「無我夢中で考えて指していた」藤井聡太八冠、内閣総理大臣顕彰式コメント全文(1)
司会「ただいまから内閣総理大臣顕彰式をおこないます。顕彰状を授与いたします」
(岸田文雄内閣総理大臣、藤井聡太八冠、一礼)
岸田「顕彰状。藤井聡太殿。あなたは日頃のたゆみない努力と精進によって、将棋界初の八冠制覇の偉業を成し遂げ、多くの国民に夢や希望を与えるとともに、伝統的な文化である将棋の普及振興を通じ、我が国文化の向上発展に貢献され、その功績は誠に顕著であります。よってここに顕彰します。令和5年11月13日、内閣総理大臣、岸田文雄。どうも、おめでとうございます」
藤井「ありがとうございます」
(写真撮影、盾贈呈、握手)
司会「ここで藤井聡太殿から、岸田総理大臣にお礼の品がございます」
(藤井八冠、将棋盤を贈る。箱書は「雲外蒼天/竜王 名人 藤井聡太」)
岸田「どうもありがとうございます」
(写真撮影)
司会「以上をもちまして、内閣総理大臣顕彰式を終わります。引き続き、この場にて懇談に移ります。まず岸田総理からお願いいたします」
岸田「はい。改めて、将棋界初の八冠制覇、誠におめでとうございました」
藤井「ありがとうございます」
岸田「先週末は、竜王戦。(八冠達成後)初の防衛ということで、これまた勝利を収められたこと、心からお祝い申し上げます。ここのところ・・・正式には藤井聡太竜王・名人っていうふうに呼ぶんだと教わってきましたが、藤井聡太竜王・名人の活躍で本当に日本中、沸き立っている。こんな素晴らしい雰囲気を感じています。改めてお慶び申し上げますし、そしてこれからは、絶えず挑戦を受け続ける。そういった立場に立たれるんだと思います。ぜひこれからも、この将棋界の歴史を塗り替えていく。そういった時代が続いていくんだと思いますが。ぜひ、多くのファンの期待に応えて、これからも頑張っていただきたいと思います。改めて今日は、この顕彰を受けていただきましたこと、本当に心から、お慶びを申し上げます。おめでとうございます」
藤井「ありがとうございます」
岸田「その上で、いくつか質問をしてもいいと(笑)言われてきてますが、少しいくつかおうかがいしてもよろしいですか」
藤井「あ、はい」
岸田「まず、この思ったのが、藤井竜王・名人におかれては、やはりこのAIを駆使して、日頃研鑽を積んでおられるということを聞いています。ご案内の通り、このAI。いろんな分野において、AIとどう向き合うか。AIっていうのは素晴らしい可能性がある一方で、いろんなリスクもある。AIとどう付き合っていくのかってのが、いま日本のみならず世界中の人々が、いろんな分野で苦労している。こういった課題でもあるわけですが。藤井竜王・名人におかれては、このAIとの、将棋における向き合い方。AIは藤井竜王・名人にとって、どんな存在なのか。どんなふうに思っておられるか。そういったことについて、聞かせていただけますでしょうか?」
藤井「はい。将棋の世界において、だいたい2010年代ぐらいから、そのAIが、棋士の実力と同等以上の実力を得るようになりまして。私自身も(棋士になる直前、奨励会三段だった)2016年頃からのAIを活用して研究に取り組んでいます。AIっていうのは、従来から人間よりは、将棋の世界においてはその計算力がやはり高いので。読みの力というのは本当にもう、それ以前から非常に高かったんですけど。一方で将棋というのは読みの力だけではなくて、形勢判断、局面を評価するという力も非常に重要になりますので。それが2010年代頃から非常に強化されて、棋士の実力を超えるようになったということかと思います。その中で、私自身も形勢判断、局面を見てそれをどのようにとらえて判断するかで、いくかというところにおいて、AIを参考にしながら、その能力を強化できるようにというふうに思って取り組んでおります」
岸田「ほおー、なるほど。はいはい。ありがとうございました。それでそのAIに関して言うならば、まさにこの間の王座戦第4戦で、AIを超える一手を打ったと、高く評価をされている。そういったことを聞いているんですが。あのAIを超えた一手を打ったといわれたあの一手。あの一手を打ったときに、藤井竜王・名人はどんなことを思っていたのか。なにを考えてその場にいたのか。そのときの雰囲気はどんな雰囲気だったのか。少しご紹介いただくことはできますでしょうか?」
藤井「あ、はい。ただその、超えたということは(笑)。はい、全くないのですけれども」
(2人で大盤の前に移動)
藤井「これが王座戦第4局の終盤になります。で、私の方が△5五銀と打って(相手玉に)詰めろをかけたという局面になっています」
藤井「永瀬(拓矢)王座の方が実戦で(藤井玉に王手で)▲5三馬と指されたんですけれども。で、△2二玉と逃げて。以下、こちらの玉に王手が続く形なんですけれども。ただ、詰みにはならないため、で、先手玉には詰めろがかかっているため、ここでこちらが勝ちの局面になりました」
岸田「これ、その瞬間というのは、どんな感じなんですか。天から降ってきたようにこう、ひらめく感じなんですか。それともずーっと積み上げて積み上げて、この一手を打ったんですか」
藤井「この局面は『一分将棋』と言って、1手1分以内に指さなくてはいけないという状況でしたので。やはりこう、私自身もなんというか、無我夢中で考えて指していたというのが一番近いかなと思います」
岸田「そうですか。はいはい。ありがとうございました。そのへんの感覚は、天才にしかわからないんでしょうけどもね(笑)。でもやっぱりその瞬間というのは、すごい瞬間だったんでしょうね。本当に改めて、そこに至るまでの大変な努力もあったんでしょうし。それまでの本当に、努力、積み重ね、心から敬意を表し申し上げます。本当にどうもおめでとうございます」
藤井「ありがとうございます」
岸田「はい、ありがとうございました」