【NHL】 芝の上と氷の上! 選手とレフェリー! がんを克服した「W二刀流」の男を知っていますか?
ゴルフのメジャー大会の一つ「全米オープン」が、明日(現地時間)からニューヨーク州のシネコックヒルズ ゴルフクラブで始まります。
日本では、昨年の大会で2位となった松山英樹に注目が集まっていますが、ここへ来て、現地のメディアの注目が一気に集まっている選手がいます。
その選手は、ギャレット・ランク(30歳・タイトル写真)です。
▼予選を勝ち抜いたカナダ人
「ギャレット・ランク」という名前を耳にして、かなりゴルフに詳しい方でも「聞いたことがないなぁ」と言うでしょう。
もっとも、それもそのはずで、ランクは予選を勝ち抜いたカナダ生まれのアマチュア選手。
それにもかかわらず注目が集まっているのは、 ”もう一つの顔” があるからです。
どんな顔なのかと言うと、ゴルフプレーヤーであるとともに、 NHLのレフェリー を務めています!
▼ゴルフ少年はアメリカ行きを断って経済を学ぶ
カナダのオンタリオ州で育ったランクは、少年時代からゴルフを楽しみ、その腕前は、カナダのアマチュア代表チームに選ばれ、アメリカの大学から誘われたほどでした。
ところが、ランクはアメリカ行きを断って、オンタリオ州にあるウォータールー大学へ進学。
彼の熱意のベクトルは勉学へ向けられ、経済学の学位を取得しました。
▼選手ではなく、レフェリーへ
その一方で、アイスホッケーが盛んな地で育ったランクは、「カナダでナンバーワンのスポーツだからね」と自ら言うように、5歳の頃からアイスホッケーを楽しみました。
ところが、やがてランクの関心のベクトルは、選手ではなく「レフェリー」へと向かっていきます。
▼ハンバーガー屋で働くよりいい!?
14歳になってから、地元の試合などを皮切りに、ランクは積極的にレフェリーを引き受けるようになりました。
「ハンバーガーショップで働くより、レフェリーの方が簡単だと思ったから」と冗談めかしていましたが、多くの試合でレフェリーを担ったことは、これ以上ない実戦経験になったはずです。
その後もランクは、AHL(アメリカンホッケーリーグ=NHLの二部リーグに相当)や、OHL(オンタリオホッケーリーグ=NHL選手が多数育ったトップジュニアリーグの一つ)の試合でホイッスルを吹くようになり、試合経験を積んでいきました。
▼悲願のNHL公式戦デビュー!
そして、2015年1月15日に、ついにNHL公式戦デビュー!
当日は、家族や友人など50人が、カナダからバスで駆けつけ、ランクの晴れの姿を見届けたのに加えて、ホームチームのバッファロー セイバースから、祝福のメッセージも贈られました。
▼73試合でホイッスルを吹く
ランクのNHLデビューまでの道のりには、追い風も吹きました。
というのは、近年のNHLでは、年齢との兼ね合いから、大事な試合でホイッスルを吹いていたベテランレフェリーの引退が目立ちます。
その影響から、ランクの公式戦デビューは、2000年代前半頃に比べて早かった上、まだ4季目にもかかわらず、今季のレギュラーシーズンで「73試合」(レギュラーシーズンの試合数は各チーム82試合)に出場。
42人のレフェリーの中で4番目に多い試合でホイッスルを吹き、文字どおりフル稼働しました。
▼プレーオフは出場ゼロ
ところが、4月11日にプレーオフが始まってからは、(怪我によるレフェリー交代などを担うスタンバイ役が1試合だけありましたが)ランクのレフェリー姿が見られなくなりました。
なぜなら、ゴルフシーズンに入ったからです!
▼レフェリージャージからゴルフウェアに
縦じまのレフェリージャージからゴルフウェアに着替えたランクは、全米オープンにエントリー。
NHLのシーズン中は、「4回しかコースに行けなかったよ」と本人が口にしたように、試合勘が戻るか懸念されましたが、それは杞憂に終わりました。
同じくNHLのレフェリーを務めるダン・オロゥクが、キャディを買って出てくれた心意気も、モチベーションにして、ランクは今月はじめにジョージア州で行われた予選を勝ち抜き、「全米オープン」の出場権をつかみました!
▼話題にしてもらえるのは、ありがたいことだよ
駆け足でランクの歩みを振り返ると、幸運にも恵まれ、順風満帆だったように見えますが、6年前には癌を患い、またマイナーリーグでレフェリーを務めた経験もある父親のリチャードは、ランクのNHLデビューを見ることなく、心臓発作のため他界しました。
しかし、悲しみや困難を乗り越えて、全米オープンに出場するのにあたり、大勢のメディアから注目を浴びている現状を、ランクは「話題にしてもらえるのは、ありがたいことだよ」と言って、自らの力に変えようとしている様子です。
▼W二刀流の男は、どこまで健闘できるか!?
「芝の上(ゴルフ)と氷の上(アイスホッケー)」
「選手とレフェリー」
全く異なる二つのステージを生きる「W二刀流の男」は、トップレベルのプロを相手に、どこまで健闘できるでしょうか?