お金がないけど株を買う、信用取引の落とし穴
「お金はないけど株を買いたい」。2月に日経平均が3万円を超えて、焦って「信用買い」に走った個人投資家が多かったようです。
アメリカでも大量の個人投資家がコール・オプション買いに走り、市場への混乱を起こしています。
人間の心理で「下がるとこわいので売ってしまい、上がると焦って買ってしまう」というトラップがあります。
しかし、これを繰り返すと、投資をしてもお金を減らし続けることにつながります。
信用取引とは、顧客が証券会社に担保として保証金を預け、資金もしくは証券を借りて売買を行う取引のことです。 所定の期限内に、反対売買や現渡しによって弁済をします。 委託保証金の約3倍までの売買ができることなどが主なメリットです。
「信用買い」の顧客は、貸付けを受けた資金に対する金利を証券会社に支払います。「信用売り」の顧客は、売却証券に対する貸株料を証券会社に支払います。更に株式の需給状況によっては品貸料が発生する場合もあります。
「信用売り」に関しては長期で保有している株式が一時的に暴落をしそうという局面でリスクヘッジの効果を出すことが期待できます。
このような局面で信用売りによって売り建玉をもつことで、その株式が将来値下がりした時に、現物株式の評価損と売り建玉の益とで相殺する効果があります。
決済に関しては、現渡し(保有している株式を品渡しする)方法と、反対売買をする方法があります。
長期的には株価が上昇する(あるいは配当を期待している)という見通しで保有し続けたい場合は反対売買をすることが考えられます。
また、保有していない株式を下落局面で売りたいという場合もあります。そうした時に信用売りを活用することが考えられます。機関投資家や中上級者などは売りからも入ることができるのです。そうすると、買い一辺倒ではなくなり、二刀流とも言えるのです。
しかし、「信用買い」に関してはあまり利用する局面が考えにくいです。お金がないのに株式を買いたい、レバレッジをかけたいというニーズでしょうか。しかし、相場が反対に動くと思わぬ損失が発生します。
例えば、信用取引で、30万円の投資資金で株価1000円の銘柄を買う場合。最大100万円(1000株)までの取引が可能となります。その銘柄が50%下落(1000円から500円に下落)した時に売却すると、損失額は投資金額の30万円を上回る50万円(500円×1000株)の損失となるリスクがあります。
信用取引では最低30万円、委託保証金率が30%以上の両方の条件を満たす必要があります。また、相場の変動等により追加の委託保証金(追証)を差し入れる必要が出ることもあります。必要な担保額(建玉金額に対する委託保証金の維持率25%)を下回った場合には30%以上になるまでの担保を追加で差し入れる必要があります。この追加の委託保証金を「追加保証金、追証(おいしょう)」と呼びます。追証の差し入れ期限は、追証が生じた日の翌々営業日(維持率が20%を下回った場合は翌営業日)までです。
一般に追証発生日より一定期日(起算して3営業日目の正午)までに追加保証金の解消が確認できなかった場合、全ての建玉を反対売買による決済(強制決済)になります。つなり、一番底で投げ売りをせざるを得ない状況になり得るのです。
お金がないけど株を買いたいという場合は、単元未満株で取引をしたり、オプション取引(コール・オプションを買う)をするなどのほうがリスクを限定することができます。日本は個別株のコール・オプションがあなりないという問題がまだ残ります。オプション取引についてもどこかで解説したいと思います。
資産運用をする場合、資金管理スキルも一つの投資をする上での必要要件となります。2008年のリーマンショックの際から主に相場を見ていますが、新しい参加者が生まれては資金管理のミスで撤退していくことを繰り返していると感じます。
必ず投資をするなら余裕資金で、信用取引をする場合は証拠金をギリギリではなく多めに入れて置く(投資額の5割程度あると安心)ことが原則です。
なぜ5割かというと、海外の金融機関では株式を担保に融資を受けることもできるのですが、株やETFの場合は一般に5割までだからです。金融機関は株式は半値にもなりうるという計算をしているのです。
できればレバレッジはかけずになくなってもよい範囲で株式投資をすることが重要です。相場が気になって夜も眠れない、仕事中も気になるというのでは、本業にしているでもない限りは本末転倒になってしまいます。