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韓国代表資格を剥奪されたDFチャン・ヒョンスが語った浦和に勝利した理由と古巣FC東京へのメッセージ

金明昱スポーツライター
ACL決勝で浦和を下して優勝を喜ぶアル・ヒラルDFチャン・ヒョンス(写真:つのだよしお/アフロ)

 “忘れられたチャン・ヒョンス、ACLで優勝の感激味わう”――。

 そう見出しを打ったのは韓国の総合ニュースサイト「デイリーアン」だ。

 24日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦で、アル・ヒラルのセンターバックとして先発出場した元韓国代表DFチャン・ヒョンスは、浦和の攻撃を無失点に抑えて、1-0の勝利に貢献。2戦合計スコア3-0でアジアの頂点に立った。

 浦和に勝利できた理由についてこう語っている。

「僕たちは試合中に積極的に意思疎通を図りながら、状況を把握しようと努力した。それが浦和に勝つことができた理由です。浦和はボールポゼッションを高めながらサッカーを展開するので、前線から積極的にプレスをかけていった。それが勝利のカギになったと思う」

 アル・ヒラルでも欠かせない選手へと成長し続けているのだが、韓国ではあまり注目されることはなかった。

 

 「デイリーアン」がチャン・ヒョンスのことを“忘れられた”と表現するのは、昨年の出来事が関連している。

 チャン・ヒョンスは2014年の仁川アジア大会で金メダルを獲得したときの韓国代表メンバーで、兵役を免除されていた。

 だが昨年、兵役免除に基づく社会奉仕活動で虚偽の報告を行ったことが発覚し、大韓サッカー協会(KFA)は代表選手資格の永久はく奪と罰金3000万ウォン(約300万円)の処分を下した。

 当時、韓国代表と前所属のFC東京でも主力としてプレーしていたころ。

 2022年カタールW杯出場に向けて貴重な戦力だったが、代表のユニフォームに袖を通すことはなくなった。

 そんな状況から韓国サッカー界から徐々に「忘れ去られる存在になってきた」と、韓国メディアは表現したかったのだろう。

 チャン・ヒョンスの精神的なダメージは大きかったに違いないが、そのあともピッチの上でサッカーを続けていくことに変わりはなかった。

 自身のプレースタイルや環境が大きく変わるわけでもない。代表選手としてプレーできないことは悔しいが、プロサッカー選手としての生は全うできた。

FC東京で成長できたのは“財産”

 ちょうど18年の春、FC東京のクラブハウスでチャン・ヒョンスをインタビューする機会があった。

 中国での3年半を経て、古巣のFC東京に戻ってきたこと、チーム初となる外国人キャプテンを任されたこともあり、とても気合いが入っていた。

 当時、FC東京に戻ってきた理由をこう語っていた。

「中国スーパーリーグは17年にルールが変わって、外国人選手の上限を4人から3人に減らしました。その結果、試合に出られない状況が続いたので、自分を必要としてくれるチームに行こうと考えたのです。中東、韓国、日本など、いくつかのクラブが声をかけてくれましたが、やはり、日本でプロデビューしたときの印象が強く、また日本でサッカーを学びたいという思いが強かったので、FC東京を選択しました。FC東京でプロになり、サッカーに対する姿勢を学び、技術やフィジカル面で大きく成長させてもらったのは自分の財産。Jリーグはレベルも選手の技術も高いし、熱狂的なサポーター、スタジアムの雰囲気は最高です。選手としてはいつも気合いが入ります。」

 日本のJリーグでプロデビューしたときの印象が強く、FC東京での環境もサポーターも最高だと言っていた。

 それに浦和レッズとのACL決勝戦のあと、韓国スポーツ紙「MKスポーツ」の取材に対し、チャン・ヒョンスはこんなことを話している。

「今もFC東京の試合をチェックします。移籍する前、FC東京の選手たちとお別れのあいさつをちゃんとできませんでした。自分もその部分がとても気になっていて、申し訳ない気持ちでいっぱいです。以前のチームメイトたちには必ずJ1で優勝してもらいたい」

 現在Jリーグ1位の横浜Fマリノス(勝ち点64)と2位のFC東京(勝ち点63)は優勝争いしている。今季途中、FC東京からアル・ヒラルに移籍することになったが、「古巣の結果が毎日気になって仕方がない」という。それだけ愛着のあるクラブであるということだ。

「ファン・ダイクと対決したい」

 そんな彼が、アル・ヒラルでアジアナンバーワンクラブの一員となった。代表資格はく奪という苦悩を乗り越え、今では最高の舞台で、最高の笑顔を見せていた。

 「MKスポーツ」は、チャン・ヒョンスが12月11日から開幕するFIFAクラブワールドカップ(W杯)も楽しみにしていることも伝えつつ、「クラブW杯はとてもいい経験になると思う。早くファン・ダイク(リヴァプール)と対決したい」との声も伝えている。

 日本のサッカーファンにとっては、クラブW杯でJリーグチームが見られないのは残念だろうが、元FC東京DFチャン・ヒョンスの献身的なプレーをぜひ見てほしいと思う。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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