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iDeCoより節税効果の高いユニクロ型確定拠出年金とは?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
画像はイメージです(写真:miya227/イメージマート)

前回、「iDeCo=節税商品」の誤解と真実を解説では節税効果を3つに分解し、それぞれ真偽を問いました。今回はiDeCoより節税効果が高く、現時点で最強のメリットを有するユニクロ型の選択制企業型確定拠出年金制度(以下、選択制DC)について解説いたします。

社会保険料も減らせるユニクロ型選択制DCとは?

まず選択制DCについて説明が必要でしょう。勤務先で導入できる年金制度は確定給付型企業年金(DB)と確定拠出型企業年金(DC)があります。確定給付型企業年金は受け取れる金額が予め定まっており(給付額が確定)、誰でも結果が保証されている仕組みです。確定拠出型企業年金は毎月の積立額を決める(拠出額が確定)のですが、運用は加入者に一任され結果は保証されない仕組みです。

企業型確定拠出年金制度は通常、社員全員が対象になります。しかし、選択制DCは加入するかどうかを社員が選ぶことができます。給与の一部を確定拠出年金に振り分けることで所得が減少します。拠出額ははじめから所得とみなさないため、所得税・住民税以外にも「社会保険料」を削減する効果があります。

従って、選択制DCとiDeCoを比べると明らかに選択制DCが有利です。金融庁がiDeCoやNISAなどの非課税制度を喧伝しているので、iDeCoに高い節税効果があると思っている人が多いようですが、実際は選択制DCの方がメリットの数、額とも多いです。

iDeCoよりも凄い節税メリットとは?

iDeCoと選択制DCの違いは、(1)社会保険料の圧縮効果、(2)維持費の負担がないことです。iDeCoと選択制DCのいずれも、元本確保タイプの金融商品を購入した場合、金利はほぼゼロですから、貯める効果はあっても増やす効果はありません。ただiDeCoのように、維持費がかかる場合、金利<維持費となります。他の制度とフラットに比較することも必要ではないでしょうか。

またiDeCoは所得控除を活用できますが、選択制DCに比べると効果が限られています。つまり、どちらも所得ではない扱いだからこそ、所得税と住民税が減るにもかかわらず、iDeCoは社会保険料を減らせません。社会保険料は元の収入に対してかかるので、見かけ上収入を抑えるように見えるに過ぎません。同じ給与支給額の人が、選択制DCとiDeCoを比べれば、明確に選択制DC優位となるでしょう。

かつ、社会保険料の削減効果は勤務先にも及びます。社会保険料を労使合計で20%だとすると、拠出した金額の10%ずつの社会保険料負担が減ります。社会保険料は社会保険年度で計算するため、即座に社会保険料が下がるわけではありません。しかし、かけ金額にもよりますが、社会保険料負担を引き下げることができます。

詳しく知りたい人は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料額表を確認してください。給与支払額から選択制DCの拠出額を差し引いた分が報酬月額のどこに該当するか。報酬月額の該当する健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料それぞれの選択制DC加入前との差額が勤務先と加入者の社会保険料削減メリットとなります。

社会保険料が下がるとデメリットもあります。社会保険から給付を受ける場合の受取額が減ることです。将来の老齢年金、遺族年金、障害年金などの年金関連以外にも、健康保険や雇用保険からの給付制度も減額となる可能性があります。

また、拠出額次第では報酬月額が変わらず社会保険料削減効果がない場合もあります。個人での効果と会社全体での効果を検討すると良いでしょう。

■ユニクロ型選択制DCの知名度が低いわけ

ユニクロ型選択制DCという名称をはじめて聞いた人も多いかも知れません。ファイナンシャルプランナーの業界では、ユニクロが導入したときに制度を熟知して抜け目ない活用をする会社だと話題なりました。

一方で、会社にとっては社会保険料削減という大きなメリットがある一方で、従業員にとっては前述のように、老齢年金、障害年金、遺族年金(いずれも厚生年金)、健康保険、雇用保険の給付でデメリットになる側面も否定できません。従って、組合が強い企業や制度を理解できない会社は導入を躊躇することもあるでしょう。

そもそも、制度の認知度が低いですから、知らない人が多いのは当たり前です。選択制DCは国民の金融リテラシーというよりも、経営者や人事総務などの間接部門・スタッフ部門の人たちがどれだけ社員にメリットをもたせるかという考え方の差であるとも言えます。

日本経済新聞(2011年1月26日)の記事を確認すると、ユニクロが導入したのは確定拠出年金制度が導入されて間もない2002年ですから、約20年前です。他に、JFEスチール、ヤマト運輸なども導入しているとあります。

知名度が低いのではなく、知っている人はとっくにやっていて、iDeCoの方がメリットが低いのを知っているから、iDeCoの加入者数が200万人を超えないという考え方もできます。

もし、選択制DCに興味を持たれた人は、勤務先に「制度をできるのか、導入しない理由」を聞いてみるのもいいかも知れません。すでに導入が不可能なのか、単に知らないだけなのか、会社の情報収集力を確認するきっかけにできるでしょう。

いかがでしょうか。iDeCoと選択制DCはどちらがより効果がありそうですか?

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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