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イラク製油所近くで巨大竜巻発生

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

14日(木曜)イラク西部で、巨大な竜巻が発生しました。動画には、製油所のすぐ近くで、砂ぼこりを巻き上げながら、ゆっくりと移動する竜巻の映像が収められています。

外電によると、この竜巻はEF2(改良藤田スケール。6段階のうち4番目に強い)の可能性が高く、建物や車などが被害を受けた模様です。もし製油所に竜巻が突っ込んだらと思うとぞっとします。

珍しい中東竜巻

2006年4月、イスラエル東岸の町で強い竜巻が発生し、5人が死亡し70名以上がケガを負いました。ただこれは、海の近くで起こった竜巻で、今回のイラクのように乾燥した中東の内陸に竜巻が発生するのは、非常に珍しいことです。

世界の竜巻分布図。中東では竜巻が起こりにくい。「竜巻のふしぎ」(共立出版)より
世界の竜巻分布図。中東では竜巻が起こりにくい。「竜巻のふしぎ」(共立出版)より

この春、大荒れの中東

この異例の竜巻の他に、今春中東では、雹、落雷、そして記録的な雨が観測されています。下記は3月、4月に起きた大雨の被害をまとめたものですが、これはほんの一部にすぎません。

4月上旬サウジアラビア、オマーン:洪水発生、5名死亡

4月上旬パキスタン:洪水と土砂崩れ発生、92名死亡

3月下旬オマーン:415mmの降水。洪水発生、6名死亡

3月下旬サウジアラビア:4日間に渡る大雨で洪水発生、11人死亡

3月中旬パキスタン:8日間で350mmの雨。洪水と土砂崩れ発生、121名死亡

3月9日UAE:ドバイで4年分の大雨、アブダビ空港閉鎖、株式市場操業一時停止

意外な大雨の理由

実はこの異常な大雨の裏には、ある理由もあるようです。

ここ数年、UAEでは人工降雨を降らせており、それ以来、降水量が劇的に増えています。とくに今年は(1~3月)は、去年の3倍に当たる77回も人工降雨を作ったことで、異例の大雨につながったようなのです。

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NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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