120年ぶり大改訂 飛行機雲を承認へ
雲の形はいろいろありますが、気象学では10種類に分けられます。この分類方法が約120年ぶりに見直されることになりました。これまで種別に入っていなかった飛行機雲が正式に雲と認められるかもしれません。
アマチュアの気象学者
世界で初めて雲の分類方法を考えたのは、イギリス人のアマチュア気象学者ルーク・ハワード(Luke Howard)です。彼は1803年、雲を10種類に分け、それぞれラテン語の呼び名をつけました。
巻雲(Cirrus)、巻積雲(Cirrocumulus)、巻層雲(Cirrostratus)、高積雲(Altocumulus)、高積雲(Altostratus)、乱層雲(Nimbostratus)、層積雲(Stratocumulus)、層雲(Stratus)、積雲(Cumulus)、積乱雲(Cumulonimbus)
この分類方法はのちに国際的な基準となり、1896年に国際雲図帳(The International Cloud Atlas)が出版されました。現在は国際気象機関(WMO)の国際雲図帳第1巻(1975)と第2巻(1987)があり、日本を始め、世界の気象機関で雲の観測指針として使われています。
しかし、この40年間で気象学を取り巻く環境は大きく変わりました。科学技術や写真術の進歩はもとより、アナログ的な雲の写真集では時代に合わなくなっています。そこで、世界気象機関(WMO)の専門作業チームは、雲の分類をデジタル化し、一般の人でもわかりやすく、利用しやすい雲図帳に刷新する作業を進めています。
飛行機雲は雲じゃない?
これまで飛行機雲(Contrail)は人工的に作られた雲として、雲の分類には入っていませんでした。もともと、ルーク・ハワードが雲の分類方法を考えたとき、飛行機は存在していません。もしも、今、ハワードが生きていたら、飛行機雲をなんと呼ぶのでしょう?
これまでも何度か国際雲図帳は改訂されていますが、なぜか飛行機雲は承認されず、現在に至っています。不思議です。
世界気象機関の専門作業チームは、新しい雲種として「渦状の雲(Volutus)」と「人間由来の雲(飛行機雲など)」を承認するよう専門会議に提案しています。
空に浮かぶ雲の形は千差万別、わかっているだけでも約100の組合せがあります。専門チームは、作業はスピードよりも高度な正確性と信頼性が求められるが、2016年にはウエブ版を準備したいとしています。
初版の国際雲図帳(The International Cloud Atlas)が出版されてから約120年、21世紀にふさわしい雲の分類とは何かと興味がありますが、それよりも、だれもが空を見上げたくなるような雲図帳に生まれ変わってほしいものです。
【参考資料】
The International Cloud Atlas:World Meteorological Organization(WMO),11 June 2015
Luke Howard and Cloud Names:Royal Meteorological Society
気象観測の手引き(気象庁編)
湯山生,2000:くものてびき,クライム気象図書出版部
【2015年6月20日】
冒頭に概要文を追記しました。