"旭日旗 釜山に入港" 韓国メディアの反応 「日本では現在もその旗を公式使用」をどう伝えたのか
29日午前、日本の海上自衛隊の護衛艦が旭日旗を掲げて韓国南部の釜山に入港した。31日まで行われる米韓などとの海上訓練に参加するためだ。
韓国の反対派(主に左派)からすれば由々しき事態。「日本の軍国主義の復活を匂わせるもの」には強い反発を見せてきたからだ。現地ではどう報じられているのか。
「聯合ニュース」は地元釜山の反日・反戦市民団体が「侵略戦争の象徴である旭日旗の掲揚を許してはならないと反発している」と報道。釜山・平和統一を推進する人たちの会(平統会)関係者のコメントを伝えている。
「旭日旗は戦争犯罪を犯す日本を象徴する旗である」
日本の海上自衛隊がこれを掲げ韓国領海に入ったのは今回が初めてではない。1998年と2008年に韓国で開催された「国際観艦式」には旭日旗を掲げて参加したことがある。いっぽう2018年の観艦式では左派の文在寅政権から自粛を求められ、日本が参加を見送った経緯がある。
議論の中で注目すべきポイントがある。
旭日旗は「昔の日本の国旗」という印象が強いが、現在でも「自衛隊艦旗」として公式に採用されているもの、という点だ。防衛庁・自衛隊の公式サイトには元のデザインは「旭日旗」と示しつつ、紹介されている。
旭日旗は現在の日本でも公式的な役割を担っているのだ。その公式的役割を果たす場での掲揚。「スポーツの応援現場で掲示する」という話とは少し筋が違う。
この「旭日旗=自衛艦旗」という点を韓国サイドがどう伝えているのか。大手メディアの報道ぶりは以下の通りだ。
「聯合ニュース(国内最大の通信社)」
自衛艦旗には、過去の日本の軍国主義の象徴とされる「旭日旗」がその一種として採用されている。1954年の自衛隊法施行令により採用された。この法によると、自衛隊の艦船は自衛艦旗を国旗と共に掲げる必要がある。
「KBS(公営放送)」
旗が風に激しく揺れています。中央の赤い円と放射線状の線が鮮明です。これは日本の自衛艦旗、いわゆる旭日旗です。
第二次世界大戦時に日本が使用した軍旗とほぼ同じ形状で、この旗を掲げた艦船が今日、釜山港に入港しました。今月末に韓国が主催する多国間の海上封鎖訓練に参加するはまぎり艦です。
「SBS(民放大手)」
はまぎり艦は、日本の軍国主義の象徴である「旭日旗」と同じ自衛艦旗を掲げたまま入港しました。
TV朝鮮(地上波)
日本側ははまぎり艦が「自衛艦旗を掲げる」と明言しました。
自衛艦旗は、過去の日本の軍国主義の象徴とされる「旭日旗」の一種で、1954年の自衛隊法施行令により採用されました。
この法によると、自衛隊の艦船は自衛艦旗を国旗と共に掲げる必要があります。
旭日旗の活用法のひとつとして自衛艦旗がある、という位置づけの紹介が多い。
ちなみにこのテーマについて韓国では”おなじみ”のソ・ギョンドク誠心女子大教養教育学教授はSNSなどにこう記している。
「現在の日本の"自衛艦旗"は、過去の帝国主義と軍国主義を象徴する"旭日旗"であり、ドイツのハーケンクロイツと同じ意味を持つ"戦犯旗"である」
「日本政府は公式に自衛艦旗は旭日旗であると認めている状況だ」
「1954年に制定された自衛隊法施行令に基づき、海上自衛隊の自衛艦旗は旭日の形を使用している」
これは「日本の法に介入して意見する」という論だ。
今回の動きにより、韓国内での論争の流れが2つありそうだ。
ひとつめはソ教授の発言にもあるように1954年の日本側の自衛隊法施行令について韓国の左派から指摘が出始めること。ベクトルが直接日本に向くパターンだ。文在寅政権時代には「1965年日韓基本条約の解釈」を巡って論争が起きたが、これは韓国が片方の当事者だった。日本国内の法制定について指摘が及ぶということがあるだろうか。
もうひとつは「日本側の背景はどうであれ、それを受け入れた尹錫悦政権への反発」が高まること。文在寅政権時代に散々盛り上がった「親日フレーム」の復活だ。左派が対立する右派を「親日派」として責め立てるフレーム。日本は昔からある自衛隊法に沿って行動しているなか、ベクトルが日本に直接向かわず、韓国内で日本を巡ってどんどん対立が深まる構造だ。
現政権側に立つ韓国国防省は、日本の艦船が「自衛艦旗を掲げることは国際的な慣習」だとの立場を取っている。チョン・ギュホ報道官は25日の定例ブリーフィングでこう話したのだという。
「通常、外国の港に艦船が入港するとき、その国の軍隊や組織を象徴する旗を掲げると考えられている。これは全世界で通常使われている共通の事項だと理解している」
(了)