地域の困り事を解決へ 最適な企業を互いに紹介
地域の事業者が所属する異業種交流会等主催の勉強会は全国で活発に行われている。新サービスや新商品開発が目的になったものも多い。
しかし、地域の支援機関などと組織同士で密に連携し継続性を持って取り組んだとか、具体的にビジネス化したという話はあまり聞かない。
単年度のイベント的なものとして終わる傾向も見受けられる。
そのような中で、山形県中小企業家同友会山形支部が山形市売上増進支援センター(Y-biz)との連携により生み出した成果を紹介したい。
山形県中小企業家同友会山形支部は、会員企業同士が協力して地域の課題解決を目指そうとするスマイルパートナー(SP)プロジェクトを18年に立ち上げ企業連携の可能性を模索していた。
企業や業種の枠を超えて各社の強みを生かした連携で、新しい価値を生みたいという思いがあった。会員にはかねてY-bizを利用していたメンバーが複数いたことから、21年5月からY-bizにファシリテーターを依頼し「SPラボ」と名付けた勉強会が始まった。
SPラボは1カ月に1度の頻度で開催された。Y-bizはワークショップなどの手法で、社会課題や市場ニーズの洗い出し、解決手段の検討、自社が提供できる価値など強みの活かし方について、柔軟な思考で徹底的にアイデアを出すところから着手した。事業化できそうなアイデアが絞り込まれると、今度はより現実的な思考で、買い手目線で必要な情報を整理していった。
勉強会とは別に、SPラボの幹事である企業経営者とは、進捗や課題の共有、今後の進め方について毎月打ち合わせの場を設けた。彼らは会員企業に向けて積極的にSPラボ参加の声掛けを行い、毎回のSPラボの内容を発信した。
「きいでけろ」とは何か
実際に事業化されたサービスの1つは、地域の困りごとを、中心メンバーである企業の店頭や電話で受け付け、同友会会員200社の中から解決にあたれる企業を紹介する「きいでけろ」だ。
想定している利用者は地域の情報に明るくない移住者や、ネットでは探しきれない地域に根ざした信頼できる企業を探している人、ネットの活用が難しい高齢者らだ。
昨年12月1日にサービスを始動させてから10件以上の相談が寄せられ、紹介された企業の多くが受注している。この取り組みに共感した事業者の同友会への新規入会もあったそうだ。
また、現状を変えていこうというやる気が高まり、自社の新サービス開発にチャレンジするメンバーも生まれたという。
地域の異業種交流団体などが所属会員を一律に紹介するといった取り組みはよくあるが、会員同士が「お互い様精神」のもとクライアントを紹介しあうのをサービス化したというのはあまり聞かない。この事例からは、自社や地域の活性化に対する当事者の危機感の強さを感じる。だからこそ、この取り組みの意義や価値が共有でき、アイデアを具現化するところまでたどり着けたのではないだろうか。
【日経グローカル(日本経済新聞社刊)462号 2023年6月19日号 P45 企業支援の新潮流 連載第3回より】