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NBA最高PGの新天地

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
10月2日のMedia Dayでポーズをきめるリラード(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ついにデイミアン・リラード(33)が、ミルウォーキー・バックスのユニフォームを纏った。

 彼がマイアミ・ヒートへのトレードを望んでいたことは周知の事実である。が、最終的に選んだのは、バックスだった。ここ数日のミルウォーキーは暖かく、10月初旬の熱波がタイミングよく訪れた。リラードは「中西部も、それほど悪くないかもしれない」と感じたそうだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 リラードは言った。

 「これまでに僕がミルウォーキーに来た時って、いつも雪に見舞われたりして、ホテルから出られなかったんだ。今回、この地で太陽を見て、これなら大丈夫かもしれないと、少し微笑んでしまったよ」

 11シーズンNBAでプレーし、7度オールスターに選ばれた彼が、バックス行きを決めた最大の理由は、ヤニス・アデトクンボの存在だ。2021年、バックスはアデトクンボの活躍もあってNBAチャンピオンとなった。翌年の5月、ファンがSNSでリラードに、コンビを組みたい現役選手を1人挙げるとしたら? と質した折、リラードの口から出た選手がアデトクンボだった。

リラードとアデトクンボの相性は良さそうだ
リラードとアデトクンボの相性は良さそうだ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 リラードは、次のように続けた。

 「ヤニスのような選手と共にプレーすることが出来るなら、ゲームは簡単、かつシンプルなものとなる。僕がプレーする折、自身に課すやり方や、試合の攻撃の仕方によって、彼もこれまでに無かったチャンスを得る筈だ。今、言える一番重要なことは、それがどれだけエキサイティングなものか、僕がいかに興奮しているかだよ」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨シーズン、プレイオフ第1ラウンドで早々と姿を消したバックスだが、早くも2024年のV有力候補に挙げられる。チャンピオンとなる可能性の低いチームで孤軍奮闘してきたリラードにとっては、かつてない経験だ。

 彼はアデトクンボ、クリス・ミドルトン、ブルック・ロペスと並んでポーズをとりながら、鋭い視線でカメラを見詰めた。まさい、虎視眈々と優勝を狙う目だった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2023年2月26日のヒューストン・ロケッツ戦で71得点を挙げた程のPGでありながら、優勝には程遠いチームでプレーしていたリラード。ついに己の力を爆発させる時がきた。

 彼はどんな時も、「まだ十分じゃない。まったく満足できない」と言いながら現役生活を送ってきた。NBAチャンプとなれば、ひょっとしたら自身の足跡に満足する瞬間を得られるかもしれない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 今年のバックスは、絶対に見逃せない。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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