仕事熱心な男性と結婚できたと思ったら、要領が悪いだけの人でした(「スナック大宮」問答集14)
「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪、愛知・蒲郡、大阪・天満のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに70回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
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仕事ができてもできなくても、ワーカホリックな人は結婚生活に向かない
「結婚するときに4人の候補者がいました。私が重視したのは働き者であること。働き者はつぶしがきくからです。今の夫は、遅くまで会社に残って働いていて、仕事熱心な人だと思いました。でも、結婚してからわかったんです。この人が残業しているのは、単に要領が悪くて仕事が遅いからなんだ、と」(40代後半の既婚女性)
スナック大宮には既婚者のお客さんも来てくれる。家庭内別居状態の人もいれば、笑える愚痴を披露しながらも夫婦仲が良さそうな人もいる。今回のテーマを提供してくれた女性は後者に当たると思う。不器用なので出世もできないけれど、真面目で優しい夫を愛しているのだろう。
彼女の体験談は婚活中の女性に参考になると思う。なぜなら、20代後半以降の働く独身女性に男性の好みを聞くと、「仕事ができる人」という回答がとても多いからだ。
バリバリと働いて稼いでいる(ように見える)男性がいたとする。確かにカッコいい。余裕のある大人に見える。恋の対象になりやすいのはうなずける。しかし、彼が本当に効率よく働いて成果を出しているのかどうかは、同じ職場で一緒に働いているのでなければ、ヘッドハンターでもない限り判定するのは難しい。
彼は「がんばっている振り」「仕事ができる振り」をするのが上手なだけかもしれない。もしくは、業界や会社の給与水準が高いので、そこに所属しているだけで輝いて見える場合もある。要領の悪さを長時間の残業でカバーしている人もいる。
筆者は大手企業で働く複数のワーキングマザーに取材をしたことがある。共通するのは、「育児に比べれば仕事ははるかに楽」「子育てと仕事を両立することで、効率よく働く姿勢が初めて身に着いた」「世の中の男性は残業できることに甘えている」といった意見だった。
やたらに仕事熱心で、いつも忙しそうにしている人はワーカホリックの傾向がある。仕事ができるかできないかはともかく、常に職場にいないと不安になるのだ。現実の企業社会ではこのような人たちが評価され、出世をしているケースも少なくない。実際に能力が高い人も多い。
世間体と稼ぎはいいかもしれない。しかし、彼らは家庭生活には関心が向かない。週末も妻子を置いてゴルフに出かける。文字どおりの意味で「亭主元気で留守がいい」と思っている女性でなければ、このような男性と結婚すると不幸になってしまうだろう。
何でも話し合えて助け合える。仕事ではなく生活のパートナーを見つけるのが結婚
既婚女性に、「もし今から別の男性と結婚して子育てをするとしたら、どんな男性を選ぶか」と聞いたら、「仕事ができて給料が高い人」と答えるのは少数派だと思う。彼女たちが重視するのは、「何でも話し合えて助け合える人」であるか否かだ。
何でも話し合って助け合うためには、基本的な価値観が似ている必要がある。例えば、親きょうだいとの関係。結婚しても親とベッタリ密着して「家族」であり続けたいのか、別世帯として適度な距離を置きつつも親しく付き合いたいのか、できれば縁を切りたいのか。人間関係に対する価値観が露骨に見える局面である。
大人同士が助け合うためには、お互いが家事を含めた仕事をしていることが前提となる。その意味では「ちゃんと働いている人」を結婚相手に選ぶことは間違っていない。ただし、「仕事ができること」に注目し過ぎると、より大事なことを見落としてしまいがちだ。
結婚相手はたった一人の人生のパートナーである。これから毎日、寝食を共にできるのか。親や子どものことを同じ目線で大切にできるのか。仕事ではなく生活を共有する相手として男性を見るようにすれば、今よりも幅広い層が結婚相手となり得ると思う。