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「尹大統領はなぜ人気がないのか?」 米外交誌が憂慮する尹政権の将来

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
尹錫悦大統領(JPニュースから)

 アジア太平洋の政治・安全保障問題を扱っているオンライン雑誌「ザ・ディプロマット」が13日(米国の現地時間)、「なぜ、尹錫悦大統領は人気がないのか」との見出しの記事を掲載し、尹大統領の支持率低迷の原因について独自分析を行っていた。

 韓国の2大世論調査会社「韓国ギャラップ」と「リアルメータ」の最新世論調査では尹大統領の支持率はそれぞれ20%、27%を記録し、どちらも尹政権発足(2022年5月)以来、最低の支持率を記録していたが、韓国では不人気の理由は主に「医療」や「経済」政策、それに尹大統領の「コミュニケーション不足」や「独断的な性格」などが挙げられていた。

 これに対して「ザ・ディプロマット」は不人気の理由として医師のストに加え、「野党との不毛の対立」や「南北(対北朝鮮)関係監理の失敗」、それに「言論弾圧」を挙げていた。上位3つは韓国の世論調査でも常にリストアップされているが、④の言論弾圧は意外だった。

 「ザ・ディプロマット」は、「尹大統領は自由や民主主義を強調しているが、特定のメディア媒体に対する彼の振る舞いは皮肉にも政府や大統領の家族を批判した場合は(大統領が)言論の自由を支持していないことがわかる」と指摘している。

 同誌は尹政権に批判的なMBC放送が2022年9月に国連総会出席のためニューヨークを訪問していた尹大統領が国際会議出席後、会場を後にする際に「議会でこの野郎どもが承認しないと、バイデンにとって非常に恥ずかしいことになる」と、朴振(パク・チン)外相(当時)らに呟いていたと報道したことを尹政権が問題視し、MBC記者の大統領専用機搭乗を排除したことを具体例として取り上げていた。

 同誌はこの件について「政権が発足した数か月後に『MBC事件』が起きたことで記者らは大統領に対する報道が非常に否定的な場合は、政府から告訴されるとの恐れを持ち始めた」と述べ、さらに「警察と検察も大統領に対するフェイクニュースを流布した容疑を受けた記者らの自宅と報道局を家宅捜査している」と、尹政権の報道への姿勢を批判していた。

 同誌はさらに「国境なき記者団」が5月に発表した『2024年世界言論自由指数』では尹政権が発足した年の2022年は43位だったが、昨年は47位、そして今年は62位まで下げ、言論の自由が減少していることを見せつけている」と指摘していた。

 同紙は冒頭で、「尹大統領には国家を運営する時間(任期)は残り2年6か月あるが、多様な懸案に対する彼の接近方式をみると、国民の支持を得られないかもしれない」と、尹政権の前途多難を予測した。

 尹大統領のメディアに対する不信は今に始まったことではない。大統領に当選した直後、国民との意思疎通を図るとして始めたぶら下がり会見を半年で中止したことからも窺い知ることができる。

 尹大統領はそもそも大統領選挙期間中のテレビ討論でも「これまで我が国では虚偽、歪曲報道に対する司法的措置がなされなかったため言論被害救済のような問題が起きている」として「徹底的に厳しく責任を問うたら今のような言論不信は生じなかったであろう」と発言していた。

 また、記者らとのやりとりでは「記事1本が言論者全体を破産させることのできるそうした強力なシステムが我々の言論のインフラに根付いていたならば公正性の問題は自然に解消され、問題は起きなかったであろう」とも主張していた。

 こうした発言に当時、韓国記者協会や放送記者連合会、韓国放送技術人連合会など言論団体は猛反発していたが、尹大統領は全く意に介さず、就任以来「フェイクニュース」の問題を重要視し、何度も口にしてきた。

 実際に昨年3月に訪日し、岸田文雄首相と首脳会談した際に元慰安婦や日本の水産物の輸入規制は一切議題に上がらなかったのに日本では「取り上げられた」と報道されたことに不快感を露した時には自国民に「日本のメディアは虚偽のニュース、情報を流している」と説明していた。

 また、日韓議員連盟(日韓議連)会長の菅義偉前首相と会談した際に共同通信が福島原発処理水の海洋放出問題について「時間がかかっても韓国国民を説得する」と尹大統領が発言したと報じたことについても「確認もされていないフェイクニュースである」と非難し、大統領室の関係者は「韓国と日本には反日感情と嫌韓感情を利用する勢力がある」との尹大統領の発言を引用し、一連の日本の報道を「嫌韓感情」を煽る勢力の報道であるかのようなコメントを出していた。

 尹大統領のこの問題に関するスタンスは一貫しており、最近も仁川で開かれた国際会議「世界知識フォーラム」での演説(9月10日)で「フェイクニュースや偽の宣伝・扇動から自由と民主主義を守るため、自由世界がより強く連携しなければならない」と訴え、13日に開催された国民統合委員会の第3期出帆式での演説でも「今、我が社会にはフェイクニュース、虚偽扇動で政治、経済、社会システムを狂乱し、自由民主主義体制を崩壊させようとする試みが余りにも多い」と批判したばかりである。

 なお、「共に民主党」など野党は尹大統領は政権批判者を「反国家勢力」とみなし、取り締まろうとしていると批判の声を上げている。

(参考資料:尹大統領の支持率は就任以来最低の20% 野党は大統領弾劾に着手)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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