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旧統一教会の分派「霊連世協会」教会建設反対のパレードが開催 「市民の反対は知らない」はもう通じない

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
7月8日のパレードの様子・筆者撮影・修正

2023年7月8日で、安倍晋三元首相の銃撃事件から1年が経ちます。銃撃したとされる山上徹也被告は、旧統一教会への恨みがあり犯行に及んだとされており、この事件を契機に、旧統一教会が政治家のみならず、全国の自治体にも様々な影響をもたらしていた実態が明らかになります。

同日「わが町・府中に”統一協会”系カルト集団はいらない!市民実行委員会」が主催しての教会建設反対のパレードが行われました。今年2月4日のパレードに続いて2回目となります。

市民らの抗議の活動が工事中断に追い込む

府中市には「霊連世協会」という旧統一教会の分派とされる団体の教会が建てられようとしています。現在、コンクリートの基礎部分まではできていますが、工事は中断しています。

近隣住民の話では、工事が最初にストップしたのは、昨年7月、安倍元首相の銃撃事件が起きた頃だそうです。その後、工事が再開したようですが、秋ごろに再び建設は止まりました。

取材のなかでみえてくるのは、工事業者も最初は「教会」とだけ聞かされていており、「一般の教会建設」と思って工事を始めています。後にここが旧統一教会の流れを組む分派団体であることを知って驚いたといいますが、今、工事が中断されている理由もここにあるようです。しかし現在も、工事が中断されたままの状況になっているのは、何より市民らが立ち上がり、抗議の活動を続けている結果だと思います。

教会がダメなら、集会所を作ろうとする動きも

しかし、教会の近くのは信者が寝泊まりをする「ホーム」と呼ばれる施設もあり、今はここを集会所にするべく改修工事をしているとの情報もあり、教会がダメなら、集会所を作ろうとする動きに、住民の不安は高まっています。

しかも、東京農工大の横に教会は建てられてようとしており、その近くには中学校、高等学校などたくさんの教育施設があり、学生らが勧誘される懸念も広がります。

「救世主は人からお金を取るものではない!」との厳しい声

パレードに先立って、府中市議会議員・からさわ地平議員・前川浩子議員・竹内ゆう子議員ら参加の挨拶もありました。

前川議員は「農工大の前の霊連世協会、あの人たちがなんといおうと、統一教会です。統一教会の文鮮明の言葉のなかに『霊連世協会は次の世代の統一教会を導く』と書いてあります。非常に危険なのです」と話します。

さらに6月に幹部向けに韓鶴子総裁が話した「日本は第二次世界大戦の戦犯国。ならば賠償すべきでしょう」や「私を独生女(救世主)だと理解できないその罪は許さないと言ったのに」と話したうえで「(日本の政治は)滅びるしかないわよね」といった報道があります。

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その件に触れて「私が非常に怒ったのは、韓鶴子(総裁)は、自分を救世主と認めないと、滅びるといった言葉です。救世主は人からお金を取るものではない!」と厳しく糾弾したうえで「このまま教会が建たないように皆様と共に力を合わせて、市民の力で府中市、多摩市からカルト集団を追い出しましょう!」と力強く声をあげます。

住民ら約90人が参加してのパレード

住民ら約90人が参加して、府中市の明星前公園からスタートして、建設予定の教会や「ホーム」の前などを通り、「教会の建設、事務所の建設を今すぐに中止!」「カルト集団はわが町府中市にいらない」「学生の勧誘を許さない」などの声をあげて、約40分間、行進しました。

到着した公園では、偶然居合わせたと思われる、ベンチに座る高齢男性が拍手して迎えるなど、地元の方々の関心も高かったように感じています。

「市民の反対は知らない」はもう通じない

以前に、筆者が霊連世協会の「ホーム」を直撃して信者に「市民の反対を知っているか?」と尋ねたところ「聞いたことがないですね」との答えを得ました。

パレードが「ホーム」の前にやってきて、通過するまで、ずっと様子を見ていましたが、誰も出てきませんでした。しかし施設の窓はあいていましたので、その反対の声は十分に聞こえているはずです。「市民の反対は知らない」はもう通じません。

集会宣言を岸田首相、永岡文科大臣、小池知事、高野府中市長に送る予定

第2回・怒りの市民パレードでは、「集会宣言」が配られました。

責任者である甲田直己さんによると「今回は、多摩市の方もパレードに参加して頂きました。今後も連携していきたいと思います。第2回・怒りの市民パレードの集会宣言を、岸田文雄首相、永岡桂子文科大臣、そして小池百合子知事、高野律雄府中市長にも送ります」ということです。

先日、韓鶴子総裁から、一国の首相である岸田文雄氏を呼びつけるような言葉がありましたが、文書のなかでもそれに触れていて「宗教人とは思えない発言に、はっきりとした態度を表明すべき」と岸田首相に強く求めます。

小池都知事には「今、問題になっているのが、他の地域のことではなく、『東京都』の出来事」としたうえで、「阿部多摩市長の主張・要望を大いに励まし、知事の権限を再断言、発揮するよう」に求めます。

高野府中市長には、「統一協会」系のカルト集団が、正体を隠しながら、暗躍することを許すことは、決して市民のためにならないとして、積極的に対応を取るように訴えます。

府中市の隣、多摩市でも旧統一教会が大規模な土地を買い取り、施設建設に向けてと思われる工事を始めようとしています。「多摩市の住民らも立ち上がって反対運動を展開しています。その連携を共に強めていきます」(甲田氏)と話します。

多摩市以上に懸念していること

これまでも指摘してきたように、教会や集会所ができれば、信者らがそこに多く集まるようになります。何より旧統一教会の教えの根本にあるのは、伝道とお金の集めの活動です。霊の子3人(最低3人を伝道が必要)を立てなければならないという、文教祖からの教えがありますので、信者らは必死に布教活動をします。

多摩市以上に懸念しているのは、彼らが分派団体として活動している点にあります。

旧統一教会は教団本部の方針として、教団名を告げないなどの「正体を隠しての伝道はしないように徹底させている」といいます。実効性の有無は怪しいところですが、まずは公言しており、私たちもその監視の目を強めることができます。しかし分派である「霊連世協会」は「旧統一教会とは関係がない」としていますので、今後も「正体隠し伝道」を続ける恐れがあります。

特に心配されるのは、社会経験のない若者がターゲットにされることです。彼らは騙されないための知識が不足しているうえに、恋愛やこれから先の就職に対する不安など、様々な悩みを持ちがちで、そこに付け込まれて「相談にのってあげる」などと誘われてしまうことになります。それに正体隠しの(教団名を告げない)イベントなども、旧統一教会のお家芸なので、それをこの分派団体が行う可能性も否定できません。

他の分派団体の取材をしてきてわかりますが、時の指導者の意向によって、文教祖の教義が独自に解釈されて、教えに忠実となり過激な行動に出ることも十分にありえますので、より厳しい住民の目が必要になってきます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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