2019年「食の十大(重大)ニュース」に食品ロス 過去30年間でメディア登場最多
食生活ジャーナリストの会(JFJ)が選ぶ「2019年 食の十大ニュース」の1位に「食品ロス削減推進法」が選ばれた。
2019年12月25日には、食品業界紙最大手の日本食糧新聞社が選ぶ「2019年食品業界重大ニュース」が発表され、やはり食品ロス削減推進法の施行が取り上げられた。
過去30年間の主要メディア150紙誌で2019年の「食品ロス」登場回数は最多
日本最大級のビジネスデータベースサービス、G-Search(ジーサーチ)で調べてみると、過去30年間に主要150紙誌で「食品ロス」という語句が登場した回数は、2019年が最多であることがわかった。
2019年1月1日から12月30日までの「食品ロス」の登場回数は4,085回。これまで最も多かった2016年の2,964回を抜いて、過去最多となった。
なお、「食品ロス」のことを「フードロス」と呼ぶ人もいるが、英語で「Food Loss」と言うと、日本で使っている意味(可食部:食べられる部分)と真逆の意味(不可食部:食べられない部分)に解釈される場合もある。実際、米国人の翻訳者に「食品ロス」を翻訳してもらったところ、「Food Loss」ではなく、すべて「Food Waste」と訳された。世界の統一基準も提案されてはいるが、食文化の違いなどもあり、すべての国で概念を統一させるのは難しい。そのため筆者は、「食品ロス」を英語で表現したい場合、「フードロス」ではなく、FAO(国際連合食糧農業機関)などの国際機関が使っている「Food Loss and Waste(FLW)」を使うようにしている。
念の為、「フードロス」でもG-Searchで検索したところ、やはり2019年が最多だったが、「食品ロス」の登場回数の10分の1だった。
「食品ロス削減ウォッシュ」にならないように
SDGs(持続可能な開発目表)がにわかに注目されてきたため、日本には「SDGsバッジおじさん」が登場している。背広の胸にSDGsのバッジをつけた人だ。筆者は間伐材で作った木製のSDGsバッジをつけてスウェーデンへ取材に行ったところ、「これはとても嬉しいですね。ほとんどの人は地下からの資源(再生不可能なエネルギー)で作ったバッジをつけている」と指摘された。
SDGsの17のゴールのうち、食品ロスに最も関連するのが12番のゴールだ。
そこで、多くの食品関連企業が、自社で取り組んでいることとSDGsの12番をひもづけてアピールしている。
だが、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室の田崎智宏室長は、企業のやり方が、このままではSDGsウォッシュになってしまうのではとの懸念の声が上がっていることを指摘している。
「グリーンウォッシュ」という言葉は、あたかも環境に配慮しているかのようにふるまうことを指す。だが実態はそうではない。
同じように「SDGsウォッシュ」とは、SDGsに取り組んでいるふりをしているが、実際はそうではないことをいう。
「食品ロス」についても、法律が2019年5月に成立、10月に施行し、注目されてきたのは喜ばしい。だが、企業がプレスリリースで発表する取り組みを見ていると、「食品ロス削減ウォッシュ」ではないか、と思われるものもある。「やっているふり」だ。
食品ロスを本気で減らすことが経営コストの削減にもつながる
食品ロスを減らすことは、組織の経営コストの削減につながる。だから、本当は積極的に取り組むべきだ。だが、「食品ロスを減らすと売上が縮む」と思いこんでいる人もまだ多い。
食品ロスを減らすことと、売上をキープもしくは増やすことは、両立可能だ。それは、全国の複数の事例が実証している。そして、食品ロスを減らすことは、働き方改革でもある。
2020年の春には、食品ロス削減推進法に関し、政府の基本方針が発表されると予想される。食品ロスを本気で減らすことが、組織と地球の存続のためになる。