長崎でさくら開花 開花を促す催花雨と「春一富士大遭難」
遅い春一番
気象庁では立春から春分までの間に、広い範囲(地方予報区くらい)で初めて吹く、暖かく(やや)強い南よりの風を「春一番」としています。
関東甲信地方の「春一番」が一番早かったのは、昭和63年(1988年)の2月5日、立春の翌日で、一番遅かったのは、昭和47年(1972年)3月20日、春分の日の前日です。
「春一番」の定義により、観測年数が長くなれば、一番早い日として立春の日、一番遅い日として春分の日が記録になると思われます。
ちなみに、今年、平成31年(2019年)の北陸地方の「春一番」は、2月4日の立春の日でしたので、立春の日が2月3日に移動する年(2021年、2025年など)になるまで、この最速記録が破られる可能性はありません。
「春一番」が吹いた後、日本海に低気圧が入って発達するという、春一番のような気圧配置となって強い南風が吹いたときを「春二番」、「春三番」…ということがありますが、気象庁では情報を発表しません。
発表するのは、「春一番」だけです。
春分の日の「春一番」
3月20日(水)は高気圧に覆われ、北~西日本で晴れとなり、関東から西の地域では最高気温が20℃前後まで、北日本から北陸も15℃以上になりそうです。
平成最後の年(2019年)の春分の日、3月21日(木)は、日本海で低気圧が発達しながら進む見込みです(図1、図2)。
ただ、低気圧が本格的に発達するのは北海道を通過してからの予報ですので、今の所、21日に強い南風が吹き荒れるかどうか微妙です。
もし、低気圧が予想以上に発達して強い南風が吹けば、まだ「春一番」が吹いていない東海・近畿・中国・九州南部では「春一番」になる可能性があります(九州北部と四国は2月19日に「春一番」)。
「春一番」にならなくても、今回の日本海低気圧は、全国的に気温が高い雨、さくらの開花を催促する催花雨になりそうです(図3)。
今週は、さくらの開花のたよりが西日本や東日本の太平洋側から聞かれると思います。
【3月22日8時追記】3月21日の春分の日に中国・九州南部に春一番が吹きました。しかし、東海・近畿は立春をすぎましたので、平成31年(2019年)は春一番が吹かないことで確定しました。
さくらの開花
気象予報会社によって、対象とするさくらの木が違ったり、予報を発表する時期が違ったりするので、簡単には比較できないのですが、ウェザーマップの予報では図4のようになっています。
3月の高温傾向でさくらの開花は平年より早いのですが、暖冬傾向で強い寒気の南下がなかったことから、休眠打破と呼ばれる開花の加速が不十分で、極端に早かった、昨年、平成30年(2018年)よりは遅くなる見込みです。
そして、注目のトップ争いは、今の所、3月20日(水曜)が予想日の福岡と高知、21日(木曜で春分の日)が予想日の東京、横浜、名古屋、岐阜の6地点です。
ちなみに、平成に入ってから、「沖縄・奄美以外での桜開花ベスト3」の回数を見ると、福岡が一番多い17回です。半分以上の年でベスト3に入っています(表1)。
…3月20日20時追加…
全国のトップをきって、3月20日午前に長崎で桜が開花しました。平年より4日早く、昨年より3日遅い開花です。
20日は各地で平年より高い気温となりましたが、続いての開花宣言はありませんでした。
催花雨の降る21日は、続々と開花宣言が発表される可能性があります。
…3月21日12時追加…
3月21日に東京と福岡で開花宣言が発表されました。
春一富士大遭難
東京で一番遅い「春一番」の日、昭和47年(1972年)3月20日、暴風雨の富士山では、急いで下山中の人々が烈風とみぞれで次々に凍死し、24名がなくなっています。
3月20日の平均風速は25.4メートル、最低気温は氷点下6.8度でした(表2)。
この遭難事故は、「春一富士大遭難」と呼ばれています。「春一番」は「春一」とも呼ばれるからです。
「春一番」、「春二番」、「春三番」…は、春の訪れを告げる穏やかなものではありません。
むしろ、災害が発生する可能性がある危険なものですので、気象情報に十分な注意が必要です。
図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図3、表1の出典:気象庁資料をもとに著者作成。
図2、表2の出典:気象庁ホームページ。