大きなマイナス誌ばかりだが…育児系雑誌の部数動向(2023年1~3月)
育児に関する情報はいくらあっても足りないと感じるもの。情報取得のために雑誌は必要不可欠な存在ではあったが、最近はインターネットに主役の座を奪われつつある。育児系雑誌の現状における部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。
現在印刷証明付き部数の公開ページで取得できる、該当ジャンルの雑誌は9誌。2018年10~12月期までは7誌だったが、2019年1~3月期にPHP研究所の「PHPのびのび子育て」が休刊していないにもかかわらず非公開化されてしまった。同じPHP研究所のビジネス系雑誌「THE21」も同じタイミングで非公開化されているため、出版社における方針転換があったのかもしれない。さらに5期前には「プレモ(Pre-mo)」が脱落してしまう。
そして2022年4月からは「初めてのたまごクラブ」が妊娠2・3・4か月向けの「初めてのたまごクラブ」、妊娠5・6・7か月向けの「中期のたまごクラブ」、妊娠8・9・10か月向けの「後期のたまごクラブ」の3誌に分割されている。同様に「ひよこクラブ」は生後0・1・2・3か月向けの「初めてのひよこクラブ」、生後4・5・6・7か月向けの「中期のひよこクラブ」、生後8・9・10・11か月~1才代向けの「後期のひよこクラブ」の3誌に分割されている。これらの雑誌のうち印刷証明付き部数の連続性があるものは「初めてのたまごクラブ」のみとなる。
今期の時点で前年同期比が算出できるのは3誌のみだが、その全誌がマイナスで、誤差領域(5%幅)を超えた大きなマイナス圏。「初めてのたまごクラブ」については内容・対象読者層が事実上3分割されたため、印刷証明付き部数の減少は仕方ないのかもしれないが。
少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近にいる育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時に主婦層にもインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末の普及が進み、子育て層に向けた情報・コミュニティサービスの利用者も増えており、それらのライバルが多い中で雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。
前年同期比で大きく部数を減らしているが、「初めてのたまごクラブ」は要注目。
「初めてのたまごクラブ」は季刊誌。読者の立場にあった付録(今回はマタニティマークストラップや母子手帳ポーチ)がつくのも嬉しいところ。
部数動向の限りでは2016年10~12月期で大きく上昇を示し、それ以降は安定した部数動向に移行していた。何らかの方針転換があり、それが功を奏していたのだろう。掲載情報への評価が極めて高いことから、口コミでよさが広まっているのかもしれない。ただこの2年ほどは部数減少の動きが出ているのが気になるところ。今期では前期から続く形で前期比での減少が確認できるが、これは上記の説明の通り、内容・対象読者層が事実上3分割されたことによるものだと考えられる。
少子化だけでなく情報伝達媒体の多様化もあり、紙媒体は多ジャンルで厳しいビジネス環境下にある。しかしながら育児系雑誌ではその特異性もあり、雑誌ならではの付加価値を見出せる構成を示すことで、不調を乗り越える可能性を秘めている。育児情報を求める人たちにとって頼りになる存在となることができるか否か、出版社や編集部の力量が問われるところだ。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。