ノート(151) 懲役刑の執行で再び「ドブネズミ」に 拘置所で行われる処遇調査とは
~確定編(2)
受刑6/384日目
再び「ドブネズミ」に
「検察庁から書類が届いたから、確認してくれるか」
この日は三連休明けの月曜であり、朝食後、入浴を終えて独房で座っていると、幹部の刑務官からそう声をかけられた。近づいて見てみると、待ちに待った「執行指揮書」だった。
執行の起算日は実刑判決が確定した2011年4月27日であり、満期が2012年5月14日になっていた。宣告刑期こそ懲役1年6か月だったが、未決勾留日数のうち裁定参入が150日分、法定通算が15日分あり、これらが差し引かれることになっていたからだ。
満期釈放だとしても、約1年後の5月15日には出所し、社会復帰できるということを改めて正式な書面で確認できた。
「今日から懲役受刑者やからな。着ている服を全部脱いで、これに着替えて」
刑務官からそう言われ、ドブネズミ色の囚人服と官物である白のパンツ、シャツなどを渡された。懲役受刑者に普段着の自由などない。相変わらず使い古され、すえた臭いのするものだったが、逮捕されて拘置所に放り込まれた約8か月前の夜のことを懐かしく思い起こした。
パジャマは白と濃い灰色の縦縞模様であり、これを横縞にしたら、よくイメージされる囚人服そのものだった。
「検査するから、部屋の荷物を全部出しなさい」
着替え終わると、刑務官からそう言われた。有罪判決の確定前後で、所持できる物品に違いがあったからだ。ただ、判決後、身辺整理を行う中で、すでに不要な荷物については家族に郵送で宅下げをしていた。
独房内の荷物はわずかの本と文具類、はしや石けんなどの日用品くらいだったが、貸与されていた官物の黒色キャリーバッグにすべて入れ、そのまま刑務官に渡した。
「永谷園」の登場
「布団も交換する。廊下にある衣類も、こちらで預かるから」
次に、刑務官から、差し入れされていた布団類を独房から出すように言われた。刑務官の後ろには、彼らの指示を受けて舎房の清掃などを担当する「衛生兵」と呼ばれる受刑者が台車を持って立っていた。台車の上には、官物の掛け布団、敷布団と枕が置かれていた。
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