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NY葬儀会社が60遺体をレンタルバンに放置 新型コロナ死者急増で限界超えか

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
NYブルックリンの葬儀場前で見つかった、遺体を乗せたレンタルバン。(写真:ロイター/アフロ)

コロナ禍のニューヨークでは、あってはならないことが次々と起こっている。

4月29日、葬儀場前の貨物運搬用バンから、新型コロナで亡くなり放置されたままの遺体が多数見つかった。

バンは合計4台で、ブルックリン区のアンドリュー・クレックリー葬儀場(Andrew Cleckley Funeral Home)前に駐車してあり、いずれもレンタカー会社から貸し出し中のものだった。

近隣住民から「異臭がする」と緊急通報電話があり、駆けつけた警官が車内から合計60体の遺体を発見した。

夫婦により経営されているこの葬儀場は、火葬待ちの遺体の収納スペースが足りなくなったため、レンタルトラック会社ユーホール(U-HAUL)からバンを借り、遺体を保管していたようだ。

CNNの報道では、氷の上に置かれていた遺体もあるが、少なくとも1台のトラックには冷凍機能がついていなかったという。

「できることは何でも自分でやってしまう」精神のあるアメリカでは、レンタカーのユーホールはよく利用されている。

筆者の周りでも店舗の施工、自宅のリノベーション、引っ越しなど、必要であれば友人の助けを借りながら、多くの人が自分たちで行う。

引っ越しの際に業者に依頼する人ももちろんいるが、節約のためにユーホールを利用して自分たちで荷物を運ぶ人も多い。筆者もユーホールを一度利用したことがある。日本に帰国する友人から買い取った家具を運ぶ時にバンを借りたが、簡単な手続きで借りることができ、費用もリーズナブルで大変利用しやすかった。

葬儀場はどこもいっぱい

現在、市内の葬儀場はどこも遺体で埋め尽くされている。クイーンズ区にあるジェラールJ.ノイフェルド葬儀場でも、室内いっぱいに置かれた無数の棺が映し出された。

新型コロナの治療にあたる同区エルムハースト病院の近くにあるこの葬儀場で現在保管されているのは、火葬待ちの25遺体だ。通常なら一時保管は週あたり平均7、8体だが、今では1日20体以上を超えるという。

犠牲者は、家族や友人が近づけない場所で静かに土葬や火葬を待つ。

我々はこのような悲惨な現実を目の当たりにするたびに、このウイルスがいかに冷酷なものであるかを改めて知る。

ニューヨーク州では4月上旬の最悪期、1日700人以上の人々が毎日毎日命を落とした。依然死者の数は多く、29日には新たに306人が亡くなった。州内の累計死者数は2万3616人となっている。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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