私を「個」として認めて接してくれる、優しい人が好きなんです(「スナック大宮」問答集17)
「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪、愛知・蒲郡、大阪・天満のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに80回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
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出身地などの重要情報を覚えてくれない人は本質的に優しくない
「優しい人が好きです。どういうときに優しさを感じるのかと言えば、私を個として認めて接してくれていると思えるとき。そういう男性と出会いたいです」(39歳の独身女性)
雛人形のように整った顔立ちの魅惑的な女性。あまり話さなくても男性を惹きつけるタイプだ。しかし、離婚経験もあって男性との付き合いには慎重になっている。「個として認めてもらえたときに優しさを感じる」という彼女の言葉は、現代社会に生きる多くの女性が共感する気がする。
恥をさらすようだが、筆者にはこの女性が求める「本当の優しさ」がない。それなりに聞き上手のつもりだし、最低限のレディファーストぐらいはできる。だから女性の友だちは少なくないが、驚くほどモテない。
なぜなのか。筆者は相手の話をちゃんと覚えておくことができないことが主因だろう。聞いた内容がなかなか記憶に定着せず、同じ人に出身地などを何度も聞いてしまうのだ。しまいには相手から「大宮さんって聞いているようで聞いてない。私に興味がないでしょう」と腹立たしげに指摘されたりする。会話中はいかにも興味がある様子で傾聴しているだけ厄介なのだと思う。
相手に本当に興味がある場合、メモなどしなくてもその人が何をしてどんな状況にあるのかは自然と頭に入ってくるものだ。筆者の場合はその相手は妻や兄弟である。しかし、配偶者や肉親はもはや自我の一部なので、他人を個として認めているとは言えない。
本当の優しさの構成要素は、関心・敬意・自立心
他人を個として認めて尊重すること。そのためには、相手への関心と敬意に加え、「だけど自分は違う。違うからこそ一緒にいて面白い」という健全な自立心が不可欠だ。そんな大人の異性から「いつも気にかけてもらっている」と感じたとき、安心と自信を同時に覚えることだろう。
筆者は婚活中の女性にインタビュー取材をすることが多いが、いわゆる女性慣れした男性を「優しい」と勘違いしている人をときどき見かける。弾むような会話やレディファーストが偽りの魅力だとは言わない。しかし、それは場数を踏んだ者のテクニックに過ぎないことも多い。
ずっと前のデートで話したことをちゃんと覚えていて、不器用ながらもあなたを喜ばせようとしてくれる男性。意見が違うことを面白がり、自己満足の「優しさ」を押し付けることもなく、静かに温かくあなたを見守ってくれる男性。そんな人から敬意を持って求められる女性になろうと決めたとき、婚活はまたとない人生修行の場になる気がする。