投票用紙に「ドナルドダック」 練習は小学校から!子どもに考える力を、フィンランド社会の授業
「君たちが投票するまでにはあと数年あるけれど、今から投票システムを少しずつ理解していこうね」
フィンランドの都市タンペレにある公立インターナショナルスクールの社会科の授業で、ミーカ先生が話した。
筆者が訪問した時期は、フィンランド国政選挙(4月2日)の直前。フィンランド義務教育6年生にあたる12~13歳の社会科の授業では、投票の仕方を学んでいた。
「身分証明書を見せないといけないのは、どうしてだと思う?」
「何歳から投票できるかな?」
「投票者の番号を忘れていても、投票はできるかな?」
「誰に投票したかは、言わないといけないのかな?」
先生はすぐには答えを言わない。
生徒に自分たちで考えてもらうことを大事にしている。
実際の投票マッチングを使用、質問内容は先生が説明
「投票マッチングは公共局YLEがつくったものと、若者協議会アッリアンシがつくった若者向けの両方を使用してもらいます」とミーカ先生。
投票マッチングの結果、自分の考えに最も近いのは「小規模の政党」となった生徒が多かったことは、先生や生徒を驚かせたそうだ。
他の生徒が投票マッチングで自分の候補者を確認している間、先生は他の生徒にまた実践的な指示をする。
「じゃあ、自分の支持する人に投票するように、他の人を説得してみて」
投票する練習だけではなく、投票会場のスタッフ役も
ふざけて、一度に何枚も投票用紙を投函しようとした生徒もいた。
先生「おや、10枚の投票用紙を投票箱に入れようとしている人がいるね。こういう事態を防ぐには、どうしたらいいかな?」
投票する練習だけではなく、投票会場での身分証明書の確認係や投票箱で不正が行われないことを見守る係なども生徒は体験する。
マイナさん(12)「投票の練習は楽しい。未来が楽しみ」
アンナリさん(12)「早く投票したいです」
マルッカさん(12)「クールだった。初めて投票を試すことができた。わたしはサンナ・マリン首相をすごいなと思っています」
候補者の名前に「ドナルドダック」
45分の授業で全てを終わらせることはできないので、この日は投票の練習まで。次の授業までに投票結果をカウントしたい人たちだけが教室に残った。
中にはふざけて「ドナルドダック」と書いた人も。北欧では人気のディズニーキャラクターで、実際の選挙でも「ドナルドダック」と書く人はいる。
「実際の選挙でも起こりうること。ドナルドダックと書かれた投票用紙があるのは次の授業で話題にしやすいからいいね」と先生は笑顔で喜んでいた。
先生「結果は最低2回は確認してね。どういう風に数えるといいと思うかな?」
ひとつの答えがあるわけではない問いが次々と切り出された。
初めての投票練習に、子どもたちも楽しそうだった。
「どうすればいいかな」「なぜ、そうだと思う」
自分たちで考える力を養うことがフィンランドの主権者教育で重要視されていることが、しみじみと伝わってくる45分間だった。
日本では若い世代に「なぜ投票に行かないのか」と問うことがあるが、これほど早い時期から子どもが自分で投票先や投票制度を知り・考える力を育てている国もある。
Text: Asaki Abumi