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日本代表に負けたイタリア代表、「一夜では変えられない」課題とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
連携、プレーの強度とも日本代表が上回る場面が目立った。(写真:アフロ)

 ラグビー日本代表は6月9日、大分・大分銀行ドームでイタリア代表を34―17で破った。試合後、敗れた側のコナ・オシェーヘッドコーチとレオナルド・ギラルディーニゲームキャプテンが会見し、チームの根幹たる項目を敗因とした。談話のひとつひとつが、今回の結果を裏付けた。

 日本代表は前半15分に先制点を許すも、続く18分には自陣10メートル線付近左ラインアウトからのクイックスローを起点に攻め続けて7―7と同点に追いついた。17―14で迎えた前半終了間際には自陣22メートル線付近右で組まれたモールを止め、耐えしのいだ。

 17―17と同点で迎えた後半17分には、自陣10メートル線右のスクラムから大きく揺さぶり敵陣10メートル線付近左中間でイタリア代表の反則を誘発。ペナルティーゴールを決め、20―17と勝ち越しを決める。

 日本代表は続く21、27分にも加点するなか、イタリア代表は膝に手をつく選手や足の筋肉を伸ばす選手が続出。衰えを知らぬ日本代表との運動量の差を感じさせていた。

 以下、共同会見時の一問一答(編集箇所あり)。

オシェー

'''「こういう展開ですと、試合後はいろいろと話すのが難しい。スコアが多くを語る試合でした。試合中、我々が勢いづけるキーになる瞬間は2、3あったが、そこを利用して試合を変えられず、ずるずると行ってしまった。逆に日本代表はそのあたりことをうまくやれた。

我々は、もっともっとフィットネスが必要だとも感じます。それがないと、やりたいことができない。ただこの試合終了はハーフタイムだと思っています。来週は我々のやりたいテストマッチをしたい」'''

ギラルディーニ

「まずは残念でした。テストマッチに勝とうとしていましたが、勝てなかった。ヘッドコーチの言う通りチャンスはあったが、それをものにできなかった。シックスネーションズ終盤戦でもそういうことがあったので、やり切るということに取り組まねばならない。ボールを持っていれば危険な存在になれたが、そうならなかった。逆に日本代表にそういう展開に持ち込まれました。逆に言うと、ディフェンスの時に彼らの自由なプレーをさせてしまった。これも取り組むべき課題だと思います。我々には来週もチャンスがあると思いますが、プレーの質をテストマッチレベルに上げていくにはさらにハードな努力をしないと」

――控え選手にはフォワードが多めでした。メンバーの配分などについては。

オシェー

「我々としては今日のメンバーのバランスはとれていた。フォワードの(を軸にした)ラグビーをしようとするとエネルギーがいるので。またハイテンポなゲームをするうえでどのメンバーを選ぶかは、見極めなければいけなかった。思った以上にエネルギーの損失、コンディションの問題があったというのが率直な印象です。決めきれなかった。勢いが必要。それが我々の問題です。こうした傾向は一夜では変えられないので、色々と考えないといけない。試合直後なので何とも言えないが、いまやれていることを鑑みると、よくできる自信はあるが、試行錯誤している状況です。勢いを作れるシチュエーションが必要」

――日本代表に想定外のものはあったか。

オシェー

「想定外のことは見受けられなかった。自分たちのコントロールできる点にフォーカスしてきたが、今日はそれができなかった。勢いを持ってコントロールすべきところで、引き離されてしまった。勝つにはどんどん自信をつけていい循環にすべきだったが、それができなかった。日本代表はフィットしている。まとまっている。サンウルブズ(スーパーラグビーの日本チーム)からの継続性も感じられますし、そこに加えて、アマナキ・レレイ・マフィのような選手が加わっている。マフィはスペシャルな選手です。来週の試合では、我々に勢いをもたすようにしていきたい」

――試合をコントロールできなかった要因。

オシェー

「きょうの試合では、最後の10分を見ると日本代表がゲームをコントロールした。最初の15分もどちらかというと日本代表がコントロールしていた。ただ、80分の中で我々の方に傾きかけた瞬間があった。そこで適切にやりたいことを遂行できれば、ゲームの内容が変わっていた。前半終盤、14―17とされたところ、17-17と同点に追いついたところでは、我々がトライを取るべきだったができなかった。日本代表が疲れてきたような時にもっとすべきことをすべきだった。そこで得点をすること――それを我々はスコアボードエナジーと呼んでいます――ができなかった。セットプレー、ブレイクダウン。改善する点は様々あります。うまくできた部分はあるので、そこを使ってエナジーシフトをしたいです」

 試合途中からガス欠の感を覗かせたことを踏まえてか、指揮官は「もっともっとフィットネスが必要だ。それがないとやりたいことができない」「エネルギーの損失、コンディションの問題があった」と強調していた。

 実は日本代表の昨年6月、今度のイタリア代表と似た状況でテストマッチに挑み、若手主体のアイルランド代表に連敗していた。この季節は同じ轍を踏むまいと、通常より1週間長い準備期間を設置し、決戦1日前には選手の判断で試合前練習をスローペースなセッションに留めていた。

 準備の質が勝負を左右する好例が、今度の80分だったろう。16日には兵庫・ノエビアスタジアム神戸で再戦がおこなわれる。基礎体力という「一夜では変えられない」課題を抱えるイタリア代表に対し、日本代表は連勝できるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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