初の線状降水帯に関する情報を発表した沖縄は梅雨明け間近
線状降水帯
線状降水帯による顕著な大雨は、毎年のように発生し、数多くの甚大な災害が生じています。
線状降水帯という言葉が頻繁に用いられるようになったのは、観測網が充実してきた平成26年(2014年)8月豪雨による広島市の土砂災害以降です。
日本で起きた集中豪雨のうち、台風によるものを除いて、約3分の2が線状降水帯によるものであるとの調査もあります。
近年、線状降水帯が増えてきたというより、観測が充実したことから線状降水帯が原因であることが分かってきたということです。
そして、この線状降水帯による大雨が、災害発生の危険度の高まりにつながるものとして社会に浸透しつつあります。
気象庁では令和12年(2030年)までの10年計画で、早め早めの防災対応に直結する予測として「線状降水帯を含む集中豪雨の予測精度向上」に取り組んでいます。
その第一弾が、「線状降水帯」というキーワードを使って解説する「顕著な大雨に関する情報」です。
令和3年(2021年)6月17日13時より始まった「顕著な大雨に関する情報」は、線状降水帯が発生したことをいち早く伝えることでより一層の警戒をよびかけるものです(予報ではありません)。
記録的な強雨の発生を素早く伝えることでより一層の警戒をよびかける「記録的短時間大雨情報」に似ています。
線状降水帯に関する初の情報発表
「顕著な大雨に関する情報」の初発表は、開始12日後の6月29日2時49分の沖縄本島地方です(表1)。
沖縄付近に停滞していた梅雨前線は、南海上からの暖かくて湿った空気の流入によって活発化し、沖縄県の本島北部では線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続きました(図1)。
「顕著な大雨に関する情報」発表の目安は、表2で示す4つの条件が同時に満たしたときです(表2)。
6月28日の沖縄本島地方の場合は、条件4(1)の基準ではなく、(2)の基準での発表と思われます。
沖縄本島付近の梅雨前線は、ほぼ同じ位置に停滞する予報です(図2)。
沖縄地方は、大雨が降りやすい状態が今日も、明日も続きますので、引き続き、最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。
ただ、梅雨明けは間近です。
沖縄地方の梅雨入りと梅雨明け
沖縄の平年の梅雨入りは5月10日ですが、令和3年(2021年)は5日早い5月5日の子供の日に梅雨入りしました。
沖縄の平年の梅雨明けは、6月21日ですが、すでに約10日も梅雨明けが遅れています。
梅雨に関する統計がある、昭和26年(1951年)以降で、一番早い梅雨明けは、平成27年(2015年)の6月8日、一番遅い梅雨明けは、令和元年(2019年)の7月10日です(図3)。
70年間で、一番早い年も、一番遅い年も最近であるということは、近年、年による変動が大きくなっていることを示しています。
ただ、令和3年(2021年)の梅雨明けは、記録を作るほどの遅さにはならない見込みです。
各地の10日間予報を見ると、沖縄県・那覇は、7月3日以降は、お日様マーク(晴れ)や、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が続きます。
7月2日か3日には梅雨明けになると思われます。
これは、太平洋高気圧が強まって梅雨前線が北へ押し上げられるからです。
沖縄では晴れる日が続く一方、西日本から東日本、東北地方では、傘マーク(雨)や、黒雲マーク(雨が降る可能性がある曇り)がほとんどです。
令和3年(2021年)は、沖縄・奄美地方と西日本、東海地方は、記録的に早い梅雨入りとなっています(表3)。
しかし、関東甲信地方と北陸・東北地方は平年より梅雨入りが遅れ、梅雨入りしたといっても、梅雨前線は南海上に南下したままでした。
このため、関東甲信地方と北陸・東北地方のこれまでの梅雨は、梅雨前線による雨や曇りの日が多い「梅雨空」ではなく、上空に寒気が入って大気が不安定になることでの「梅雨空」でした。
このため、梅雨入りしたと言っても、晴れる日も多く、降るときは局地的にザッと降るということが多くなっています。
しかし、梅雨前線が北上することに対応し、西日本から東日本、および東北地方では、梅雨前線による広い範囲の「梅雨空」になり、梅雨本番となります。
平年の梅雨明けは、九州南部で7月15日、関東甲信地方で7月19日です(表4)。
多くの地方では半月以上も梅雨が続きますので、気象情報の入手に努め、早め早めに大雨対策をしてください。
図1、図4の提供:ウェザーマップ提供。
図2、表1、表4の出典:気象庁ホームページ。
図3、表2の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。
表3の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。