韓国軍が北朝鮮版イスカンデル弾道ミサイルの飛行距離690kmを600kmに修正
7月26日、韓国軍合同参謀本部は25日に発射された北朝鮮ミサイルは2発とも飛行距離600kmだったと発表しました。前日25日時点で690kmと分析されていた飛行距離は短く修正されたことになります。また北朝鮮の労働新聞は26日に「戦術誘導兵器システム」の武力デモンストレーションとする写真を公開、そのミサイルの外観は5月に発射実験されたイスカンデル短距離弾道ミサイルの模倣品と酷似しており、同一のものであると推定されます。
新たに修正された飛行距離600kmという数値で7月25日に発射された北朝鮮の短距離弾道ミサイルの性能再評価を行うと以下のようになります。最大高度については50~60kmという評価のままです。
- 水平距離600kmで最大到達高度50kmの弾道ミサイル・・・打ち出し角度が約18度の浅い弾道(ディプレスト軌道)。このミサイルを最もよく飛ぶ角度(最小エネルギー軌道。短距離ならば45度に近い)で飛ばした場合は水平距離約1000kmの最大射程。
- 水平距離600kmで最大到達高度60kmの弾道ミサイル・・・打ち出し角度が約21度の浅い弾道(ディプレスト軌道)。このミサイルを最もよく飛ぶ角度(最小エネルギー軌道)で飛ばした場合は水平距離約870kmの最大射程。
前日の浅い弾道での690kmという飛行距離から弾道を計算し推定した最大射程は1200km超というものでしたが、新たに下方修正された飛行距離600kmで計算し直すと能力的な最大射程は800~1000kmの短距離弾道ミサイルという評価になります。オリジナルのロシア製イスカンデル短距離弾道ミサイルは以前からINF条約の制限500kmを超えているのではないかと疑われてきた過去があるので、射程800km程度ならば大きさを変更せずに達成することも可能であるかもしれません。弾頭重量を軽量化して射程を稼いでいる可能性も考えられます。
なお韓国軍合同参謀本部は25日に発射された北朝鮮ミサイルについて「ロシア製イスカンデル短距離弾道ミサイルに酷似したプルアップ機動が確認された」と公式説明しています。プルアップ(pull-up)とは下降段階で機首を持ち上げて滑空することを狙ったもので、北朝鮮の労働新聞の発表でも「滑空跳躍型飛行軌道」という表現がされています。ただしあくまでイスカンデルは弾道ミサイルの仲間であり形状も一般的な弾道ミサイルそのもので、弾道ミサイルの範疇の中で上下方向の小さな軌道変更を行うものなので、ブーストグライド兵器(滑空兵器)には分類されません。