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幸せな晩婚化が進行する? 婚活界における「阿川佐和子ショック」の衝撃度

大宮冬洋フリーライター

「出産年齢の心配がなければ、まだ仕事と遊びに集中していたい。40歳を過ぎてからようやく焦ったりする男の人がうらやましい」

都会で働く30代の独身女性と話していると、こんな本音を聞くことが少なくない。一方で、40代になると「出会いの場が少ないし、出てもモテない。一人で生きていくことを考え始めている」とあきらめモードに切り替わったりする。

直接的な原因は、女性に若さを求め過ぎる男性が多いことだろう。特に婚活をしている男性は「子どもが欲しいから」という理由で30代前半までの女性を希望しがちだ。自分は40代50代であっても相手には若さを求める。

この傾向は女性も変わらない。男性ほど実年齢にはこだわらないが、見た目や雰囲気の「若々しさ」には男性以上に敏感だ。40歳近くになると、仕事のストレスなどで老け込んでしまう男性は少なくない。女性のように美容に注力するわけでもない。その現状を目の当たりにして、「できれば年下の男性がいい。私と同い年ぐらいの疲れたおじさんには恋愛感情を持てない」と明かすアラフォー女性もいる。

このような日本社会でいわゆる「シニア婚」のイメージは決して良くない。露骨に言えば、「40代後半以降のおじさんおばさん、もしくは60代以降のおじいさんおばあさんがまだ枯れてないのか」という印象だろう。夫婦ではない中高年が新たに恋愛する光景が想像できないのだ。

だからこそ、先月発表された阿川佐和子氏の結婚ニュースは衝撃度が強かった。63歳という年齢を感じさせないほど若々しく、だからと言って女優のように「若作り」でもない。知的で、ファッションセンスが良く、可愛らしさもある大人の女性。しかも、相手は6歳年上の男性である。阿川氏の手記を読んでも、ほどよい距離感でお互いを認め合っていることが伝わってくる。「素敵だな。私も焦らずに目の前の生活を楽しむようにして、いずれ縁があったら結婚しよう」と感じた女性は少なくない。

40代以降の独身男性にも少しずつ影響が広がるはずだ。彼らの本音を代弁すれば、「阿川さんぐらいキレイで自立して生き生きした女性だったら好きになっちゃいそう。年齢はほとんど気にならない」だろう。自分の周囲にも魅力的な40代以降の独身女性がいることに気づくきっかけになるかもしれない。

結婚は恋愛とは違って条件が必要だ。子ども、住む場所、仕事、お金、健康状態、交友関係、親やきょうだいとの距離感、などをお互いになんとなくチェックしなければならない。条件がまったく満たされないと生活はすぐに破たんする。

ただし、家同士の結婚という時代ではないので、本人同士が男女として惹かれ合うことも条件と同じく重要である。「好き。一緒にいたい。信じてる」という気持ちがなかったら、共同生活はとてもできない。

阿川氏の結婚は「晩婚」「シニア婚」の暗いイメージを葬り、「人はいつでも愛し合って結婚ができる(かもしれない)」という希望をもたらした。今後、日本社会でも大人同士の美しい恋愛と結婚が増えていく気がする。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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