レノファ山口:長崎FWファンマから3失点。内容なき惨敗。「レノファらしさ」を取り戻せ
J2レノファ山口FCは4月29日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でV・ファーレン長崎と対戦。長崎のFWファンマにハットトリックを決められ、0-3で破れた。長崎とのリーグ戦対戦成績は0勝3敗。順位も一つ下げて19位に後退した。
明治安田生命J2リーグ第10節◇山口0-3長崎【得点者】長崎=ファンマ(後半2分、同7分、同38分)【入場者数】5503人【会場】維新百年記念公園陸上競技場
相性の悪さだけが敗因ではないだろう。自分たちのサッカーが出せなかったのか、出そうとしなかったのか。全体的に間延びし、効果的な縦パスや相手陣内での反復攻撃もほとんど見られなかった。修正を加えたはずの後半、重要な立ち上がりにセットプレーから連続失点し、試合は決した。次の試合まで中3日しかない。意図しないサッカーでの敗北だったとポジティブに考え、狙いとするスタイルを出せるよう頭を切り替えたい。
距離感悪く、前線が孤立
前週のゲームで名古屋グランパスに快勝したメンバーをそのまま起用。唯一、MF小野瀬康介を1列前に出して1トップに抜てきし、MF米澤令衣を右サイドに置くという変更を行った。小野瀬のシュート技術の高さを評価しての入れ替えだったが、小野瀬が前を向いてボールに触る場面は少なかった。一方で長崎はファンマを4試合ぶりにスタメンに入れ、ファンマを含めた高い位置からの追い込みでレノファの起点をつぶしていく。
この長崎の戦いに対して序盤は対応できなかったレノファ。前半20分くらいになると、ようやくボールを動かせるようになり、長崎の守備を引っ張り出す場面も見られるようになる。しかし、前線に収まりどころがなく、横から横へとボールは動いても、FWとしてピッチに立った小野瀬への縦への鋭い供給はなかった。「距離感が悪く、康介くん(小野瀬)を孤立させてしまった」(和田昌士)。前半アディショナルタイムに、和田のクロスに米澤令衣が頭で合わせたが枠を捉えられず、0-0で後半へと入っていく。
ハーフタイムで修正すべき箇所は明白で、間延びした陣形を回復させるため、上野監督は「後半は高柳(一誠)や佐藤(健太郎)がサポートに行こうと話した」と指示。またMF陣もシュート意欲を持ってピッチに再び向かっていった。
セットプレーで連続失点を喫す
ところが後半開始早々に長崎・MF澤田崇に裏を取られて決定的なピンチを招いてしまう。GK山田元気の好セーブで難を逃れるが、直後の右からのコーナーキックに対してマークが外れ、ファンマにゴールネットを揺らされてしまう。長崎にとっては4試合ぶりの得点。ファンマは先発した全ての試合でゴールを決めたことになった。
決定機を作られ、コーナーキックで失点。ラインを思い切って上げようという意識が吹っ飛ぶような場面が続き、にわかにピッチが混乱。セカンドボールを拾えなくなり、逆に長崎から反復攻撃を受けてしまう。後半7分にも長崎が今度は左からのコーナーキックを獲得。MF島田譲のキックがまたしてもファンマのヘディング弾を誘い出した。
昨シーズンの試合と同様、終盤になって長崎が引き気味になったため、レノファも2点を追いかける状態になってようやくボールが高い位置で動くにようになる。サイドバックも攻撃に加わり、前線の選手が前を向くシーンも増える。スピードのある加藤大樹やボールを溜められる岡本英也を投入し一矢報いるゴールへの期待が高まってきていたが、その矢先の後半38分、自陣ペナルティエリア内のハンドでPKを献上。これからという時間帯にファンマに3点目のゴールを許した。
0-3。攻撃にレノファらしさがなく、修正の進んでいたはずのセットプレーで大量失点。惨敗と言っていい内容と結果だった。長崎の高木琢也監督はレノファに関して「非常に対応しづらいチーム。縦パスを入れ、縦に入った中で全体が動き出すという流れがある」と分析した上で、「対応は非常に難しかったが、一番良かったのは縦パスに対してしっかりアプローチできたこと」だと話した。
レノファらしさを忘れていないか
レノファから見れば術中にはまったと言えるかもしれない。とはいえ、フォーメーションのギャップを逆手に取れば、間で回すこともできただろう。球離れを良くしたり、無駄走りになってでも縦へのランニングはもっと出してもいいはず。もちろん暑さやセルフジャッジで足を止めているべきではない。レノファらしさとは何か。それは美しくボールを回し、なおかつ汗を流し、90分間、戦い抜くことに他ならない。
「へこんでる場合じゃない。0-3は悔しく切り替えに時間はいるが、すぐに試合が来る」と前を向いたのはMF高柳一誠。「流れは相手どうこうではなく自分たちで持ってくるもの。まだ何か足りないものがある。監督が言っているように球際などをもっと意識し、そこで二次、三次攻撃で押し込めるようにしたいし、そういう回数を増やしていきたい」。レノファらしさのカギを握る冷静なボランチが語気を強めた。
長いシーズンを1日で例えたら、まだレノファという人物は靴紐をきゅっと締めて「行ってきます」と言っている頃合いだろう。今節は一緒に連れ出すはずの「レノファらしさ」を忘れたか、きっと階段あたりに落としてきた。焦ることはない。もう一度部屋に帰って取ってくればいいだけだ。家を出るのが少し遅れたからといってちょっと急ぎ足をすれば、先行くみんなに必ず追いつく。大事なのは忘れ物に気づき、取りに帰る勇気。もう一度歩きだそう。
※レノファの高柳一誠の「高」は異体字が登録名
レノファのホームゲームのマッチレポートはこのようにして掲載しているが、スタイルはJリーグ公認ファンサイト「J’s GOAL」でマッチレポートが掲載されていた時期(14年度まで)のものを踏襲している。(※原則として当時はJ2以上を扱っていたため、レノファのレビューが掲載されたことはなかった)
現時点で14年シーズンまでの各クラブ担当者やそれ以降の担当者などが、メールマガジンやウェブメディアの形で情報発信しているケースがかなり多い。Yahoo!ニュース-個人でも高村美砂さんがJ1ガンバ大阪のレビューを載せている。J2リーグでもウェブ媒体は多く、有料のケースもあるが、レノファのアウェーゲームに関しては相手側媒体をチェックしてみるのもいいかもしれない。