですが、その中で、チーム全体としてやるべきことが分かってきました。監督からも『どこのポジションに入っても分かるようにしてほしい』と言われていますし、そういう意識が高まって、チーム全体で同じ方向を向けるようになってきたのかな、と思います」(池田/25日練習後)
GKという特殊なポジションであっても、他のポジションについてしっかりと理解しておくーーそのために、「他のポジションの選手同士の声掛けによく耳を傾けるようにしてきた」という池田は、今大会で、一つのチャレンジを心に決めているという。
「試合に出られたら、まずは負けないために無失点で抑えることがベースですが、そこから、勝ちにつなげるプレーにもチャレンジしたいと思っています。自分の強みであるビルドアップでボールを動かして、攻撃につながるプレーから、攻撃に参加していくプレーを目指します」(池田/同)
チームとしての共通意識を徹底し、その上で、各選手の積極的なチャレンジにも期待したい。
【オランダと3度目の対戦】
なでしこジャパンは、日本時間の3月1日(木)にオランダ戦と対戦する。アルガルベ地方の日中の気温は15度ぐらいまで上がるが、天気は崩れ気味で、オランダ戦の試合当日は雨の予報だ。
高倉麻子監督体制になってから、日本はオランダと2度対戦しており、成績は1勝1敗。昨年3月のアルガルベカップの順位決定戦では2-3で敗れたが、昨年6月に行われた欧州遠征ではFW横山久美のゴールで1-0と勝利した。
とはいえ、オランダはこの1ヶ月後のユーロで優勝しており、1年前とは違ったチームになっている。
スウェーデンやイングランドなどの強豪を抑え、女子ユーロ6連覇中だったドイツをも抑えて欧州一に輝いたオランダは、大会中に大きく成長し、チャンピオンとしての自信をつけた。2017年のFIFA最優秀選手に輝いたFWリーケ・マルテンスと、快速を誇るFWシャニセ・ファン・デ・サンデンの両サイドを活かした突破は、今回も日本にとって脅威となる。
初戦に向けたトレーニングでは、MF阪口夢穂と横山が切れ味鋭いシュートを決めていた。
昨年6月の対戦では、横山が途中出場の3分後に豪快なミドルシュートを叩き込み、試合を決めた。アシストは阪口だった。
横山は昨年7月に、AC長野パルセイロ・レディースからドイツのフランクフルトに移籍している。
ドイツは現在シーズン中で、横山はすでに2月に入って3試合をこなしている。18日のケルン戦ではゴールも決めており、コンディションは良さそうだ。
「ドイツでは、どんなに適当なパスを出しても、強いボールだったら受けようとしてくれるし、逆に、弱いボールを出せば文句を言われます。シュートを打つ時に正確性を優先させると、ドイツには動けるGKが多いので取られてしまう。だから、GKの位置を見ながらも、より強いシュートを意識するようになりました」(横山/26日練習後)
現在、フォワードのポジションは岩渕真奈、田中美南、菅澤優衣香、櫨まどか、そして横山の5人がポジションを争っており、試合に出場できる保証はないが、試合が拮抗すれば、流れを変える切り札になる。
一方、守備面では、過去2度の対戦でファン・デ・サンデンとマッチアップしてきた、DF鮫島彩が鍵になる。鮫島は、E-1選手権では本職ではないセンターバックで3試合にフル出場し、日本の最終ラインをまとめた。今大会は、本職のサイドバックで輝くことを期待したい。
なでしこジャパンとオランダ女子代表との一戦は、日本時間3月1日(木)0時40分(現地時間28日15時40分)にキックオフ。フジテレビ系列で、同日0時25分より生中継される。