「参拝者の多くが“まず気付かない”」住宅街の小さな寺で見つけた「3体目」の『舟地蔵』がこちら/藤沢市
【プライスレス藤沢】
~藤沢の魅力を再発見~
藤沢市内で見つけたプライスレスな情報シリーズ。88カ所目は藤沢市長後にある『臨済宗・長福山 永明寺』(以下『永明寺』)です。
長後駅から500メートルほど離れた、閑静な住宅街の一角にひっそりと佇む『永明寺』。
門前に建てられた案内板を要約すると、本尊は延命地蔵菩薩、開山は清渓通徹(せいけいつうてつ)、建立は永和年間(1375年~1379年)、鎌倉円覚寺末寺とのこと。
開山・清渓通徹禅師は、中国・元へ留学し、三十余年修学の後、帰国。帰国後は京都天龍寺第十一世、南禅寺第三十八世を勤め、足利幕府第三代将軍・義満より紫衣(しい)を授かり、北朝・光厳法皇の師となられた方で、そうした縁から当寺は天皇家の紋「十六弁菊花紋」を寺紋に使用することを許されたと言われているそう。
また、寛永七年(1630年)に徳川幕府第二代将軍・秀忠に仕え、金銀奉行となった旗本で、ここ長後村の地頭であった「朝岡泰勝」が中興しましたが、天明年間(1781年~1789年)に火災にあい、堂宇を焼失、一山衰退しました。しかし、享和三年(1803年)甲州龍野村・円通寺の僧・龍峰により修復、再建されました。明治六年(1873年)には、ここに郷学校が開校され、二年後には長後藪鼻宿の羽根澤屋脇に移転し「長明学校(長後小学校の前身)」と称したと書かれています。
そして、案内板の最後の段落にこうあります。
境内には「岩船地蔵・六地蔵・子安地蔵」の八地蔵が祀られ、裏山墓域には永明寺歴代住職の墓と共に「中興開基・朝岡泰勝」外、朝岡家累代の墓碑三基があります。
平成三十年(2018年)三月吉日 長後地区郷土づくり推進会議 歴史散策の会
岩船地蔵?舟に乗ったお地蔵さんがここにも…?
境内の八地蔵へと急ぐ筆者。
まず、正面から見て左半分のお地蔵さんをアップします。
一番左側に写るお地蔵さんが、案内板にある「子安地蔵」ですね(地域では「子守り地蔵」とも呼ばれているそう)。
子授け・安産・子育てを見守るお地蔵さんと言われる「子安地蔵」。赤ちゃんを腕に抱え、にっこり微笑む表情が印象的です。
続いて、正面から見て右半分のお地蔵様をアップします。
この中で、一番右に写るのが「岩船地蔵」。ご覧の通り…
舟に対し、“正面を向いて立った姿”で乗っています。
せっかくなので、過去2回取り上げた「舟地蔵」と比較してみます。
1尊目(※地蔵の正式な数え方は「尊」)が藤沢厚木線(43号)「舟地蔵交差点」の近くの「舟地蔵」。参考記事:【藤沢市】近付いてみたら衝撃の姿だった。悲しい伝説が残る「舟地蔵」の正体
2尊目が、同じく藤沢市大庭の雑木林に眠る「旧舟地蔵」。参考記事:「予想だにしない結末」に「そんなことって..」雑木林の湿地帯で見つけた「もう1体」の『舟地蔵』藤沢市
そして今回見つかった3尊目の「舟地蔵」が、ここ『臨済宗・長福山 永明寺』の「岩船地蔵」です。
経年の風化で表情が読み取れず、ぱっと見ただけでは「舟地蔵」と気づきにくいその姿(参拝客はみな素通り...)。まるで誰かに発見されるのをじっと待っているような、寂しげな表情を想像させます。
『永明寺』の住職にお話をうかがうと、「当寺のお地蔵さんは、『六地蔵』ではなく『八地蔵』です。気づきにくいのですが、そのうち1尊は舟に乗っていて、かなり古いお地蔵さんです。いつ・どういう経緯でここにやってきたのか、詳細な記録などは残念ながら残されておりません」とのこと。
「岩船地蔵」の背中には文字が彫られていますが、全てを読み取るのは難しい状況です。
なお、これらの「舟地蔵」について調べると、「岩船地蔵信仰(または「岩船地蔵送り」)」という言葉がヒットします。
これは、享保4年(1719年)~数年間(「暴れん坊将軍」で有名な、江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の時代)に集中して流行した信仰のこと。
栃木県栃木市にある『岩船山 高勝寺』(山全体が一艘の船の形をした霊山)が起点と言われており、関東一円(特に関東の西側)で行われたとされています(念仏を唱え、三味線や尺八をひきながら地域を踊り歩いたのだとか)。
表面的な宗教儀礼の背後に、当時の人々の想いや願いなども隠されていそうな「岩船地蔵信仰」と「舟地蔵」。機会があれば、こうした信仰の雰囲気を体感できる『永明寺』を訪れてみてはいかがでしょうか。
基本情報
『臨済宗・長福山 永明寺』
住所:藤沢市長後416
取材協力 永明寺 はしもと住職様
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