スペイン代表で再び監督交代。ルイス・エンリケ復帰の裏で、何が起きているのか。
一瞬にして、歓喜の酔いが冷めてしまった。
スペイン代表は18日にEURO2020予選でルーマニアと対戦。5-0と大勝して、グループ首位での本選出場を決めた。
だが、何かがおかしかった。一度も負けることなくチームを本大会に導いたロベルト・モレノは試合後のフラッシュインタビューに応じなかった。それだけではなく、記者会見をキャンセルした。スペインのラジオ局『カデナ・コペ』が先んじて報じた「ルイス・エンリケ監督の復帰」というニュースが、疑念を纏(まと)いながら現実味を帯びていった。
ルーマニア戦後、選手たちはミックスゾーンで質問攻めにあっている。しかし、一様にして彼らの口は重かった。
「僕たちには、何もできない。練習して、ベストを尽くすだけ。だけど、僕たちは監督と、コーチたちと、共にいる」(ジェラール・モレノ)
「僕たちは何も知らない。仮定の話をすることはできないよ。ロベルトの仕事は、ピッチ上で反映されている」(サウール・ニゲス)
「監督についてどうなるかは、何も分からない。だから、その質問には答えられない」(ファビアン・ルイス)
■連盟側の主張
クラスノダールの悲劇ーー。多くの人が、その再来を予感した。ロシア・ワールドカップ直前にフレン・ロペテギの解任が決定した、あの一件である。
ルーマニア戦後、スペインサッカー連盟の伝達部門でダイレクターを務めるマリサ・ゴンサレスとパブロ・ガルシア・クエルボによって、19日にルイス・ルビアレス会長が会見を開くと報告された。そして、ルビアレス会長が、「真実」を語っている。
「真実を知ってもらいたい。連盟としての、初めての言葉になる。ルイス・エンリケが職に復帰する。私は6月19日にロベルト・モレノの監督就任を発表した。彼には、ルイス・エンリケに意思があれば、復帰することになると伝えていた」
また、今回の決断に際してL・エンリケと3度話したこと、ロベルト・モレノに続投の意思がなかったこと、2022年のカタール・ワールドカップまでのプロジェクトがあり、そのリーダーがルイス・エンリケであることが連盟側から強調された。
■無敗の指揮官が去る
スペインは、EURO2020予選の最後の2試合でマルタ戦(7-0)、ルーマニア戦(5-0)と圧勝した。8勝2分け、勝ち点26という成績で2位のスウェーデン(勝ち点21)に大きく差をつけ、グループ1位で本選出場を決めた。
ロベルト・モレノは6試合を4勝2分けで切り抜けた。1試合平均3,3得点という数字を残して、31選手を起用し、5選手を代表デビューさせている。EURO2020本大会終了まで指揮を執る予定だったが、彼は無敗で去ることになった。
一方、L・エンリケは10試合で8勝2敗という戦績だ。1試合平均2,8得点を記録して、41選手を起用し、9選手を代表デビューさせた。
ロペテギ、フェルナンド・イエロ、ルイス・エンリケ、ロベルト・モレノ...。この3年半で、スペインは4人の監督に指揮を託した。黄金期を謳歌した2008年から2016年まで、8年間の長期政権を築いたビセンテ・デル・ボスケとは対照的だ。
クラスノダールから舞台は代わり、ワンダ・メトロポリターノで危機が叫ばれた。その危機を乗り越えない限り、スペインの王座奪還はない。