残業を絶対ゼロにする「タニタのキッチンタイマー」
残業は「プロ野球の延長戦」
仕事と生活の調和「ワークライフバランス」を考えたとき、残業は大きな問題です。残業は、プロ野球でいうところの「延長戦」。毎日残業している人は、毎日「延長戦」をやっているようなものです。「ダラダラ仕事」の癖をつけると、あなたの人生そのものも「ダラダラ」になっていきます。常に糸をピンと張ったような気持ちで仕事や生活をしていると疲れますが、ダラダラにたわんだままではストレスがたまるいっぽうです。
私は現場へ入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。何か新しいことをするたびに労働時間が増えては現場の士気が下がります。ですから、本気で残業を減らしてもらいます。しかし長年現場でやってきて痛感することは、「残業を減らす」という発想だと、残業が減りません。そもそも野球をやっていて「延長戦を減らす」という発想はないはずです。延長戦に突入しないよう、何がなんでも9回までに決着をつける、という気持ちで、監督や選手たちは試合に臨んでいるはずです。
「残業を減らす」とか「残業削減」という表現だと、残業はいっこうに減りません。根本的な考え方を変えましょう。残業は「絶対ゼロ」なのです。残業ありきで仕事をするのではなく、よっぽどのことがない限り残業などしない、という気持ちで毎朝出勤することが大切です。
「スケールテクニック」は感覚を修正してくれる
ダラダラの糸のような感覚を持っていると、いつまで経っても残業はなくなりません。糸がピンと張ったような緊張感のある時間を自ら作ることが大切です。そのために私が昔から使っているのがキッチンタイマー。私が愛用しているのは、タニタのキッチンタイマーです。小さくてポケットに入りますし、何よりもバイブレーション機能がついていて便利です。このキッチンタイマーを利用して、「スケールテクニック」をしてみましょう。
「スケールテクニック」とは、感覚でとらえている物事を数値化することを言います。「その仕事、作業にどのくらいの時間がかかるか」を客観的に見積もり、定量表現するのです。
たとえば、上司から「お客様のアポイント」をとってくれと言われたとします。「わかりました」と答えたものの、なかなかやれません。電話しようとしても、そのお客様の電話番号を調べているうちに他のメールを見たり、引き出しの整理をしたり、午前中にやりかけた資料作成の続きをしたりします。そのうちに「急ぎの仕事があるんだけど、手伝ってくれないか」と同僚に言われて手伝っているうちに、夜遅くまでかかってしまった。そうこうしているうちに翌日となり、一週間が経過し、一ヶ月が経過したりする。そのような状態で放置しておき、上司に指摘されたらどうするでしょう。
「そういえば、お客様のアポイントってどうなった?」
「あ、申し訳ありません。まだできていないのですぐにやります」
「まだできていない? ずいぶん前の話だったろう」
「ここ2週間ぐらい、なかなか時間がとれなくて……。でも、今からすぐにやります」
このように言われて、「なかなか時間がとれなかったのならしょうがないな」などと思うほど上司はバカではありません。間違いなく「そんなの言い訳だ。アポイントぐらい、すぐにできるだろう」と瞬間的に思います。それを口に出して表現するかどうかは、その上司次第です。相手が新人ならともかく、先延ばしの習慣を克服できない部下に、もう慣れてしまっています。ですからあきれた様子で、「だったらすぐにアポイントとってくれよ」とため息混じりに言うのですが、部下は上司の気持ちを察することができません。「わかりました、すぐにやります」部下はそう言うだけです。そしてこう思うでしょう。
「今回は怒られなかった。ぎりぎりセーフだったということか」
上司が指摘してこなかったのはもう諦めているからです。にもかかわらず、「これぐらい先延ばししても大丈夫なら、次に同じようなことがあっても許されるな」と勘違いします。
こうなると部下はどんどん怠惰になっていきます。上司から「諦められている」のに、上司から「許されている」と思い込むからです。周囲から寄せられるはずの「信頼」という財産はいつまで経っても蓄積されません。すぐやればいいことなのに、常に先延ばしをしているだけで、その人の価値(バリュー)がゼロに近づいていくのです。とても残念なことですね。
だからこそ、感覚でとらえていた事柄を数値化する習慣を身につけましょう。最初のうちはうまく時間を見積もることができなくても、あきらめないでください。間違えてもいいから、とにかくアウトプットします。
「この資料を作成するには、2時間ぐらいはかかるかな」
「靴を磨くのに、20分はかかる気がする」
「机の上を整理するのに30分はかかるだろうか」
「味噌汁を作るのに、15分はかかるに違いない」
どんなことでも、時間でとらえるのです。そして実際に計測して学習していきます。
「こういった資料を作成するには、4時間はかかるんだ」
「靴を磨くなんて、5分で終わるじゃないか」
「机の上の整理整頓だけだったら10分で終わった」
「豆腐とわかめの味噌汁だったら7分程度だった」
このように、仮説を立てて検証していく習慣をつけていきます。「分からないからやらない」「誰かに正しい答えを聞いてからじゃないとできない」と言っていたら、いつまでも精度は上がりません。トレーニングを繰り返すことで、「スケールテクニック」の精度は高まります。感覚を数値化すれば行動に対する心理ハードルが低くなります。つまり従来の「感覚」が修正されていくのです。
さらなる応用も考えましょう。タスク管理や役割分担に費やす時間も「スケールテクニック」で見積もります。
「毎週、行動計画を作る (10分)」
「毎日、TODOリストを更新する (2分)」
「蓄積されたタスクを自分がやるか誰かに任せるかを仕分けする (3分)」
こうすることで、とても面倒なこともできるようになります。作業のとっかかりやスケジューリングの手間までも「スケールテクニック」で先延ばししないようにするのです。
どんな日常のことも「キッチンタイマー」で快適な生活を!
「服をたたむ」
「読んだ本を本棚に戻す」
「妻に一言LINEで『今日もありがとう』とメッセージを送る」
などといった、小さなことでもスケールテクニックを使えば「それほど時間がかからない」と思えてきます。
先述した通り、タニタのキッチンタイマーはバイブレーション機能がついています。音が鳴らないため、職場でもカフェでも電車の中でも使えます。新幹線の中で10分ほど仮眠をとるときは、10分と設定してポケットの中に入れておきます。こうすればダラダラ寝ることなく、スッキリと起きることができます。
お勧めしないのは、携帯電話やスマートフォンのタイマー機能を使うことです。私は気が散りやすい性格ですから、スマホを触るたびに、メールをチェックしたり、フェイスブックにアクセスしたくなります。集中力を持続させることができないため、タイマー機能に特化したグッズを持ち運ぶことを強くお勧めいたします。