忍び寄る陰謀、ツァボの人食いライオン
野生動物が人間を襲撃する事件はしばしば起こっており、時として動物の犠牲になる人間もいます。
その中でもツァボの人食いライオンが起こした襲撃事件では、多くの人が犠牲になったのです。
この記事では青年将校と死闘を繰り広げたツァボの人食いライオンについて紹介していきます。
労働者の陰謀
ツァボ川にかかる鉄橋の建設工事は、猛威を振るっていた人食いライオンの脅威が一時的に収まったため、順調に進んでいました。
この間、作業員たちは川の調査や基礎工事に従事し、休憩時間には自然を楽しむ余裕もあったのです。
しかし、現場監督を務めるパターソンは多忙を極め、昼夜問わず作業や労働者のトラブルに対処し、スワヒリ語の学習まで行っていました。
工事は順調に進んでいたものの、橋に使用する適切な石材が見つからず、周辺には加工が困難な岩ばかりだったのです。
何日も探し続けたパターソンは、偶然にもブロックと鳥撃ちの旅で必要な石材を発見し、トロッコを使って現場に運び入れることができました。
その後、石工の増員を要請したものの、派遣された石工の大部分はただの労働者であり、本物の熟練工はごくわずかだったのです。
パターソンは賃金制度を出来高払いに変更し、偽の石工たちに対して適正な賃金を支払うことで、現場の秩序を取り戻そうとしました。
しかし、労働者たちは不満を抱き、仮病や喧嘩が頻発するようになりました。
ついには石工たちのサボタージュが発生し、パターソンが見回りに訪れた石切り場では、労働者たちは木陰で休憩していたのです。
これに激怒したパターソンは、彼らの頭上に銃を放ち、驚かせて作業を再開させました。
さらに、仮病を装って罰金を逃れようとした者たちの企みも見抜き、労働者たちにパターソンの厳格さを思い知らせたのです。
労働者たちはパターソンが許容できない人物であることを悟り、ついには彼を「亡き者」にする計画を立てました。
ある夜、労働者たちは密会を開き、翌日パターソンを採石場で殺害し、ライオンの仕業に見せかけることを決定したのです。
しかし、この陰謀はある労働者によってパターソンに密告され、彼はその警告に感謝しつつも、翌日も通常通り採石場に向かうことを決意しました。
翌日、採石場に到着したパターソンは労働者たちが不穏な動きを見せていることに気づきました。
彼は谷の上に連れて行かれる罠だと理解しつつも、あえて同行し、労働者たちを説得したのです。
パターソンは、自分を殺しても多くの者が絞首刑に処され、陰謀が失敗すれば別の監督が彼以上に厳しくなる可能性があることを伝えました。
そして、不満のある者はモンバサに帰ってよいと告げると、全員が仕事に戻ることを希望したのです。
一度は陰謀を鎮めたかに見えたものの、労働者たちは再度会合を開き、今度はその晩にパターソンを殺す計画を立てました。
しかしこの計画もまた密告によってパターソンに伝わり、彼はすぐに鉄道警察と地方官ホワイトヘッドに急報を送ったのです。
ホワイトヘッドとその部下は迅速に対応し、パターソンは襲撃を免れました。
数日後、鉄道警察が到着し、首謀者たちは逮捕され、モンバサでの取り調べによって陰謀の全貌が明らかになったのです。
首謀者たちは全員有罪となり、それぞれ懲役刑を受けました。
その後、パターソンは労働者たちの反乱に悩まされることなく、無事に工事を進めることができたのです。