本日オープンしたレストランが世界中から注目されているワケ
ホテルレストランのリニューアルも注目
東京では多くのラグジュアリーホテルやデザイナーズホテルがオープンしています。2020年には、8月5日にTHE AOYAMA GRAND HOTEL、8月7日にフレイザースイート赤坂東京、9月1日にフォーシーズンズホテル東京大手町、10月2日にキンプトン新宿東京、10月20日に東京エディション虎ノ門がオープンするなど、魅力的なホテルがたくさん登場しました。
新しいホテルのオープンに加えて、既存ホテルにある料飲施設のリニューアルも興味が引かれます。なぜならば、シェフが新しくなり、コンセプトが刷新され、インテリアも模様替えし、全く新しいレストランに生まれ変わることもあるからです。
料飲施設をリニューアルしたホテルの中でも、耳目を集めているのがフォーシーズンズホテル丸の内 東京。
これまでにあった「モティーフ レストラン アンド バー(MOTIF RESTAURANT & BAR)」がリノベーションを施して、フランス料理「セザン(SÉZANNE)」とフレンチビストロ「メゾン マルノウチ(MAISON MARUNOUCHI)」の2つのレストランに生まれ変わりました。
フォーシーズンズホテル丸の内 東京の歴史
フォーシーズンズホテル丸の内 東京の料飲施設について、おさらいしておきましょう。
フォーシーズンズホテル丸の内 東京は2002年10月15日に開業しました。「エキ バー&グリル(ekki BAR & GRILL」)というグリルレストランがありましたが、2015年4月16日に「モティーフ レストラン&バー(MOTIF RESTAURANT & BAR)」という本格的なフランス料理店にリニューアル。
2015年1月6日から4月15日までの3ヶ月間を要し、内装やコンセプトを一新します。札幌のフランス料理店「モリエール」オーナーシェフの中道博氏がカリナリーアドバイザーを務めて話題となりました。
2021年1月12日に「モティーフ レストラン アンド バー」がクローズし、1月中旬からリノベーションが開始。4ヶ月以上の期間を経て、6月1日に「メゾン マルノウチ」が、7月1日に「セザン」がオープンするに至ったのです。
世界から注目される気鋭の料理人
「セザン」と「メゾン マルノウチ」を指揮するのは、1987年生まれのダニエル・カルバート氏。ラグジュアリーホテルの総料理長(エグゼクティブシェフ)としては非常に若いといってよいでしょう。
しかし、実力は折り紙付きで、経歴は実に華やかです。
イギリス出身のダニエルは16歳で料理の道に進み、ロンドンの人気店「The Ivy」などの有名店で約5年間研鑽を積みます。ニューヨークの「Per Se」、フランス・パリのパラスホテル「ル ブリストル パリ」のレストラン「Epicure」といった三つ星レストランで修業し、2016年に香港のフレンチビストロ「Belon」のヘッドシェフに就任。ミシュランガイドで2019年から2年連続で一つ星として掲載され、2020年には「アジアのベストレストラン 50」で4位にランクインする快挙を成し遂げました。
まさに世界で今最も注目されている料理人のうちの一人であるといえるでしょう。
ダニエル氏が大切にしていることは「Consistency(一貫していて、ブレがないこと)」。「一皿一皿に真摯に向き合い、素晴らしい料理を届けるためにひたむきに努力を続けることが成功への鍵だと信じている」といいます。
では、そのダニエル氏によって新しく生まれ変わった2つのレストランを紹介していきましょう。
メゾン マルノウチ(MAISON MARUNOUCHI)
「メゾン マルノウチ」は朝食からランチ、ティータイム、ディナーまでと一日中利用できるオールデイダイニング。ダニエル氏の繊細なセンスによって、ビストロ料理が新たに解釈され、シンプルながらも洗練された料理に紡ぎあげられています。
朝食では自家製サワードウ・ブレッドとまるごとのアボカドを用いた「アボカドトースト」、ティータイムではこだわりのセイボリーとスイーツが楽しめるアフタヌーンティーが人気です。
ランチとディナーはアラカルトが中心で、平日のランチにはコースも用意されています。代表的なものを紹介していきましょう。
カナッペ
「メゾン マルノウチ」はアミューズにも存在感があります。奥の「ハマグリのピクルス フルーツトマト」(1,518円、税・サ込)はハマグリを酸味のあるピクルスにし、フルーツトマトのジュレとバジルを合わせた爽やかな一品。
手前左の「煮込み仔豚 コロッケ グリビッシュソース」(886円、税・サ込)はコラーゲンたっぷりのテット・ド・コションのコロッケ。軽やかな酸味のグリビッシュソースが添えられています。
最後は「鱈子 からすみと三つ葉」(633円、税・サ込)。タラコがたっぷりとのせられた舟型のタルトレットで、カラスミと三つ葉がトッピングされています。
タンドリーフロッグレッグ カレー風味のレンズ豆 コリアンダークリーム
「タンドリーフロッグレッグ カレー風味のレンズ豆 コリアンダークリーム」(2,783円、税・サ込)は、タンドリー風味にしたフロッグの腿肉。コクと香りのあるレンズ豆のコリアンダーソースが合わせられています。別皿で添えられたコリアンダーヨーグルトソースを加えれば、より異国情緒感を強調できるでしょう。
和牛サンドイッチ ガーリックマヨネーズ
「和牛サンドイッチ ガーリックマヨネーズ」 (11,385円、税・サ込)は、240グラムもの黒毛和牛ステーキを用いた非常に贅沢なサンドイッチ。ほんのりと甘いブリオッシュ生地で、ジューシーなステーキ、シャキシャキとしたレタス、食欲をそそるガーリックマヨネーズソースを挟んでいます。
レモンカード ミルフィーユ
「レモンカード ミルフィーユ」(2,530円、税・サ込)は「メゾン マルノウチ」を代表するデザート。軽やかなメレンゲを合わせ、パイ生地でレモンクリームとディプロマットクリームをサンドしています。非常にサクサクとして、酸味が爽やかです。ボリュームたっぷりの料理を食べた後でも、軽く食べられるでしょう。
モクテル(ノンアルコールカクテル)
ノンアルコールカクテルのモクテルも充実しており、どれも料理とよく合います。左の「ジャスミン グレープフルーツ」(2,024円、税・サ込)はジャスミンティー、グレープフルーツ、ライムのモクテルで、上品な味わい。右の「ルバーブ スカッシュ」(2,024円、税・サ込)はルバーブ、シトラス、ソーダから構成されており、爽快感があります。
「メゾン マルノウチ」の特長
「メゾン マルノウチ」のメニューを紹介してきましたが、ここでのウリは何といっても現代的なビストロ料理。ダニエル氏の感性によって、よく知られているビストロ料理が生まれ変わっています。
カナッペやノンアルコールドリンクが充実しているので、ちょい飲みに便利であったり、アルコールを飲めない方も楽しめたりと、用途が広いのも特筆するべき点。土日祝日には、アメリカンスタイルのフライドチキンを味わえるコースも用意されています。
東京駅を見下ろせるシチュエーションも、他にはなかなかありません。7階という高さがちょうどよいので、東京駅が間近に感じられます。
セザン(SÉZANNE)
「セザン」は美食家の舌も満足させてくれるモダンフレンチレストラン。「皿にのっているものには全て意味がある」とダニエル氏が語るように、一皿の各要素には無駄がなく、巧みな技法で美しく仕上げられています。
パティシエのエルウィン・ボイルズ氏とマネージャーのシモーネ・マクリ氏はダニエル氏と初めてチームを組みますが、既に息はぴったり。店内のインテリアを手掛けたのは、香港を代表する受賞歴のある建築家アンドレ・フー。ダニエル氏が創り出すピュアな料理が主役になるように設計したといいます。
「セザン」で用意されているのはコース料理。ランチコース(12,018円、税・サ込)とディナーコース(30,993円、税・サ込)では、ダニエル氏の料理を余すところなく堪能できます。
では、いくつかメニューを紹介していきましょう。
プリザーブド黒トリュフ シャンパンクリーム
パルミジャーノ・レッジャーノのクリスピーな生地で黒トリュフをサンドし、シャンパーニュとバジルのクリームが添えられています。サクサクっとした食感と、黒トリュフの芳醇な香りを楽しめます。
沖縄県産とうもろこしのサワードウ ノルマンディーバター
甘さが特徴の北海道のトウモロコシを使った自家製サワードウ。下準備の段階から時間をかけて丁寧につくられています。1週間ゆっくりと乾燥させたトウモロコシの粒をポレンタにし、ダニエル氏が数年前からつくっている自家製酵母と合わせて自然発酵させ、焼き上げました。
クラストはしっかりしていてパリっとしていますが、中は非常にもっちり。メリハリのあるテクスチャとほんのりと広がる酸味が癖になります。
鯖 エスカベッシュ 蛤
ダニエル氏のスペシャリテのひとつ。サバのマリネにタイバジルをサンドしました。サバ特有の香りは主張しすぎず、舌の上で心地よい脂の味わいが感じられます。添えられたハマグリのエスカベッシュがよいコントラスト。
エレゾファーム軍鶏のポシェ ヴァン・ジョーヌ 杏茸
野菜とジロール茸のブイヨンで茹でた北海道産のシャモに、トリプルコンソメとヴァン・ジョーヌのソースを目の前でかけてもらえます。シャモがもつ身の弾力と旨味、ヴァン・ジョーヌの芳香が素晴らしいです。
セヴェンヌ産オニオンとイベリコハム ラビオリ
自家製のラビオリの中には、南フランス・セヴェンヌの甘いオニオンと脂がのったイベリコハム。ラビオリを噛みしめると、滋味と旨味のあるスープが口の中に広がります。上にのせられているジロール茸が可愛らしいです。
宮崎県産マンゴー ショートブレッド クレームシャンティ
ショートブレッド入りのクレームシャンティがたっぷりとのせられます。宮崎県の甘いマンゴーにはちょっとした仕掛けが施されているので、実際に訪れた時のお楽しみに。
セザンの特長
セザンの特長は何といっても最新のガストロノミーを体験できることです。
ミシュランガイドや「アジアのベストレストラン50」で評価されてきたダニエル氏の料理を東京で堪能できるのは非常に幸運。2021年末のミシュランガイドに掲載されるのか、2022年の「アジアのベストレストラン50」でランクインするのか楽しみです。
ミシュランガイドでは、フォーシーズンズホテル東京大手町の「エスト(est)」とともに星の掲載が期待されますが、それが現実になれば快挙となるでしょう。なぜならば、東京で同じブランドの複数ホテルが星を獲得したことはないからです。もしも実現すれば、改めてフォーシーズンズホテルが美食ホテルとして認知されるのではないでしょうか。
「アジアのベストレストラン50」でランクインしても、東京のホテルでは初めてのことなので、新しい歴史をつくることになります。
最後にテーブルウェアにも言及しておきたいです。レグル、レイノー、バカラ、クリストフル、レーマンとフランスの有名メーカーの食器が用いられています。ダニエル氏の繊細で美しい料理を引き立てるシンプルな白磁器が印象的です。
より多くの人が訪れるダイニングに
フォーシーズンズホテル丸の内 東京は、外資系のラグジュアリーホテルがたくさん上陸する前にオープンしました。東京駅のすぐ近くにありながらも、奥まった場所にエントランスが設けられ、ビルの上階に入居しているために、とても隠れ家的な存在。レストランも知る人ぞ知るといった感じで、どちらかといえばホテル通に贔屓にされていたように思います。
ダニエル氏が総料理長に就任し、「メゾン マルノウチ」と「セザン」がオープンした今、フォーシーズンズホテル丸の内 東京のダイニングは世界中の人々から注目されています。これからはより多くの人が訪れる新たな美食スポットになりそうです。