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都会での一人暮らし、災害時の危険に気づいてる?

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
(写真:アフロ)

都会に集まる若者

地方の多くの若者が、都会に吸い寄せられていきます。ですが、都会は、その利便性や魅惑とは裏腹に、誘惑や危険も沢山あります。身の回りの危険について考えてみませんか。

危険な場所を避ける

古くから、集落は、自然への畏れから、危険な場所を避けてきました。こうした場所は、すでに先に住んでいる人に使われています。このため、多くの人が集まる大都市では、災害危険度の高い低地や丘陵地の斜面に、まちを拡大してきました。その結果、地方から都会に出て行くと、危険な場所に住むことが多くなります。特に低地は、地盤が軟弱で、液状化や浸水の危険度も高くなります。土地選びは災害を避ける第一歩です。

駅名に要注意

鉄道が登場したころ、煤煙を吐いて走る蒸気機関車は、坂道が苦手で、人が住まない低地に追いやられました。東京の中央・総武線の駅名を思い浮かべると、神「田」、お茶の「水」、「水」道「橋」、飯「田橋」、市ヶ「谷」、四ッ「谷」と水や谷を連想する駅名が続きます。京浜東北線も武蔵野台地の東の崖下を通っています。

郊外に住む家族を描いたドラマでは、多くの場合、お父さんはマイホームから坂道を下って駅に向かいます。丘陵地の住宅地では、住宅地は丘の上、駅は谷という構図が多いようです。便利な駅前は密集していて、火災危険度も高いようです。地盤の善し悪し、周辺の火災危険度、水害危険度なども忘れないでおきましょう。

住まいの安全

倒壊した集合住宅
倒壊した集合住宅

阪神淡路大震災では沢山の大学生が犠牲になりました。その原因は、下宿している建物の耐震性の不足でした。耐震基準は徐々に改善されており、1981年の新耐震基準法以降の建物は比較的安全と言われています。住宅の設備や見栄えだけでなく、耐震のことも考えて家選びをしましょう。ついで、揺れると凶器になる家具の転倒防止も忘れずに!

備蓄もしっかりと

便利な都会にはコンビニが沢山あるので、十分な備蓄をしていない人が多いようです。都会では、人が多いので、避難所が不足し、救援物資も滞ります。電気・ガス・上下水・通信などの途絶への準備が必要です。水・食料・携帯トイレ・携帯ラジオ・懐中電灯・カセットコンロなどの備えは必須です。

地域の人たちとの近所つきあい

いざというときは、助け合いです。普段から地域の人たちと付き合いがあると助け合えます。日頃から地域のイベントに参加して顔見知りになっておきましょう。

東京都の各家庭には「東京防災」という防災ブックが9月1日から配布されるようです。一度、見てみませんか。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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