なぜレアルは”ベンゼマ不在”で苦戦するのか?エムバペ獲得の可能性とアンチェロッティの目論見。
34歳のストライカーが、必要不可欠な存在になっている。
レアル・マドリーはコパ・デル・レイ準々決勝でアスレティック・ビルバオに敗れた。カリム・ベンゼマが負傷欠場した試合でノーゴールに終わり、0−1で屈して大会を後にした。
マドリーはリーガエスパニョーラで首位をキープしている。だがベンゼマ不在の中で、いかに戦うかという課題を突きつけられているのは確かだ。
■代表復帰と出場時間
2009−10シーズンからマドリーでプレーしているベンゼマは、以降、レギュラーとして活躍してきた。なかでも今季においてはプレータイムが非常に多くなっている。今季のベンゼマの出場時間は2836分(リーガ第23節終了時点)で、これは2014−15シーズンに次いで2番目の数字である。
ベンゼマのプレータイムが増えたのは、フランス代表復帰があったからだ。彼はマテュー・ヴァルブエナの“セックステープ”騒動で長く代表から離れていた。しかしながら、EUROを目前に控えた2021年5月にディディエ・デシャン監督と和解して代表復帰を果たしている。
今季、ベンゼマは負傷で5試合を欠場している。レアル・ソシエダ戦とエルチェ戦では、足を痛めて途中交代した。昨季、この段階では試合中に交代を強いられたことはなかった。
2009年夏にリヨンからマドリーに移籍したベンゼマだが、同時期にクリスティアーノ・ロナウドやカカーが加入していた。フロレンティーノ・ペレス会長の下で新たな「銀河系軍団」が形成され、その一員に組み込まれた。そして、2013年夏にガレス・ベイルが加入すると、「BBC」と呼ばれる3トップがマドリーの大看板になった。
「BBC」をはじめに指揮したのは、奇しくもカルロ・アンチェロッティ監督である。ベンゼマに与えられた役割は、攻撃で潤滑油になることだった。もっと言えば、C・ロナウドの決定力を生かすために、スペースメイクとポストプレーをこなすことだった。
C・ロナウドと一緒にプレーした最後の2017−18シーズン、ベンゼマは公式戦12得点をマークしている。決して悪くない数字だ。だが2018年夏にC・ロナウドがユヴェントスに移籍してからは、18−19シーズン(30得点)、19−20シーズン(27得点)、20−21シーズン(30得点)と得点力は飛躍的に向上した。
「ベンゼマはフランスの史上最高のストライカーだ。長きにわたり、それを証明してきた。レアル・マドリーで500試合以上に出場して、重要なゴールをたくさん決めてきた。そういった彼のキャリアがすべてを物語っている。ベンゼマこそ、ベストだ」
「ベンゼマは完全な選手になった。ゴールのことだけを考える典型的な9番ではない。だから私は彼が好きなんだ。攻撃でプレーに絡み、アシストまでしてくれる」
これはジネディーヌ・ジダン前監督のベンゼマ評である。
■アンチェロッティの起用法
コパの敗退が決まった試合で、アンチェロッティ監督はマルコ・アセンシオをファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)で起用。後半には、そのポジションにイスコを据えた。
ジダンやユレン・ロペテギといった歴代指揮官も、同様の解決策を試みた過去がある。ジダンは昨季のチャンピオンズリーグのアタランタ戦でイスコを、ロペテギはプレシーズンのマンチェスター・ユナイテッド戦でアセンシオをゼロトップに据えていた。しかし、いずれも根本的な解決には至らなかった。
「ボックス内で仕事ができる選手がいない」とはリーガ第22節でエルチェ戦に引き分けた後のアンチェロッティ監督のコメントだ。
現在、マドリーの補強候補としてキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)やアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)の名前が挙げられている。冬の移籍市場での獲得はなかったが、次の夏に向けて大型補強の要求が強まるかもしれない。